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355話 歌による対話(効果のほどは時と場合と相手による)

「~♪♪」ららら~♪


 魔鉄製の家屋の中で、私は今、全力でカラオケをしていた。


 伴奏もない完全アカペラ、右手に持った鉄マイクはガワだけのハリボテだが、目を閉じ前世(むかし)を思い出して声の限りに歌っている。



「あっひゃっひゃっ!! ひーっ!ひーっ!!」お腹がよじ切れる~!♪


 そんな私の側で、狂った様に高笑いをし続けている人物が居た。

 人の悪感情を食らう灰色肌の夢魔女、ダブリラさんである。


 私が思いつくままに歌っているのは、ハ○レン、ブ○ーチ、S○EINS;GATEなど、私の青春ド定番のアニソンメドレーだ。決して笑いのツボは存在しない。

 ついでに言えば、私が音痴な訳でもない。美声からは程遠く、歌詞の抜けも有るけれど、そこまで可笑しな要素は無い。はずだ。



「あっひゃっ!! ひゃーっ!ひゃー!!♪♪ ひーっ!もう!無理~!♪♪」目に涙…


 では何故こんなことになっているかと言うと、今この場に居る3人目の人物が原因である。



「………………、」無言奥歯ギリッッッ!!!


 仏頂面を超えて今にも爆発しそうなほど激情を溜め込んだ、無(になりきれていない)表情の女。アクアの下僕と化したエルフ少女、ミャーマレースである。


 魔法で作った水魚に腰掛け、部屋の隅で腕を組んで座っている。

 時折目を開けて視線をやれば、ウェーブの掛かったキラキラ青髪が、恐らく怒りで噴出しているであろう魔力放出の影響か、しきりにゆらゆらと揺れていた。


 そう! ここに集った私達は、異常魔力に対抗できるスペシャルチーム「対シリュウさんお世話係」なのだッッ!!(精一杯の虚勢!)


 ──やってらんねぇよ、こんちくしょー!!(即座の本音)


 なんでこいつらと1つ屋根の下で過ごすハメになるんだ! ダブリラさんはまだウザいだけで済むけど、ヒステリックブラコンエルフのクラゲ頭と何を話せと!? 無言で家の中に居られるのもストレス半端無いんだが!


 ダリアさんは、ちゃんとした休息の為に町に戻ってもらったから今居ないし! もぉ~!!



「よーし! 次はアップテンポの曲でいこうかなー!!」

「お、お、面白っ!♪」ひぃー♪ひぃー♪

「………っ、」無言イライラッ!


 すみませんね、ダブリラさん。アニメデ○ノートの曲は歌えるほどじゃないんでパスします。


 このモヤモヤを解消する為には! 全力歌唱が相応しい!

 よし! 「o○ly my railgun」! 君に決めた! ジャッ○メントですのっ!!




 ──────────




「ふぅ~…。」お水コクコク…


 あ~、アクアの水が美味(うめ)ぇ~。()れた喉がみるみる再生していく様な気さえするよね~。実際、回復効果が有る訳だが。

 それにしてもやたら美味い。


 カラオケ店ではもっぱらオレンジジュースばっかりだったけど、これが有ればもう何も要らない。1人で3時間ノンストップ、余裕です。



「ふむ、何も要らない…、何も怖くない…。次は『ま○マギ』でいくか。『M○gia』の歌詞、どれだけメモしてたっけ~?」


 親友(レイヤ)の奴が闇属性の精神魔法を使って私の頭の中と同調してくれたおかげで、アニメとかの知識はやたら鮮明に残っている部分は多いんだが、如何せん昔の記憶過ぎるんだよねぇ。時折思い出しては鉄板に刻んではいるけど、間違えて覚えてたりする部分も有るしな~。


 私が無意味なことを悩んでいる間に、ぷるぷると震えながらダブリラさんがスィ~と寄ってきて話し掛けてきた。



「て、鉄っちっ、もうその辺にしてぇ~…!」お腹に手を当て荒い呼吸…

「だが断る! その腹筋(げんそう)をぶち殺す!」

「レースちゃん、本当に、爆発するからww」逆さまゲラゲラ笑い…!


 見れば、クラゲ頭の髪が完全に重力に逆らって上に流れていた。

 ス○パーサイヤ人かな? 静かなる怒りの波動に目覚めてらっしゃる。



「“怒髪、天を()く”って、あんな感じなんですね。」本物すげー…

「呑気過ぎるでしょww 魔力場の乱れ方、ヤッバいよぉ~w」

「どうせ私には分かりませんし?」気にしてもはじまらない~…

「いや見れば分かるでしょ、ヤバいのはww」


 まあ一目瞭然だけども。



「そもそもなんであんなにキレてるんです?」

「鉄っちの歌のせいでしょwww」お腹痛いー♪

「ここは一応、私の家でもありますし。何をしようと勝手じゃないですか。」

「それはそうだね~♪ (あんな絶叫してるのは訳分かんないけど~♪ 歌詞(ことば)もめちゃくちゃだったし~。)」


 鉄メモを漁りつつ、半ば独り言の様に思いの丈を吐き出していく。



「向こうも町からの依頼でここに常駐しなくちゃいけないのは理解できますけど、挨拶もなく我が物顔で家の中に入られて、無言で居座られてるのも正直、どうかと思うんですよね。」


 家の外にはクラゲ頭の従者達も控えている。せめて、そいつらと一緒に寒空の下で待機すれば良いのに。高魔力持ちなんだから気温操作なり体温保持なり簡単にできるだろうし。



「ん~? 大方、シリュウくんの側でしっかり見張れって言われたんじゃない? レースちゃんも不本意っぽいよ~?♪」軽く邪眼発動…

「彼女、もう100歳近いんでしょう? 氏族エルフとしては若く扱われるのかもですけど、それだけの(とし)を重ねておいて、周りの意見にただ従うってのも、格好悪いですよね~。」

(あお)るねぇ~♪」

「事実でしょう?」

「だよね~♪」

「…っ! (うるさいですわね…!!)」


 まあアクアに、人間への奉仕活動を強制されて不自由してるんだろうけど。

 そもそも要塞寝室を作るきっかけは、このクラゲ頭が鉄の家を粉砕してくれたことが始まりだ。ある意味、こいつ自身が招いたことだと私は思う。



「ってな訳で! 私の気が済むまで歌いまくってやりますよ~!! 次のタイトルは、親友(レイヤ)も大好きな、劇場版ガ○ダムOO(ダ○ルオー)だぁ!」人類の存亡を賭けた対話の始まりー!

「!! (こいつっ!)」風ガキの顔がちらつく…!?!

「意w味w分wかwんwなwいw」w混w沌w過wぎwるw


 私の歌を聞けー!!


家から離れて聞き耳を立てるウルリ(何あのヤバい空間…。)超警戒モード…

食材満載の荷車を引く鈍亀「ギュー?」どしたのー?…



次週8日は更新を休みます。

次回は15日予定です。

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10〜15年くらい前の曲ばっかりじゃないか…!(絶望)
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