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40話 小麦粉

 適当ゴーゴー! 適当ゴーゴー!


 レベルアップした新小麦粉を、まずは焼くか!


 新しい鉄板とアンテナ鏡を…

 不味い。鉄の残量が無い。


 いや、あるにはあるが、腕輪の中に残ってるのは鉄テントの塊だけっぽい。

 火で加熱すると表面が変質しちゃって、削って捨てるしかないのが痛いよね~。

 寸胴とか鏡って割りと鉄使うしな~。シリュウさんの革袋の中にも鍋や皿で入ってるしな~。


 新しく増やす…のは止めとこう。

 血液を減らすのは得策じゃない。回復優先、回復優先。


 とりあえず今は鉄テントを削ればいいか。ここしばらくは、シリュウさんのおかげか夜に魔物が襲撃してきたりなんてこともないし。シリュウさんも大丈夫そうだし。



 追加のかまど鉄板とアンテナ鏡、っと。



 ボウルの中の練り小麦粉を、お玉で鉄板の上に流し込む。

 ホットケーキみたいに焼きたいところだが、ベーキングパウダーも入ってないからぷつぷつの泡なんか浮いて来ないのでそうもいかない。

 見た目はお煎餅(せんべい)だよね…。つーか、水と小麦粉だけってまんまお煎餅か…?

 むしろおやき? おやきってなんだっけ? お饅頭のことだっけ??

 ──いかん、焦げる。


 ひっくり返して、っと。


 …ギリギリアウト。いやセーフ?

 うん。きっと美味しいお焦げ様だよ、多分。


 両面焼いて完成。塩でもかけるか?

 お煎餅なら醤油塗って2度焼きしたいねぇ。


 …。とりあえず、そのまま食べるか。



「ん~…?」もぐもぐ


 不味くは…ない。旨味の無い、薄いカ○リーメイト?みたいな?

 よーく噛めば甘味が出てくるな…。



 ぺちぺち


「アクア?どうかした?」


 水を出してくれた後、その辺でぽよぽよしてたアクアが私の腰辺りを触手で叩いてた。

 はて?(ご飯)食べたいのかな?


「…。今テイラが焼いたやつを、くれ、って言ってる。」

「え? これを? 砂糖も卵も牛乳も入ってないから、そんなに美味しくないよ?」


 アクアのぺちぺちは続いてる。まあ、いいか。


「じゃ、この残りをあげるね。」


 アクアの触手に絡めとられた煎餅もどきは、その青い体の中に沈んでいった。


 私の鉄もどう消化してるのか謎だけど、割りとこの光景も不思議だよね。

 アクア自身が作った水で出来てるから食べ易いのかな?


「美味しい? まだ食べる?」


 2本の触手で丸を作るアクア。

 ふむ。自然の薄味がお気に召したのかな。


 ボウルの中の練り小麦で、お煎餅もどきを焼いていく。


「…。俺にもくれ。」

「これは何も味付いてませんから、次に味付けて焼くつもりなんでそちらを食べてください。」

「いや、素の味が知りたい。1つくれ。」

「まあ、良いですけど。」


 アクアはお煎餅もどきを5枚平らげ、シリュウさんは「へぇ。悪くないな。」とか言って1枚食べてた。

 これ、シリュウさんの小麦粉とアクアの水だけなんだけどな? そんなに良いもんかな?



