4話 私の能力
この世界には魔法が存在する。
所謂4属性、土・水・風・火の魔法。
詠唱や魔法陣、攻撃・補助・回復系など様々な種類がある。
王族の血筋にのみ使えるとかエルフに教示されたとか、
国を支える産業として魔導具工房があったり竜を打ち倒した魔法として有名なものがあったりと、まあ生活や文化に強く結びついている。
地球における電気や機械と同じ感じかな?
そして、それを扱える人種にも種類がある。
普通の一般人は勉強すれば、少し魔法が使える。
1日数回だけ石礫を出せるとか、拳大の水を生成できるとか、弱い身体強化を施せるとか、魔導具を起動させられるとか。
魔法使いと呼ばれる上位者は、テレビゲームに出てくる感じのやつに近い。
風を纏って空を飛んだり、村を焼き尽くす火が出せたり、家くらいの大きさの獣を召喚したり。
まあ色々。
もちろん下位者も居る。
何をどうしても魔法が使えず魔導具も起動できない人種。非魔種、と呼ばれて──
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ん? ああ、ごめん。人前で魔法使うのは久しぶりで、集中し過ぎてた。」
私の能力を魔法っぽく偽装しなきゃいけないからね。
「使う魔法ってもしかして水魔法?
お姉ちゃんの髪の毛、キレイな水色だもんね!」
うぐぅはぁっ!!??
「ど、どうしたの? どっか痛い? 病気…?」
「だ、大丈夫。ちょっとトラでウマなアレで、心が痛いなだけ…。」ガクガク…!
「何かの詠唱…?」
「そんなとこ…。」うぐぐ…
落ち着け~…。落ち着け~…、私…。
スティちゃんに悪気は無い。
普通。普通のことを言った、だけ。
ワタシ、カミイロ、キレイ ナ ダケ アルヨ。
だから、落ち着け…。
「…えっと、私が使うのは、土属性、の魔法かな。
具体的には──金属を、生み出すの。」
とりあえず髪色から話題転換せねば。
「金属? 凄いね! 聞いたことない。」
「まあ、1度に出せる量は凄く少ないけどね。」
そう言って私は、包むように重ねた両手を広げて見せる。
手のひらには、スティちゃんの拳くらいの鉄塊が乗っていた。
「触っていい!?」
「いいよ~。」
この規模の手品で喜ぶなんて素直な子だなぁ。モノは普通に金属の鉄なんだけどな。
「その塊を毎日少しずつ作って、この中に貯めていくの。」
自分の左手首にしてる鉄製の腕輪を指差す。
「それの中??」
「これね、マジックバッグになってるの。私が作った鉄しか入らないけど。」
「凄い!腕輪型なんだ!? お父さん達が測量? の道具を箱型のに入れてるの見たことある!」
マジックバッグはいわゆるインベントリ、ゲームに出てくるアイテム袋のことである。体積を無視したり、劣化を遅延させたり、自動で物を出し入れしたり。色んな種類があって、この世界の物流に革命をもたらした高級魔導具だ。
まあ、この腕輪は魔導具ではないけどね。非魔種の私じゃ、使えないし。
私は腕輪からいくつも大きめの鉄塊を出してみせる。
まあ、最初に手のひらに出したのもこうやって腕輪から出した訳だけど。
「そして、この塊達を操作して…」
私が触れた鉄が、うにょーんと液体みたいになって広がり、他の塊にくっつく。するとその鉄塊も液体になり、融合していき1つの玉が出来る。
「うわあ。」キラキラ…!
凄くキラキラした目をするね…。ちょっと騙してる罪悪感が…。
「この、大きな塊を変形させて…」
頭の中の簡単なイメージを基にして、鉄塊の形態を整えていく。
鉢と擂り粉木、小さな片手鍋が出来上がる。オール鉄製。
あ、小刀と言うかナイフも無いようなので追加で鉄を出して、材料を刻む為の子ども包丁も作る。
ハロルドさんも過保護過ぎるね。この歳なら料理とかで刃物くらい必須だろうに。
「んじゃ。薬草を刻んで擂って、煮込んでいこっか。鉄と反応する素材じゃあないはずだけど、変になったらごめんね?」
「ううん。ありがとう!」
私達は食堂に行くまでの間、自家製ポーションを作るのだった。




