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343話 突然の乱入者と記憶の紐付け

「ちょっと待ったあーーーー!!」



 気絶したローリカーナを解放し、さあ後片付けだと行動しはじめたタイミングで、謎の大声が響いた。



「?」

「お? 追加の挑戦者かな~?」


 声の方を見てみれば、冒険者風の男が観客の隙間から抜け出てこちらにズンズンと歩いてきていた。

 なんか無駄に険しい顔をしてる。挑戦者じゃなくて、迷惑客(クレーマー)が文句でも言いに来たか? おバカ貴族の関係者…には見えないが。



「ちょい待ち。用件はなんだ?」サッ…


 警備担当の軽薄男(リグ)さんが素早く横に並び、初期対応をしてくれた。



「決闘がしたい。通してくれ。」

「見ての通り模擬戦は終わったんだ。女貴族さんも気絶しちまってるし、戦えない。

 花美人のあの人と決闘したいのか?」

「いや、違う。」


 リグさんとの問答に足を止めた男は、腰に吊るした大剣に手を掛けながら実況席(こちら)を見てまた声を張り上げた。



「俺は『()える炎剣(えんけん)』のパーティーリーダー、フギド! ここに、決闘を申し込む!」スラリ…!


 男が自己紹介をしながら剣を抜き放つ。それは赤い刃を持つ剣だった。

 そして、男の真剣な思いに呼応しているみたいに、鈍い赤色の刀身がみるみる内に真っ赤に赤熱しはじめる。


 まさか「えんけん」って、炎の剣って書くのか…?

 だとしたら、「切れた・ナイフ」みたいに言葉の修飾のさせ方を間違ってない??


 私が余計なことに気を取られている間に、男が一際感情の乗った声を出す。



「そこの鉄使いの女! 俺と勝負しろぉ!」



 …。


 テツ、ツカイ、のオンナ…。


 鉄、使い…? ちょっと何のことか分からんアルヨ?



「…。ダブリラさん、ご指名ですよ。」ヘイトずらし…

「いや、鉄っちでしょ。鉄使いって言ってるし。」何言ってるの?


「いやいや、顔も知らない人から決闘を申し込まれる訳ないじゃないですか~。」またまた~(笑)

「彼の敵意、完全に鉄っちに向いてるけど?」

「あ~、なら誰かと見間違えてるですよ。きっと水エルフの方とかと。」

「『()使い』って呼ばれる水エルフも水夢魔(水妖人)も居ないと思うけどぉ?」

「…。」ちっ…!


 あ~もう! 私を指名するとか、いったい何なんだこいつ!


 仕方ない…。とりあえず対応するか…。



「あ~…! えっと、すみません。どちら様ですかー?」

「名乗っただろうがぁ!!」怒っ…!


 うるさい人だなぁ…。(やから)の相手はノーセンキューなんですけど…。めんどくせー…。



「ごめんなさい。その名前に覚えが無くて…。どなたかと勘違いしてません? 私は──」

「『テイラ』だか言う名前だろう!? どう見たって黒髪(イラド)のガキと一緒に居た金槌(かなづち)女だろうが!」


 かなづち? トンカチなんか振るった記憶は無いけど…?


 ん? 「イラドのガキ」?

 シリュウさんのことだよね…?


 はて? そんな風に(わめ)き散らした奴が、最近(むかし)、居た様な…。

 そう、ダリアさんとシリュウさんの、天変地異バトルの後──



「はっ!? いつぞやの『(わめ)凡骨(ぼんこつ)』さん!?」

「どう言う意味だコラァ!? 俺の名前はフ・ギ・ドだっ!!」


 思い出した! こいつ、あの時の冒険者だ!?


 あのスーパー魔法戦闘の様子を見に、派遣されてきた冒険者達!

 その中でもギリギリ印象に残ってる唯一の男! シリュウさんの膨大魔力を()て恋人が倒れたからキレ散らかしてた、あの!



「いやぁお久しぶりです。恋人の女性はお元気ですか?」

「今は関係ねぇだろうがぁ!! 元気だよ!!」大剣振り回し!!


 うんうん、元気なのか。それは良かった。



「それは良かったです! こんな所で道草食ってないで早く彼女の元に帰ってあげてください。お疲れ様です~。」手をヒラヒラ~

「馬鹿にしてのんか!? いいから勝負しろぉ!」


 自然に解散する流れには持っていけないか…。

 どうしよう…。


 私と知り合いと言うことで問答無用の追い返しができなくなったから、リグさん達警備担当も対応を決めかねている。

 野次馬達も喧嘩が始まるのかと期待の目で留まっていた。



「フギド! やめなさいよっ!」

「止めんな! ここで雪辱(せつじょく)を果たすんだよ!」


 観客の間から例の恋人さんらしき女性が追いすがってきたが、凡骨さんが止まる気配は無い。


 う~ん、雪辱か。あの時はシリュウさんが怒り出さない様に不意討ち全力で封殺しに掛かったからなぁ…。今思えば、まあ、男のプライドはズタボロか。そのリベンジをしたい気持ちも分からんでもない。


 でも、実況で割りと疲れたし、おやつに良い時間だから町に戻って異世界モンブランを食べて癒されたいところなんだけどなぁ…。

 料理人(サシュ)さんが、ママさんの全快のお礼にって気合いを入れて作ってくれてるはずだし…。



「ぃよ~しっ♪ その決闘、私が見届けてあげよう♪」ふよふよ~!


 灰色肌の夢魔さんが突如浮き上がりながら、辺りに響く拡声で宣言をした。

 観客達から歓声が上がる。



「ちょっ!? ダブリラさん!?」

「ほらほら鉄っち~、男が誇りを懸けて勝負に出てるんだから相手してあげないと~♪」ニヤニヤ~!


「感謝する!」

「ちょっとフギド!? あの夢魔(ひと)も尋常じゃない魔力よ!? 誘いに乗っちゃ駄目!」

「勝負を挑んでるのは俺だ、安心しろ。」

「できないわよっ。」


「~♪」たーのし~♪


 あ~…、ダブリラさん、あの2人が仲違いする様を見て楽しむ気だ…。

 そして、凡骨さんが負ければ、その敗北感もひとしお…。悪感情もモリモリ…。


 もちろん私が負けてもゲラゲラ笑うだろうなぁ…。とは言え、もう決闘の流れは止まらないし…。


 どうしよう…?


今回出てきた赤熱剣の彼は、108~109話に登場したモブです。

まさか再登場させることになろうとは…。つーか200話も前か…(遠い目)


何故こんな時に現れたんでしょうね?(すっとぼけ)


次回は8日予定です。

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