 寸胴鍋の様子も見つつ。


「さて、問題はどう味を付けるかだよね。」

「さっき言ってたやつでやるんじゃないのか? 砂糖と牛乳は無理だが、卵はカツの残りがあるだろ。」

「この実験に希少食材は使いませんよ。」

「殻を割って溶いたから放置してたら乾くだけだ。使えるなら使え。」

「あ~…そうか。私の鉄の容器がどう効くか分かりませんもんね。でも、卵はつなぎだから、味を変えるには更に何か足したいところです。」

「何がある?」

「んー…。砂糖がダメなら…蜂蜜?」

「それこそ貴重食材だろう…。何を言ってんだ。」


 この世界、魔獣も問題だけど、ヤバいのが魔虫だ。

 小さい体を魔力で強化して動き回るのが普通に厄介な奴ら。


 特に断トツでヤバいのが、アリとハチだ。

 何がヤバいのか。

 それは()()()()()()()()()()()ことだ。


 顎で噛む・針で刺すと同じノリで魔法を放つのだ。

 個体1匹なら下級魔法1発撃つのが限界らしい。それが何十匹もの群れになると上級規模の魔法を連発してくる。群れ全体で1つの魔力回路を成すらしい。


 例えば火の魔法を使えるハチなら、1匹1回だけでもそこそこの火傷を負う可能性があるが、群れでなら焼死体が複数出来るレベルになる。

 もちろんハチだから飛んでるし、針も持っている。巣の防御に魔法を展開する知能すら見せる。つーか、巣そのものが魔力を帯びてるとか。

 社会性昆虫に魔法が掛け合わされると脅威度が跳ね上がるのだ。


 魔獣と違って人里にやってくることは少ない。しかし、森などで運悪くこいつらに出会って刺激してしまえば簡単に命を落とす。



 つまり何が言いたいかと言うと、蜂蜜を取る難易度がかなり高い。群れとしての知能が高いから養蜂も容易でないらしい。

 蜂蜜は王族の食べ物とかそれこそ高級ポーションの材料と認識されているレベルである。



「魔力の無い普通の蜂も居るには居るけど、巣を見つけて蜂蜜取るのは結局大変だし、それはそれで稀少なんですよね…。シリュウさんなら持ってるかと思ってたんですが。」

「持ってはいるが黒袋の中で少量ガチガチになってるな。料理に使わせる気は無い。魔虫の蜂蜜はもう無い。」

「流石…。両方お持ちでしたか…。」


 んー…。砂糖ダメ。蜂蜜ダメ。ならメイプルシロップ?

 カエデの木の樹液だけど…、魔虫が居るなら魔木もあるんだよね…。多分有っても同じか…。

 あとは…果物…


「あ! 乾燥アリガ! アリガの実を刻んで混ぜれば良い感じになるかも!?」

「そのままで美味いものを混ぜるのか?…まあ少しなら許可する。やってみろ。」




 ────────────




 そして、そこから色々試してみた結果。細かく擦り下ろしたドライアリガ、新小麦粉、アクアの水で作った…お煎餅? 甘いからクッキーもどき?が最高に美味いと言う結論になった。

 何故かドラゴン溶き卵が無い方が美味しい。まあ、アクアはアリガ無しで小麦粉と水だけの方がお気に入りらしいけど。


 つーか、クッキーと呼ぶならバターを入れたいよね。まあ、牛乳が確保出来ないから無理だが。ワンチャン、油を混ぜるのもアリだったか?


 言うまでもなく、シリュウさんがドライアリガをたくさん追加して、量産することになるのだった。


 代わりに新小麦粉の鉄臼、頑張って回して下さい。




 そうこうしてる内に寸胴の方も良い感じである。

 良い出汁が出てる。


 思い付きで塩水で練った小麦粉をワンタンっぽく投入してみたが相性が抜群だった。塩で味を整えたら適当ワンタンスープの完成である。


 良いね。塩と旨味で美味しくいただけて、お腹が膨れるワンタンで満足感もばっちり。

 ドラゴン肉と違って私の心に不安感をもたらさないのが良い。

 これは今後の主力メニューだな。


 …店でも出すのか? 私は…。



 寸胴で煮込んだ板肉本体はかなり柔らかくなっていて、食べてみると(ほの)かに肉の味が残っていた。

 これは、肉かすっぽくなるかも。柔らか板肉を下ろし金で…いやアームで裂けるな。ワンタンスープにトッピングである。


 ちなみに、水で常温放置の方も似た感じにはなってた。出汁がより薄くて板肉はそこそこ硬さが残っていたが。こちらも加熱してワンタンスープ化させる。



 ふう、今回も程よく良い感じだな。シリュウさんもばくばく食べてる。


 しっかし、この板肉って猪肉なのかなぁ…。板1枚1枚が大きいから本体もきっと大きかったんだろうなぁ。臭みとか全然無いなぁ。


 目の前に数十枚は積み重なった板肉を見て、そんなどーでもいいことを考える私だった…。


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