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337話 ドラゴンと憑依召喚

今日は、この作品を投稿してちょうど3年目の節目です。

総合評価は1000ポイントを超え、ブックマークも300件近く有って、驚くばかり。


しっかし、なんでこの主人公はそんな有り難い日に、他人の模擬戦の実況なんかしてんのかな…?



 


 ──ウォーーーー!!



 吹き荒れる白光の嵐の中、フーガノン様を覆う様に白い首長竜の幻影が現れる。

 この鳴き声からして間違いなくロザリーさんだ。


 翼の無い四足歩行の首長(くびなが)ドラゴンの影は、普段の実体を伴うことなく、吸い込まれる様に主の身体へと消えていく。



「」コォォォ…


「あっはっはっはっ!! すご~い♪ 無属性のドラゴンで! 『憑依召喚』! こんなの初めて見た~!」面白い~♪


 解説者(ダブリラ)さんが興奮気味に笑っている。


 そこには、全身に分厚い白光を纏ったフーガノン様が立っていた。

 彼を中心に空気が押し退けられている様な、恐ろしい気迫がビリビリと伝わってくる。



「ひょ、憑依、召喚、との言葉が聞こえました。

 いったい、何が起きたのでしょう…?」

「そのまんまだよ~! 騎乗の為に召喚するんじゃなくて、竜の魔力を人の身に宿す形での召喚。

 コウジラフ(この国)の頭の悪い格闘家達が、竜と殴り合う為に編み出した、狂った技術だよ~!♪」


 非魔種(わたし)の目に見える現象を起こすくらい莫大な魔力。どう見ても、ス○パーサイヤ人です。本当にありがとうございます(?)


 そして、変わった点がもう1つ。

 フーガノン様の後頭部から、その長髪を突き破ったかの様に、白く太い角が2本、生えている。


 ロザリーさんと融合したってこと…? 人馬一体ならぬ、人竜一体…?



高位夢魔(ダブリラさん)にそこまで言わせる技、とか、とても危険なものの様に聞こえるのですが…?」

「危険だよ~♪ だってドラゴンだよ? 普通、人間の器ごときに収まる魔力じゃないからね~♪ 体が内側から破裂するよ~♪」

「めちゃくちゃ危険ってことですね…!?」

「それに~、完全に裏目だね~。この戦いだと♪」



 ダブリラさんが好奇の視線を向けた先、クラゲ頭が動きをみせた。

 今まで構えもせずに腕に貼り付けていた鉄短杖を、しっかりと握りしめフーガノン様に向ける。


 杖の先に複数の水球が出現し──



 チュドッ! チュドッ!



「!? ミャーマレース、攻撃(・・)を仕掛けたぁ!?」


 炸裂音と共に水球が高速で飛来する。

 それを、白き竜人間は軽く(はた)き落とす様に腕を振るって弾いていた。



「今の色無し色男(かれ)は、人間じゃない(・・・・・・)からね♪ 誓約の対象外って訳~♪」

「ちょ!? それは危険過ぎます! 今すぐ止めさせないと!」

「大丈夫だって~♪ 竜の肉体と鱗を装備してる様なもんだよ? レースちゃんの様子見攻撃なんか通じる訳無いよ~♪」



「──そう。全力でやっていいのね。」ズアアア…!


 クラゲ頭が何事か呟いた直後、全方位に紋様が浮き出た半ドーム水球が展開され、その外側に何十個もの水球を出現した。


 全ての水の球がすぐさま形を変え、一抱えは有る大きな流線形の魚の姿になる。

 そいつらは、空中で尾鰭(おびれ)をバタつかせはじめた。



「──ま、本気の攻撃は通じるだろうけど♪」どうなるかな~?

「なっ──!?」そんな適当な!?



 ──バシュッ!バシュ! バシュシュシュッ!!



 ロケット弾もかくやと言った勢いで水魚達が飛び出していき、フーガノン様へと殺到する。


 しかし、直撃したらただでは済まないだろう攻撃を、あの方は体がブレる様な動きで回避していた。

 そのままの勢いでクラゲ頭へと駆けていく。



「──!! 殺人魚の突撃を全回避!」

水属性(みず)の概念特性『浸透(しんとう)』が付与されてるからね~。属性無しの魔力鱗鎧(よろい)じゃあ防ぎきれないもんね~。避けるしかないよ~♪」


 これなら大丈夫かと思った矢先、後方へと流れていた魚達が次々に向きを変えた。



「!? 『魚』が戻ってきた!?」

「当たり前じゃん~、わざわざ生き物の形にしたんだから自律行動くらいしてくるよ♪」

「あれ全部が誘導弾!? しかもあの速度で!?」嘘でしょ!?


