361話 面倒報告と天ぷら
「──と言う訳で。クラゲ頭は大人の階段を登って成長、ダブリラさんは魔力超回復で絶好調。
期せずして、攻略隊の強化が成されました!」思惑通りですね!
「…。」サクッもぐもぐっ…
とりあえずの後処理を終えた私は、魔鉄家へと戻ってきていた。
明らかに問題になるだろう、泉氏族の箱入り娘と灰色夢魔さんとの蜜月(?)関係。それをとっとと報告してダメージコントロールを行う為だ。
シリュウさんは時折私に目線を向けつつも、素知らぬ顔で食事を続行していて何も口を挟みはしない。
満を持しての「天ぷら」に夢中の様子。貴重な新作料理を切ることになったが効果は一目瞭然だ。
ふっ…。「食事を提供しながら話せばシリュウさんは気にしないだろう作戦」、完っ遂っ…! 赤熱魔鉄の上に置いた油鍋も「パチパチパチ!」と拍手喝采してくれている、ぜ…!(油跳ね音)
「…、まぁた、面倒なことしてくれてんねぇ…。」なんでそうなるんだい…
「ん。ん。」全力うなずき…
ダリアさんとウルリが何か言っているが問題無し!
「と言うか、なんでまたダリアさん、ここに居るんですか…?」
「居ちゃ悪いかい。」
「いや、別に困りはしませんけど。そんな頻繁に来る余裕有るのかなぁ、って。」
「ちゃんと任務はやってんだ。文句を言われる筋合いは無いよ。」
そう言って、料理を頬張っている食いしん坊を満足気に見るダリアさん。
まあ、うん。クエストで狩ってきた魔物のブロック肉を持ってきてくれてるし、助かるのは助かるんだ、本当。
でも、その大きさがなぁ…。なんで軽自動車サイズのものを、4つも…。
いや、元が巨大な魔猪の肉だからデカいのは当たり前なんだけど、何故もっと分割しない…。
しかも自ら風魔法で浮かせて持ってきたとか何を考えているんだろ…。荷馬車とか使えばいいのに…。町中とか門を通る時、トラブルにならなかったのかな…。
「まあ、娘さんとか旦那さんとかが許してるなら良いんですけど。」
「…、当然だろ…。」真顔目逸らし…
う~ん、これはプチトラブってるな。放っておこう。
「シリュウさん、お味とかどうですか?」
…ごくんっ
「美味いな。カラアゲとはまた違って、良い。噛み応えが面白いし、腹にも溜まるからいくらでもいける。」
作っているのは主に、魔猪肉の天ぷら。これがなかなか絶品なんだ。まあ、豚肉の天ぷらに近いと言えなくもないから、美味しさは確約されていた様なものだが。
あと、思いつきで試しに揚げてみたキュウリもどきやショウガもどきも存外好評だ。
水気たっぷりで短時間揚げのキュウリだが面白食感だし、紅生姜天は関西地方に存在するご当地(?)天ぷらだから問題なく食べれる訳だが。
天ぷらの衣に使う大量の卵を持ってきてくれていた顧問さんには大感謝である。
どこぞのクラゲ頭とは大違いだ。
あと、アクアが生成してくれる冷たいお水も有り難い。天ぷらの衣には冷水だからね。冷たいとなんしか衣がサクッとするし、料理全体のグレードを上げてくれる気がする。
どこぞのクラゲ頭とは(略
「…、(もの凄い料理だ…。)」卵が、あんなに…
「? あ、ウルリも食べる? お腹空いてるでしょ?」
「や!? や!大丈夫!」全力首振りっ!
「別に今さら遠慮することないと思うけど。ダブリラさんを普段お店に置いてくれてて、こっちも助かってるんだし。ねぇ、シリュウさん?」
「…。まあ、そうだな。今日もダブリラの相手をして疲れただろ、少しは食ってけ。」あの水エルフは放っておけばいい…
「や、や! 私は、何もしてないんでっ!」超遠慮!
「そんなこと言ったら私だって何もしてないけど。」
「何言ってんの!?」驚愕!?
「ん? だって甘味食べて、少し話して、それだけだし。クラゲ頭達の処理は紅蕾さんが1人でやってくれたし。」何もしてなくない…?
「あの『凄い風』で部屋ん中、『浄化』してたじゃん!?」ゴォーって!
なにやらウルリが興奮して私の言葉を否定してくる。
食事中は静かにした方が良いよ?
「えー? あれは単に風の呪文を唱えて、空気の入れ換えしただけだし。」それくらいの行為は普通…
「ダブリラ様がドン引きして逃げたんだけど!?」普通じゃないって…!?
クラゲ頭達を退けた後〔破邪の清風〕で淫気を消し飛ばせないか試しただけなんだけどなぁ。確かに、直前までウザ絡みしてたダブリラさんが、ラ○ュタのム○カばりに「目がぁ~!?」って叫んで影に消えてったけども。ここは地上なんだし、落下死なんかする訳ない。大丈夫だ、問題ない。
「…。またなんかしたのか。」
「いえいえ、ちょっとした汚部屋の殺菌消毒を手伝った、それだけですよ…。」気にしない気にしない…
「『それだけ』じゃない…。」げんなり…
「…。まあ、良いが。」サクッ…ローゲル天もうめぇ…
「…、(竜喰いさん、絆されてる…。)」無駄だこれ…
「あ、そうだシリュウさん。明日は私、指令所の方にお邪魔する予定なんで、また少し留守にします。」
「今度は何する気だ…?」一応警戒…
「何も心配することは無いですよ。『攻略隊強化作戦パート2』をチョロっとするだけですんで。」
「…。」ぱーとつー…?
シリュウさんが眉根を寄せて、私の方をじーっと見つめる。
「『タコ女』に、あまり関わるのは避けた方が──」
「シリュウさん。
この天ぷら、『タルタルソース』を付けても、美味しいっすよ…?」
「!!!」超級版『マヨネーズ』のやつ…!
くっくっくっ。面倒な話題をする時は、相手の機嫌が良い状態で行う。鉄板だぜぇ…。
「じゃあ、早速作っちゃいますね~。」油と酢浸け野菜と~…
「ああ!!」サクッ!!
「…、(良い様に使われてるねぇ…。)」無言呆れ…
「…、(テイラって、なんかもう『魔王』なんじゃないかな…。)」現実逃避…
次回は26日予定ですが、ちょっと投稿が遅くなるかも。




