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82話 自転車

「おっし! 試作3号機完成! 使徒と認定!! 腕が伸びます!!」


「…。今度はなんだ?」

「ガ○ダムネタを続けるよりは、別のネタで攻めてみました!具体的にはエ○ァ!」

「…。(とりあえずふざけてるだけみたいだし無視するか。)」


 今回はペダルと後輪をギアで繋いだ自信作!

 全体的にかなり自転車っぽい!!


 前後の車輪の軸にベアリングを使用した上で、ペダルの主軸にも採用したから良く回る。

 流石に足を乗せる部分の回転に小さなベアリングを作るのは諦めたが…。まあここは接触部分を少なくしつつ、金属をつるつるにしたからなんとかなってるはず。


 カッコンした状態でペダルを手動で回したら、車輪も良い感じに回ったけど、果たして──



「いざ!! 試作3号機、発進!!」


 グッとペダルを踏み込む。苦労して作った歯車(ギア)が回転して、後輪に動力を伝える。

 後輪のザラザラ加工の鉄輪が、地面を捕らえて滑らずに車体を前へと押し出す。


 前に…! 進む、けど…! めちゃめちゃ、重い…!!



「無理!!

 ん~…。明らかにギアが原因だな。回ること自体は問題なかったし…。地面を滑っても無いし…。多分変速…ギアチェンジ的な意味で、ギアに伝わる動力の大きさと向きが問題なんだろうな~…。」


 車体のフレームを中空にしてるとは言え、全て鉄で作ったから重過ぎるのかねぇ?? いや、私でも持ち上げれるくらいのフレームなんだけどなぁ?


 ん? もしかして私が重い?


 …。まあ、それはそれで…。

 実際どうしようもないし…。


 この大陸に来てから無駄に背が伸びてるんだよなぁ…。レイヤとほぼ同じ背格好だったはずなのに、別れる時には頭1個分、私が高くなったからなぁ…。はあ…。



「一旦、ミニチュア自転車で、ギアの組み合わせを試すかぁ。動力の伝わる仕組みに理解が足りてないんだろう。

 まあ、ダメだったら自転車チェーン作るか。うん。」


「…。(テイラの奴、昼飯抜きで良く動けるな…。)」





 ────────────





「よっしゃあ!! 試作3号機・改! 完成! エ○トリープラグ、射出できません!!」

「…。」


「いざ、発進!!」


 グッ、グッと力を入れてペダルを踏むと、車輪が連続して前に進む。

 完全に自転車の完成である。



「良し良し! まだ結構、重いけど、進む、進む~!」


「…。器用なもんだな…。」


 その辺をぐるりと回って小屋に戻る。


 揺れはサドルのバネが吸収するからそこそこマシだけど、しばらく乗れば車輪がダメージを受けてガタガタに歪むはず。

 軽くする為にもスポークの細さは変えられないし…。


「よし。タイヤもどきを作るか!! ゴムなんぞに頼らずとも、鉄でそれっぽいものを作ってくれるわぁ!!」こくこく…


「…。(水は飲むんだな…。)」




 ────────────





「仕方ない! これが完成形だぁ! タイヤもどき改め、ミルフィーユ・鉄タイヤ! 私はこれを、そう名付けたよ…!」


「…。(気分を高めた状態が良く続くな…。精神大丈夫か…?)」


「説明しよう! ミルフィーユ・鉄タイヤとは!! 空気を詰めた鉄のチューブ(パイプと人は呼ぶ)を大中小と3つ重ねて、空気の層を形成することで!…多分…。タイヤと同じ衝撃吸収能力を発揮する、全く新しいシステムなのだ!!! …恐らく…!」


「…。((たかぶ)ってるのか、落ち込んでるのかどっちだよ…。)」


 鉄チューブの中に空気を詰めるのには、ピストンを使った。


 ピストンで空気を圧縮しつつ、鉄変形を上手く利用することで弁を手動…、いや呪動?で開け閉めすることで実現した。パンパンに空気を詰めれた。はず。

 ピストンを押す腕に身体強化まで掛けた(流石に腕が痛くなった)のだから、かなり空気は詰まってる計算だ。間違ってなければ。


 タイヤの中に空気が詰まってるのは、空気が天然の超優良な衝撃吸収材だからだ。確か。

 この世界の空気には魔力とか言う意味不明エネルギーが満ちているんだから、更に衝撃を吸収してくれるはず…!! …何の根拠も無いけど…!!



「はぁ…。まあ。とりあえずやりきったな。

 すみません、シリュウさん。そろそろ晩ご飯にしましょうか。」


「…。いきなりどうした…。完成したのに乗らないのか?」

「ええ。まあ。とりあえず満足はできたし、疲れたし…。気付いたらほぼ夕方だし…。トリップしてる場合じゃないかなって。」


「飯はカラアゲの残りで良いだろう。調理は無しで良い。」

「そうですか…? じゃ、お言葉に甘えて、それでお願いします。」




 ────────────




「はあ…。1日経っても唐揚げが美味しい…。」

「ああ。なかなかだな。十分食べれる。」


「衣に入れるアクアの水を増やせば、もっと持つ様になりますかね…?」

「大して変わらんだろ。それよりは肉の状態で保存して、食べる時に揚げるのが一番良いだろうな。角兎だし。」

「ふむ…。やっぱり、加熱手段がネックになるかぁ…。魔導具のコンロ使えれば、いつでもどこでもが可能になるのになぁ…。」

「まあ、たらればの話しても仕方ない。俺は現状満足してるぞ。」

「そうですか…。まあ、いいか。」




「ご馳走さまでした…。」


 いやぁ、ご飯どころか小麦粉系の主食も無しで、唐揚げだけでお腹いっぱいとか贅沢だなぁ…。満足、満足。


 日除け小屋の中に鉄テントも設置したし、自転車もどきやパーツを置いたガレージゾーンとでも言うべき部分は放置して、と。



「シリュウさん。明日って移動開始します? 今日の自転車もどきはもう意味無いし、実験は終了かなって思ってるんですけど。」


「…。いや、乗り物作ったんだろ…? 乗る意味は有るだろ。」

「いやぁ、タイヤもどきの前から気付いてたんですけどね?

 私が歩くのと比べて、このガタガタした平原を自転車で走るのは大して速度変わらない上に、むしろめちゃくちゃ疲れて無意味だな、って…。」

「…。」


「てな訳で。あの自転車は無用です。まあ、作った意味がなかった、って結果が得られたのは成果ですね。今後何かで活きることも有るかもだろう。うん。」

「…。」


 あ~あ。1日無駄にしちゃったなぁ…。

 まあ、気にせず寝るかぁ。


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