 背後から巨大肉食魚(ピラニア)の群れじみた攻撃が迫るが、フーガノン様は高速で走りながら白光の拳を突き出し魚水を潰していく。


 しかし、それで生まれた時間(すき)を使ってクラゲ頭が次の手を打っていた。

 水ドームの周りに、追加の水生物が召喚されていたのだ。


 無色透明だが、形的には恐らく「(カニ)」だろう。

 展開された4匹の蟹達が両腕(ハサミ)を掲げ、フーガノン様に照準を合わせると極細の水レーザーが放たれる。



「ここで追加攻撃!? ヤバくないですか!?」

「大丈夫大丈夫~♪」


 8本の水流束と自爆特攻の魚雷群を、白き竜人間は俊足による回避と、輝く拳・蹴りで防ぎきっていた。

 攻撃がぶつかる度に、辺り一帯をかなりの衝撃音が駆け巡っている。


 マ、マジで、ド○ゴンボールの世界…!!



「あ!? 魚雷の群れが再召喚されてます!?」何十匹も!?

「レースちゃんも容赦ないねぇ♪」

「これ本当に大丈夫なんですか!? 一応模擬戦なんですよ!?」

「今の色男君は相当劣化させた『シリュウくん』みたいなものだから。耐えれる耐えれる~。」憑依召喚すげ~♪


 いや、その表現分からん! シリュウさんが凄過ぎて比較対象には不適切っ!


 いや、比較できる程度まで差が縮まってるから凄いのか…!?


 私が対応に悩んでいる間にも、水と白の大乱戦は激しさを増していく。

 それを呑気に眺めながら、何ともなしに灰色夢魔さんが呟いた。



「あ、そろそろ終わりだから悩む必要無いよ~。」

「はい…?」

「彼、何か仕掛けるみたい。もう憑依状態を維持できなくなるから、最後に1発食らわせてやるつもりっぽいよ~♪」戦闘狂い~♪

「いや、この状況で憑依が解けたら!?」

「レースちゃんの誓約が再適用されて攻撃は止まるから、平気平気(へーきへーき)♪」


 あ、そうなるの? なら、大丈夫か…?



「それに、このまま続けてもレースちゃんの魔力回復力(かいふくりょく)を考えたら、どのみち負けるしね~。」

「くっ! 世界樹の加護持ちはズルい!」チートだ!チート!


(…、その加護を奪った上に、同等の「何か」を与えた鉄っちと不気味水精霊の方が、よほど摂理(ことわり)に反してるんだけどなぁ…?)無言の引き…


 ダブリラさんの言う通り、迎撃も回避も止めたフーガノン様がクラゲ頭目掛けて真っ直ぐに走り出した。

 水流束と魚雷が直撃する度に白い魔力光(オーラ)が減っていく様に見える。が、白い人竜騎士は止まらない。



「フーガノン様が突っ込む! 防御をしないノーガード戦法で攻撃を仕掛ける模様ー!?」本当に大丈夫!?

「果たしてどこまでやれるかな♪」


「…っ! (ドラゴン風情を従えただけで調子に乗って…!)」結界強化!


 クラゲ頭が両腕を前に出し、結界が強く輝きだした。どうやら防御を固めて──



「──『咆哮掌(ほうこうしょう)』。」スッ──



 水レーザーを浴びながらフーガノン様が立ち止まり、両腕を上下に突き出した。


 瞬間。音が、消えた。



 ──ドンッッ!!!



 1拍の後、重い衝撃音が響く。



「!!?」ゲボッ…!!


「レースちゃんの水結界を…!?」うっそぉ!?

「正面からぶち抜いたー!!」あれはまさか…か○はめ波…!?


 残心したままのフーガノン様の両手から生じた爆発的な白光が、水蟹と結界とクラゲ頭の体を諸とも貫いて、扇状に広がったのが目視できた。



「ぶ厚く高密度の水の城壁を! 白き散弾が貫きましたー!!

 ミャーマレースは、体を『く』の字に折り曲げ、吐血!!

 超絶必殺技が! 完璧に入ったー!!」


次回は28日予定です。


が、更新できるか少しばかり微妙かもです。

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