第114話 領都シグナ
マルノス領、初めての街に入りますが、街というよりは村に近いです。砦も小規模です。
商店の類も必要最低限で宿も1つしかありません。宿を取り村の中を散策します。村に1つきりの食堂兼酒場で昼食を取ります。
そこで情報収集すると、この村の名前はウルボ。
マルノス領は魔法国を上に見て左の大領であるナルガト領に従属していて、それにより今の領を他領から攻められていないのだとか。
なので最小限の砦と拠点しかなく、それでも魔法国を上にして右の領への対策として中規模な砦が築かれている。他3方の領とは友好関係を築いていることから、この村の砦も小規模なのだとか。
翌日は朝早くから街道を進みます。
夕方前には領都であるシグナに着きました。大きくはありませんが栄えてはいますね。大規模な農地に囲まれたシグナは農業で発展しているようです。牛や放牧されている馬も見えることから畜産業も盛んなのでしょう。
ゆったりとした時間が流れていて好感が持てます。
農耕地を観察するように歩いていると農耕地から体のデカイ男に声を掛けられます。
「坊主、この領に何か用か?」と聞かれました。
「この辺は初めてで興味深く見ていました。魔法国へ行く途中です」
「そうか、と言ってもここらには何もないがな。魔法国へ行くと言うことは魔法師か?」
「そうですね。魔法師でもありますが基本は商人です」
「ほう、と言うことは農作物にも興味があると?」
「そうですね。あります」
「申し遅れたが私は、この領に仕えているエイダイ・ナルカミという」
「私は商人で魔法師のコウです」と握手を交わす。
「コウ殿は宿はもう取ったのか?」
「いえ、これからです」
「ではどうだろうか、我が家に逗留されては」
「良いのですか?」
「良い良い、これも何かの縁だ」とエイダイに連れられて街に行くと大きな屋敷に入る。
「若様!また農作業ですか!殿が探していましたよ」と女中さんが顰めっ面で声を掛けてくる。
「そうか、ちょうど良い。親父殿は執務室か?」
「はい、殿は執務室です」
「そうかそうか。コウ殿ついてきてくだされ」とどんどん屋敷の奥へと歩いていく。
「親父。話がある」とノックもせずに部屋へと入っていく、どうしようか迷っていると、
「コウ殿、中に入って来てくれ」とエイダイの声がする。中に入ると、
「親父殿、この御仁はコウ殿だ。先ほど出会った。商人で魔法師で魔法国を目指している」
「エイダイ、こちらからも話があるが、まぁ後にしよう。ふむ、コウ殿と言ったか。私はこの領に代々仕えるナルカミ家の当主でラクノ・ナルカミじゃ。よしなに頼む」
「私は商人で魔法師のコウです」
「ふむ、コウ殿は何処から来なさった。着ている物からも何処の出身かわからぬ」
「私は他の大陸から来ました」
「!!、他の大陸とな」
「はい、既にいくつかの大陸を旅していまして、他の大陸で魔法国の魔法の杖を見る機会がありまして魔法国を目指している所です」
「ほう、既にいくつかの大陸へと渡っているとな」
「親父、それでコウ殿を逗留させたいのだが」
「ふむ、良いぞ。他の大陸の話も聞きたいしの」ということでナルカミ家に逗留することが決まった。
この大陸の文化は何か和洋折衷というか色々と混ざっている。ワグの国のように完全に和でもないし洋風でもない。
不思議な感じだ。
エイダイ殿が腰に佩いている剣は反っていて片刃だが刀より幅広だ。建物は基本的に木の家が多いが、石や煉瓦で作られた建物もある。
石や煉瓦で作られている建物は軍事施設が多い。他は基本的に木の家だ。
領都シグナの中央には中程度の砦があり、ここに領主様がいるようです。この砦を囲むように城下町が形成されてその周りを農耕地や牧草地が囲む。
砦は中程度の大きさだが農耕地や牧草地は広大だ。
それから数日はエイダイ殿と一緒に行動して農作業や街の視察などをした。
色々と分かった事は魔法師は貴重だということ。特に優秀な魔法師は魔法国へと行ってしまうために戦力としての魔法師は少なく、魔法国の杖無しでは余り戦力にならないのだとか。
特にこの小さな領にいるような魔法師は、魔法国へ行ったものの挫折して流れて来た者が殆どで、余り質は良くないとか。
一度、訓練を見させて貰ったがやはり根本的な技術が足りていない。
ここでも属性魔法と無魔法については分かっていないのだろうか?でも魔法の杖を解析するとそこら辺を理解していないとあの構造にはならないのだが。
何処かで情報を独占しているのでしょうね。
ここにいる魔法師やエイダイ殿に魔法を教えてみるのも面白いかもしれません。
ふふふ、魔法国の反応が見物ですね。
やってみますか。
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