64話 ガラスープと餃子
「これは美味いな…! 猪肉のスープより断然こっちだな。」
「良い出汁出てますね~…。流石、角兎。臭みも気にならないレベルですね~。美味しい。」
お昼頃。
ぐつぐつ煮込み続けてた角兎ガラが良い感じになったので、味見である。
太陽が高くなったところで薪を節約する為にアンテナ鏡に切り替えて過熱し続けたが、そこそこ雲が出てきたのでこの後は難しいだろう。
「ん~…。もっと煮込めばより濃くなるだろうけど…まあ十分かな。とりあえずこれもお昼ご飯にしよう。」
ガラスープのお供には餃子を作ってみた。
煮込みの間、2人で小麦粉を臼で挽いたり、具を入れたワンタンを作っていたりもしていた。
ワンタンを見て、ふと思い出したのだ。そうだ、焼き餃子も作れるんじゃない?と。
まあ、ニンニクが無いから餃子の味になるかは微妙だったけど、一応作ってみようと思ったのだ。
肉ダネにはふやかした板肉かすを使っていたけど、昨日シリュウさんが狩ってきた猪肉が残っていたからそっちをタネに使おうとチャレンジもしてみた。
猪肉をミンチにしたら、シリュウさんがキレて肝が冷えた場面もあったけど…。
「ごめんなさい。ミンチにする道具は作りが複雑で、再現できなくて…。」
「何言ってる? 折角の肉をそんなぐちゃぐちゃにするな、って言ってんだ。」
「え? いや、ワンタンみたいなの作りたいから猪のお肉使わせて下さいって、言いましたよね??」
「それは許可したが。せっかくの肉を細切れにするとは──どういう了見だ?」
あれ? 割りとガチでキレてる…!?
「シリュウさん。一旦! 一旦、ストップお願いします! 本当に私は料理を作ろうと思ってるだけです!?」
その後、話を聞いてみると、なんと肉をミンチにする行為そのものがダメだったのだ。
細切れにすると言う行為は、腐りかかった肉を質の悪い穀物なんかと混ぜて無理矢理食べれる様にする、危険な食べ方を連想するらしい。
確かに、前世でも海外で肉におかしな物混ぜて食品偽造して、健康被害が云々と聞いた覚えがあった。
考え方の違いで、危うくシリュウさんに不味い物を出すところだった。
「あの、とりあえずミンチにした分のお肉で、作ってみたい、料理を作ってみても、良いです、か…?」
「…。変なことをしないかきっちり見張るからな。」
「それは、もう。やましいことは無いので。頑張ります。」
包丁でミンチにした猪肉に、繋ぎ代わりの小麦粉、香草を適量混ぜて捏ねる。
捏ねて作った肉ダネを、小麦粉生地の皮に包んで、端を摘まんで閉じる。
それを鉄板の上で焼く。水をかけて蓋を被せて蒸し焼きにして完成である。
ミンチの量から2個しか作れなかった。
皮が少し厚いから、餃子と言うよりシュウマイっぽい気もする。生地をパンみたいに出来れば肉まんも作れるな…。生地を寝かせればふわふわ生地作れるかな…?
「そんなこんなで餃子、完成です!」
「…。」
「とりあえず、試食します。」
「…。ああ。」
絶対熱いから、アームの先の箸で割って小さくして…
ふーっふーっ… ぱくり…
もぐもぐ…
「うん! なんとか餃子っぽい! 冒険者焼き、なかなかやるねぇ。ニンニク無いのに香草が頑張ってて良い感じ。」
やっぱり美味しい猪肉に伝統(?)の味付けって言うのは、単純に相性完璧だね。私はそれを細かくして肉ダネにしただけだし。
私のそんな様子を見て餃子を口したシリュウさんから、無事に許可が出て、餃子を大量に作ったのだった。
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てな訳でお昼ご飯は、猪肉の冒険者焼き風餃子に、角兎ガラスープである。
「餃子、美味いな。細切れ肉をあんなちゃんとしたもので作るとは、な…。」
「噛むと小麦の皮の中から、美味しい汁が出てきて良い感じでしょう? ミンチにしたからこそ、筋の固い肉を柔らかくいただける訳ですよ。」
「成る程な…。」
「餃子にタレが欲しいけど、醤油は無いしなぁ。」
「これを甘辛くするのか…?」
「いえ、また別の種類のタレですね。醤油とお酢と…辛味が少量あれば、餃子タレが出来るのになぁ。」
「ほぉ…。」
「餃子は焼かずに、ワンタンと同じくスープで煮込んでも使えますよ。その場合は水餃子になるか?ガラスープとの相性が分かんないから、今回は別々ですけど。」
「いや、このスープが本当に美味いから合うだろ。」
「いやぁ、角兎は魔獣ですからね。ガラの旨味が強過ぎて、普通の猪肉じゃあちょっと劣勢な気も…。」
「…。つまり、魔猪の餃子を作れば…!」
「いや、魔猪の味知らないんで、早まらないで下さい。下手すれば、口の中で魔猪と角兎がケンカしますよ?」
しかし、餃子とワンタンとシュウマイって、結局どう作ると別物になるんだろう…。
異世界から地球のネットワークに接続できないかなぁ。W○kiを見たい…。




