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9話 角兎との戦い

 いつものテントでは不安なので、箱を作った。


 けっこう厚めに、上と横からも出入りできるように扉──ってか蓋?を作って、閉じれる空気穴兼覗き穴や、中で座れる段差(イス)も手早く形成する。



 そこに水を持たせたスティちゃんに入ってもらう。


 ああ、若い作業員は適当に作った別の箱に適当に放り込んだ。説明するの面倒だし。

 スティちゃんと一緒の空間に入れるなんて論外である。



 私の腕輪の中に入ってる鉄の量にも限りがある。2人の箱を作って…多分…まあ私が使う武器の分くらいは、残ってるはず。


 …後で確認しよ。


 最悪、増やせばいいし。



 私は外に出て、右の腕輪に意識を集中する。


 その中にあるだろう火の魔力が、私の全身に巡るイメージをして、呟く。



「…身体強化。」ふぅ…



 さて急いで向かいますか!




 ──────────




 私が作業場に着いた時、未だにそこでは戦闘が行われていた。

 その音のおかげで迷いかけてた私が辿り着けた。


 パッと見、ハロルドさんは生きてる。スティちゃんの色に近い髪の毛が見える。


 ハロルドさんの右側には木の杭が何本か浮遊して、左手からは水の弾を発射してる。その周りに斧や角材を持った男達が十数人。時々近づく角兎を、武器を盾にしてなんとか弾き返してる。


 離れた地面には血を流してるっぽい人が数人とそのサポートで数人。


 レイさんは…

 なんと素手で角兎に突撃してるっぽい。


 角を叩き折る気? いや押さえつけようとしてるのかな? 地面を走り回る角兎と並走して殴ってるみたい…。

 私の動体視力じゃあ細かいことは分からん。




 さて、こっからどうするか。



 連携取れてるところに邪魔してもなぁ…。


 高速戦闘の方は強化して付いていけても連携するのは無理めだなぁ…。


 怪我人相手に出来ることもなぁ…。



 周りに他の個体が居ないか見て回るか…?


 私は右の腕輪や足下の靴を意識しつつ、とりあえず、ハロルドさんの集団に近寄る。



 ハロルドさんの杭と魔法を避け続けているのは2匹の角兎。杭は進路妨害に使っている。とは言えただの木では角で突き砕かれる。


 周りの男達も投げてるが当たってもダメージは受けてなさそう。水魔法は全部避けているな。この場合火の攻撃魔法が欲しいよね。あの毛皮がうざい。



 しかし、逃げないな、この兎。何が何でも人間を攻撃するタイプじゃあ無いはずだけど…、ここ畑でもないし…。人間の肉狙い、かなぁ…。嫌だなぁ…。



 2匹がばらばらに動き始めた。一方がハロルドさん達に突撃しつつ、もう片方が怪我人達の方に向かう。



「させるか!」


 ハロルドさんが杭と水で、離れていく角兎を妨害する。が、加速して避けられる。ハロルドさんが追加の杭に右手を(かざ)して──


 不味い!

 私は瞬間強化を使って飛び込む。


 斧ごと盾役が吹き飛ばされた!


 多分ハロルドさん狙いだ。フォローに入った周りの男達の隙間を抜けて、ハロルドさんに近づく角兎。



 彼を攻撃するならこの辺りで踏み込むはずと予想したところに、角兎が来た。


 鉄の槍を突き込む。



 ザクッ、と音がして槍の穂先の一つが、角兎の脇腹に刺さった。


 よし、先を五又(ごまた)に変形させたおかげで当たった!



 そのまま刺さった穂先に()()()を生じさせつつ、他の穂先を操って槍をこいつに固定!



「君!? なんでここに!」

「先にもう1匹を攻撃してください!」


 こいつはダメージを与えて動けなくした。次の──



 ──キィンキィン



 私の髪留めから()()()()()()()()()()()


 右前方!?どこ!?

 ええい!


 右足の靴から体を(さえぎ)るように鉄板の壁を出しつつ姿勢を低くする。



 バゴンッ!



 そんな音と共に鉄の壁が半ば裂けた。



 あっぶっ! 靴から出せる量少ないから破られるところだった! でも角と頭が引っ掛かってる!


 裂けた壁の残り部分を変形操作して、突っ込んできた角兎を包む。

 頭と角を覆って、足を固定すれば問題無い!




「残りは!?」


 怪我人達のところに影は無い。どうやら私に攻撃してきたこいつだったみたい。


 あとはレイさんが追ってた奴!



 …ってレイさん、角兎を首締めて押さえてる!

 首に腕まわして寝技みたいに。


 ギリシャ神話で、化け物ライオンの首を締めて倒したヘラクレスのような光景である。周りの男達が数人がかりで角や足を掴んで動けなくしていた。だが、それも長くは保てないだろう。



「これで(とど)めを!」


 近くで構えてた男に、アイスピック的な鉄針を渡す。


 男は無言で頷いてレイさんや押さえてる人達の隙間から、角兎の頭に針を刺し込んだ。



 魔力持ちはあり得ない程の持久力・生命力を見せる。

 完全に首を締めてもなかなか窒息しないこともあるかも知れない。とっとと仕留めるのが確実だ。


 周囲を確認してもらいつつ、私が捕まえた2匹にも止めを刺してもらう。


 自分ではしない。戦闘中なら多少許容できても、血が出てくるのを見たくはない。




 ぶっ飛ばされた盾役の人はなんとか生きてた。

 倒れてた怪我人の中にも脇腹を角で貫かれて危険な状態の人も居たけど、レイさんが取り出した回復ポーションで何とか持ち直したようだ。あのズボンのポケット、マジックバッグか。あのレベルの回復力ってなるとなかなかなお値段のやつ。


 それを持ち歩いてるとか、できる上司だ。




 周囲には、他に何も居ないらしいし、これで一件落着かな!



 …落着すると良いなぁ。


 はぁ。どう考えても追及されるよねぇ、私のこと…。


兎はほとんど鳴かないと聞いたので、角兎も鳴きません。

逃げる動物ではなく、攻撃する魔物なんだから鳴いても良さそうなんですけどね?


あと、角兎は1匹2匹で数えます。魔物だし。

食肉禁止下で、鳥だから食べれる理論により1羽2羽と数えられた歴史は有りません。

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