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339話 火魔法使いVS火魔法使い

「『ドラゴンクロー』!!」ゴオウ!


「──害意を焼き滅ぼせ。『炎壁(ファイアーウォール)』。」フォン…!


 背丈ほどの大きさの火炎手形が火魔法使い(ラーシ)さんへと襲いかかるが、炎の壁によって防がれる。

 壁は「盾」くらいの広さしかなく攻撃に対して明らかに面積が足りていないのだが、接触すると同時に火の手形は散り散りになる。



「『ドラゴンクロー』! 『ドラゴンクロー』ォ!」


「ローリカーナ、火炎攻撃を連打!

 しかし、火の盾はびくともせず! 堂々と空中に浮いています!」拡声実況!


 さらに数発の炎の手(だ○もんじ)が直撃すると、炎の盾は力を失った様に揺らぎ霧散した。

 しかし、その頃にはラーシさんの次の詠唱が間に合っている。



「──我が敵を焼け。『爆炎群球(ファイアーボール)』。」フォン…


 ボ… ボ…! ボババボッ!!

「ぬおっ!?」


 ローリカーナの周りに火花が散ったのが見えた次の瞬間には、複数個の炎の塊が出撃し爆発的に膨張。奴の姿が隠れるくらいの赤い大輪の花となる。



「爆炎が直撃ー! 棒立ちのローリカーナを火炎が呑み込んだー!」やったか!?


「──ぐっ! 『ドラゴンクロー』ォ!」ボバッ!


 煙の中から面倒女が飛び出してきた。髪や服が焼け焦げた有り様のまま、性懲(しょうこ)りもなく攻撃を仕掛ける。



「──『炎壁(ファイアーウォール)』。」フォン…


 そしてまた炎の盾に防がれた。



「一方的展開ー! ラーシエン選手が完っ全っにっ! この場を支配しています!」


 ラーシさんは涼しい顔でローリカーナを見つめつつ、早口の詠唱を続けている。

 既に杖を構えることもなく、真っ直ぐに仁王立ちしたままだ。



「まあ、こうなるよね~。」つまんな~い…

「解説のダブリラさん。何故小さな炎の盾で、大きさだけは有るローリカーナの攻撃が防げるのでしょう?」

「え~? 真面目に解説(お仕事)しろっての~? 見所も無い普通の戦いなんだけど~…?」めんど~い…


「我々素人には何が起きているのか理解しきれないので。お願いします。」

「えー? そんなこと言って大体察してるんでしょ~? 鉄っちから疑問とか困惑の感情漏れて(出て)ないし~♪」


 おい、五百歳(超年上)夢魔。実況の仕事をぶち壊すんじゃない。

 これでも色々頑張ってこんなことしてんだよ、こっちも。



「さっき、負け犬クラゲ頭(ミャーマレース)の姿を拝ませてやったんですから、その分の仕事はしてください?」プチ圧…


「あはっ♪ 鉄っち怖~い。ほんとに遠慮が無いよね~。私、ギルドの特級職員なんだけど~?」

「だったらなおさら、上級冒険者(ぼうけんしゃ)の活躍を他冒険者(いっぱん)の方々に教えてくださりますか?」


 周りを見れば、2人の戦いを真剣に見ている観客ばかりだ。

 騎士職の人達は納得顔っぽいが、兵士の方や冒険者なんかは隣の人と何事か言葉を交わしている姿が多い。


 ワンパターンのローリカーナはともかく、ラーシさんの様な多彩な魔法を使える人の、戦闘シーンをじっくり見る機会などあまり無いのだろう。



「んー、ま、いっか。それで何だっけ?」

「魔法的に何が起きているのか、解説をお願いします。」


 この会話の最中も戦い続けている火魔法使い達を見やりながら、灰色夢魔さんが何気ない感じで口を開く。



「まあ、要するに、魔力操作能力の『差』だね~。」

「やはり、ラーシエンさんが操作に()けている、と?」

「そうそう~。例えば、あの盾。

 ほら、彼女、『炎壁(ファイアーウォール)』って言ってるよね。ファイアーは『炎』、ウォールは『壁』って意味で、本来なら人の身長くらいの大きさで展開する魔法なんだよ。」

「火属性の一般的な防御魔法ですね。

 それを、わざわざ小さくしていると言うことですか?」

「そ~。ま、小さく出してるんじゃなくて、壁の大きさの炎を『(ちぢ)めて』るんだけど~。」

「なるほど。例えるなら、おが(くず)の山をぎゅ~っと圧縮(あっしゅく)して片手で持てる球にした、様な感じでしょうか。」

「お、解説っぽい~♪」やる~♪

「ぎゅっと押し固めて作った盾だから、強く頑丈であると。炎の手の方は、大きくとも中身がスカスカで、威力が無い訳ですね。」からかいスルー…


「ま、そゆこと~。あと、『魔力線』を繋いでいるかも重要かな。あの弱々貴族ちゃん、放った後の炎に魔力を注いでないんだよね~。注げない(・・・・)って言うのが正しいけど♪」

「攻撃した後、そのまま放り出しているってことですね。もし、放った炎に魔力を繋ぐことができていれば、相手の盾を避ける様に形を変えたり、進路を変更したりすることが可能になるでしょう。」


 言っている側から、火炎手形が何発も炎盾と接触し霧散していく。


 そして次第に、ラーシさんの周囲から火炎の矢が放たれ、突如発生する爆炎と共にローリカーナを追い詰めはじめた。



「遠隔発動の爆炎にも対応できないし、ダメダメだよね~。」

「自己回復の魔法で無理矢理に突破していますが、どんどん苦しくなっていきます!」

「まあ、これはもう勝ち目無いよね。」

「ローリカーナが勝つには、鎧を装備した上で、剣を使った接近戦に持ち込めば或いは、と言ったところでしょうか?」

「魔法耐性の高いやつならなんとか、かな~? まあ、それはもう模擬戦(・・・)じゃないけど♪」今でも結構ギリギリ~♪

「ラーシさんは接近戦でもかなり動けますし、どのみちかもですねぇ。」


 そのうちに、続々と被弾し続けローリカーナが「燃える死体(ファイアーゾンビ)」と化しはじめたところで試合は終了となった。

 ラーシさんも容赦無いし、燃えながらもなお動こうとするローリカーナも頭おかしいし…。


 まあ、派手で見応えは有ったかな、うん。


ちなみに、『(魔法名)』の呼び方ですが、カタカナ読み・平仮名読みなど、複数有ります。

『爆炎』を「ファイアーウォール」と言うのが正式で、「ばくえん」と叫ぶことでも発動可能です。

詠唱や魔法名が長いほど威力や効果が高く、短いと咄嗟の発動が容易だったりします。使い分けてる訳ですね。



次回は11日予定です。

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