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74話 魔石と薬草

 あれから数ヶ月…。

 私達2人は、マボアへとたどり着いた。

 そこではギルドを利用してこの国を破滅させようと企むネオギルドなる組織が暗躍していた!!

 襲い来る刺客や操られた哀れな魔猪(まちょ)達を、燃やして鉄オブジェにして、斬って張ったの大活劇を──






 すみません。嘘です。



 ただの現実逃避です…。






 茶碗蒸しを食べて、移動開始3時間くらい後。


 私がへろへろになって動けなくなりました…。




 お昼ご飯を食べる名目でシリュウさんが移動を中止してくれた。



「すみません…。ここまで…。体力、落ちて、る、とは…。」はあ… はあ…


「…。いや。よく歩いた方だろ。すっかり忘れてたが、魔力が無いんだからな。」

「これ、でも…。ふぅ…。そこそこ、歩くのはしてたんですけど、ねぇ…。身体強化も、使ったし。腕はしっかり固定してた、し。…。アーム振ってバランスも取ってたのに…。」


 水筒に入れておいたアクアの水をこくこくと飲む。


 はあ…。生き返る…。



「…。非魔種の行動ではなかったな。本当に…。」

「まあ、私が異常なのは今更なので…。それでも、シリュウさん、別に速く歩いてた訳でもないのに、なぁ…。何でだろ。前は、1日歩き通しも割りとできててたんだけどなぁ…。」


 荷物は魔法銀の箱が増えたけど、別に重くはないしねぇ…。ちゃんと背中側、アームの根元に袋ごと鉄で固定できてるし…。

 他の物はシリュウさんが持ってくれてるのになぁ…。



「…。病み上がり…ではあるし。回復も終わってないからだろう。それに、今は森の浅いところとは言え、平坦って訳でもなかったしな。俺は基本、街道を歩かないようにしてるから、まあ、悪かったな。」

「通る場所には意見無いので、問題無いですけど。なんで街道を歩かないんです?」


「…。そうだな…。

 1つは俺が肉を確実に手に入れる為だ。街道沿いは動物も魔獣もしっかり駆逐されてるから早々遭遇しない。山やら森なら邪魔も入らず狩れる。討伐報酬が出るやつも居て小金稼ぎにもなるし。

 もう1つは俺の魔力が、抑えていても強く漏れ出てるからだ。感知能力の高い貴族(馬鹿供)とか、馬車を引く動物なんかがたまに騒ぐんだ。面倒なんだよ。」


「…成る程~。大納得です。私も女の独り旅とか怪しさの塊過ぎて、人に出会うとごちゃごちゃ言われるので街道はなるべく避けてました。シリュウさんの目的は超助かります。」


「…。賛同が得られて何よりだ…。」



 落ち着いたところで調理の時間である。

 わざわざ立ち止まらせてしまったのだから、何かちゃんとしたもの作りたいが。


「シリュウさん。移動再開はいつくらいでしょう? なんなら軽いもので済まして1時間で出発とかでも行けますよ。」

「…。テイラの体力次第だ。俺には分からん。あとどのくらい歩ける?」

「…正直に言った方が良いですよね?」

「当たり前だ。」

「えーと、正直、分かりません。どのくらい体力が落ちてるのか自分でも分からなくて…。腕以外は異常を感じてないし、最近は食事も比較にならない程しっかり食べてるから、むしろ体力付いたと思ってたし…。」


「…。なら、もう今日は移動は無しにして様子見ろ。俺には対処のしようがない。」

「…すみません。」

「気にするな。なんなら美味い料理でも考案してくれればいい。」


「…了解です。」



 その後、シリュウさんは薪にする木を切りに行った。


 行く前に、拠点の中心になる場所に赤い石を置いて、「俺の魔力でこの辺りを結界化させた。この石からあまり離れるなよ。この辺りは魔物が出そうだからな。」とかなんとか言って。


 なんか変にキラキラした石だ。透明な赤い水晶のよう。水晶そのものから赤い光が漏れてるみたいでLEDの照明にも見える。大きさは小石より大きいくらいだけど…。


 結界の基点になる、ってことは多分「魔石」だよね…。

 色からして火属性の。



 魔石はRPGで良く聞く感じのやつ。魔力を()めることができ、魔導具の電池に使える。魔法の宝石。


 ゲームなんかでは魔物を倒すとドロップしたりするけど、ゲームの世界ではなく現実なので、入手方法は全然違うが。



 魔物の体内に魔石が存在するのは同じだが、入手難度は比べ物にならない。

 魔物1個体に必ず1つある、訳では無い、からだ。


 詳細な条件は知らないが、魔物の中でも魔力が多い個体が体内に持っていることがあるらしい。

 別に心臓や脳の代わりをしてる訳でも、取り外せば魔法が使えなくなる訳でも無いので、そこを狙って一撃必殺みたいなことも不可能だ。

 作られる箇所が一定と言う訳でも無いので、戦闘で倒した魔物を解体してみたら粉々に砕けた魔石が出てきた、なんてこともしばしばあるらしい。


 古い地層にいくつか魔石が埋まってることもあったらしいけど、過去の魔物の死骸と一緒くたに潰されてしまっている。魔石と言うより、魔()とでも言うべき状態になってることが大半なんだとか。



 つまり、形がしっかりした魔石は貴重品である。


 それを、事も無げに出して放置していくとは…。

 盗む訳が無いと信頼してくれてると取るべきか、心配する必要が無い程弱いと思われているのか…。




 まあ、なんでもいいか~。


 それより、美味しいご飯だ~。何作ろう~?



 茶碗蒸しが形になったから、中に入れる具材を考えてより美味しいものを目指すのもアリだが…。



 お? そこに生えてるのは薬草のバーリアかな?

 疲労回復薬の素材だね。久しぶり。

 単に苦い葉っぱだけど口には入れるものだし、もしかして、食材になるかな…?


 一応、摘んどこう。


 …。アームでもギリギリ抜ける、ね。


 でも、こいつは根も魔法薬の材料になるやつだから、掘り起こしてから土を払うのが正解だよな~…。アームでも穴は掘れるけど…。全部は止めて、まずはいくつか実験用に確保でいいか。


 茶碗蒸しには軽く茹でた葉っぱが合いそうな気はする。

 根は…どうだろう。食感と味を確かめてからだな。




 ──────────




「…。何、やってんだ…??」


 もぐもぐ… ごくん…

「食材として使えるかの確認ですよ。」


「…。雑草の根を食べてる様にしか見えんが?」

「薬草です。民間のポーションの材料になるやつだから口にできるので、普通に食べれます。」

「…。確かそれは、葉を擂り潰して利用するやつだったよな…? なんでそれの根の方を食べてやがる…。」


「バーリアの根っこは魔法薬の材料になるとかでギルドの買い取り対象だったから、どんな味なのかな、って確かめてみました。」

「…。確か、飲み薬ではなかったと思うぞ…。」

「でしょうね。ワラワラのモラモラで凄く食べづらいです。その上エグみが凄い。」

「…。」

「灰を溶かした水に沈めて灰汁抜きしたら、ワンチャンいける気がする…。」


「…。早く飯作れ?」

「了解でーす。」


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