93話 筋肉痛と暇潰し
「おはよう。ございます。」
「ああ。…寝れたか?」
「いえ…。まあ、目は閉じてじっと横にはなってたので多少マシです。」
「食えるなら朝飯にしよう。回復も良くなるだろうし。
何か希望はあるか?」
「ワンタンスープで、お願いできれば。」
「ああ。」
はふぅ。温かスープが疲れた体に沁みる~…。
「テイラ。この後、偵察に行ってきても問題ないか?」
「はい。大丈夫です。…偵察ってどれくらいかかります?」
「…。そんなに時間かけるつもりは無いが。なんでだ?」
「長くなるなら、今から角兎の骨を煮込んでガラスープでも作っておこうかと思いまして。ずっと人力車にかかりきりだったから、休養にしてくれた今日、作るつもりだったんですよ。」
「…。作るのは助かる、が。調理は戻って来てからしてくれ。
あの匂いは周りの動物を引き寄せる可能性があるからな。少し危険だ。」
「シリュウさんの結界があれば大丈夫では…?」
「まあ、事足りるとは思うが。俺の結界は単に大量の魔力を空間に展開して、威圧で脅してるだけだからな。損耗覚悟で侵入しようと思えばできるんだ。
並みの生き物ならかなり弱体化するが、今相手したくはないだろう?」
「なるほど…。ですね。とりあえず大人しくしてます。」
「ああ。
…帰ってきたら今日の内に50匹分全部煮るか…。」
そんな発言をしながらシリュウさんは北側に出掛けていった。
──────────
「さって…。どう暇を潰すか…。」
眠いし…。寝れたら寝ようくらいのノリで…。
ん~…。人力車の改良案は浮かんだけど、このまま作るのは止めておこう。つーか、残りの魔獣の鉄塊、シリュウさんが持ってってるわ…。
まあ、思い付いた内にメモはしたから…。あとでやろう。
料理もダメだし、採集も危険だな。うん…。それは確実。
鉄で何か、作るか…。
腕動かさない様に、アーム展開して作業しよ…。
鉄変形なら…。筋肉は休めれるし…。
…。
頭の回転が悪い、現状。凝った工作はしたくない…。多分トチる。
なら…。簡単なもの…。すでにある物の、再現…。
調理器具は、足りてる…。
漫画セットは、インクないし無意味…。
ペンダントになりそうな…適当シンボル…しか無いか。
腕輪から鉄を出して、捏ねり捏ねり。
○ △ □ ┌──┐
└──┘
丸形 三角 四角 長方形
積み木…?
いや、いくらなんでもシリュウさんが遊ぶのはキツいって。
どーせ遊ぶなら、レ○ブロックとか…。
いや、形の規格統一が超絶面倒。無し。
適当図形を適当組み合わせて、適当連想ゲーム~。
△ △ △
□ □ ○
□ □
家 槍 おでん
ああ~…、いいね! おでん。
割りとよく作ってたなぁ。
ふむ…。インスタントの出汁は無いが、美味しい魔獣肉があればスープはいける…。
芋は食べれないし…、大根もどきは存在するけど手元に無い…。こんにゃくも芋だし…。餅巾着とかどうしろと…。ソーセージも…、見たこと無い。な…。出汁の昆布もどきも難しい…。
まあ、食べたいものリストにメモメモ…。
あ、実行しようとメモして、そのまま忘れてた内容発見。
ふむふむ。「牛乳が無ければ豆乳を使えばいいじゃあな~い?」と…。
うん、閃きの内容は可能性感じるけど。なんだこの語尾…。自分で書いてるのに、うぜぇ…。
豆乳って、微妙に覚えてないけど、確かおからとセットだから…。蒸した?豆を、布で包んで絞ったら、液体の豆乳と、絞りカスのおからに、なるから…。
そうか。シリュウさんの手持ちでは再現不能だ、と諦めたんだったか。
きな粉もどき状態の物を水に突っ込んでも…、まあ、無意味だわ…な…。
…。
何してたんだっけ…?
そうか。鉄パズルで遊んでたんだ。
パズル…。ジグソーパズル…。
作れなくはないが…。鉄の黒の濃淡だけで、何を書くのか。それにピース1つ1つを、指を切らない様に縁を丸くするのも面倒だなぁ…。
もっと手軽に…
○
□
□
棒…と 丸…
こけし?
鉄で民芸品でこけし…。
子どもを消す、と書いて「子消し」。あれはフェイクニュースだったのか、過去の本当の話だったのか…。
どのみち作らないから…、いいか。
…。
いや、マッチ棒?
アンテナ鏡で代用できてる。シリュウさんの火拳もあるし。
△ ○
□ △
□ □
塔…。いや、人形…。
駒…? チェスの駒…。
ハッ!?!?
チェスのルールは分からないけど!
将棋なら! 分かるじゃん!
よーし! 将棋の駒と盤を作るか~!
──────────
うむ! 眠い頭にしてはなかなかの出来!
シリュウさんにルール教えれば、対戦できるね~…。
…。
私、めちゃくちゃ将棋弱いの思い出した…。
将棋部の人と、こちら全駒有り・むこう王将と歩のみって対戦で、ボロ負けして…。余計に、嫌になったんだった…。
なーにが、「プロでも思い付かない最悪な一手ですねー! 逆によくそんな一手考えましたねー! 凄いですねー!」だよ!! うぜぇ煽りだったなぁ、あの人!
…。
まあ、将棋そのものに? 罪は無いし?
暇潰しができればそれで? 良いし?
うん。例えシリュウさんに一瞬で強くなられても、うん。それが普通。
…。
シリュウさん、遅いなぁ…。
トラブルかなぁ…。まあ、でも、筋肉痛の私が応援に行くだけ無駄だわな~。
普通に動物捕まえて解体中かもだし。
このまま待とう。小屋も人力車も結界魔石も、放置する訳にいかないし。
んー…。鉄テントに入って横になってようかな…。




