321話 杖をめぐる攻防と最後の一手
皆さんおはようございます!
ただいま3月31日の深夜36時半です!
つまりは日曜日! 予定通りの投稿!
そして、私の家が火事です!
…ところで、関係ない話ですが。
エイプリルフールの嘘って、午前中だけ、って話が有るみたいですね? ハハッ…。
水球に捕らわれてもなお抵抗したウルリが、水エルフの持つ杖を蹴り落とした。
とっさに飛び出していた私は、落ちていく杖に狙いを定めて全力で走りながら叫ぶ。
「落とし物だぞクラゲ頭ぁー!」
あの杖は、非魔種が見ても綺麗と感じるほどに輝いているから強力な魔力を帯びているはず。とても大事なものだろう。
と言うか十中八九、水属性の世界樹の欠片に違いない。
呆けている様子の奴が正気に戻れば、ウルリを即座に害することは明白だ。
そのヘイトがウルリに戻る前に、こっちに向けさせる!
走りながら鉄塊を腕輪から適当に取り出し、先が4つに分かれた槍を形成する。
ただの鉄槍で、あの短杖を傷つけられるとは思っていない。
とにかく鉄を接触させて巻き付けてやるのが目的だ。
魔法の発動媒体に接続できなくなれば、クラゲ頭の魔力操作はガタ落ちするはず。
「──!!」ヒュヒュン!
「鉄っち!防御!」
私に向けられた手から、水の塊──水の「針」か?──が数発、撃ち出されるのが見えた。
どこぞの二代目○影の卑劣様みたいなノーモーション極悪効果の魔法かも。ダブリラさんの言う通り防御を──
いや! 危機察知は反応してない!
今は受ける手間も惜しい。このまま突っ込む!
そう結論付けた私は、水針を無視して真っ直ぐに走る。
針2本が直撃コースに入って──
「キャーイ!!」シュバッ!
「カミュさ──!?」
水針が2本とも、私の背中から飛び出した子竜に接触し、その体が虹色の粒子になって霧散した。
カミュさんは、召喚竜だ。
私にくっ付いていたのは魔力で出来た体を持つ分身。本体はナーヤ様の所に居て無事なはず。
だがしかし。
分身とは言え、痛みや恐怖は普通に有ったはずだ。
私が、巻き込んでしまった。
あのクラゲ頭の水エルフが、彼を害した。
「っ…!」
後悔や反省は後回し!
今は! 何が何でも! あの杖を奪取する!
その後で! あいつの顔面、凹ましてやらああ!!
「触れるなあああああ!!!!」
女の絶叫と共に、空中でピタリと静止した短杖が、強力な青色光を吐き出しはじめた。
──フォファァァァ!!
「んぐっ!?」
大洪水の濁流に飲み込まれたみたいに、凄まじい圧力が体全体に掛かってくる。
だが、水が生成されている訳ではなく青い光の奔流が広がっているだけだ。
それなのに。身体強化をさらに込めて踏ん張っても、一歩たりとも前進できなくなった。
むしろ後退しかけている。
両腕で握る鉄槍がカタカタと震えて押し戻されはじめた。
空間に圧力を生み出す魔法…!?
いや、呪怨鉄の槍に効果が有るから魔法じゃない…!?
こうなったら…!
鉄を追加で取り出し巨大な覆いの盾を作って、両腕に装備し構える。
ちょうど外から見たら、ガ○ダム種死の水中対応機体、ア○スガンダムの肩パーツみたくなっているだろう。
全身フルパワーで水中突貫っ!!
ラグビーの肩組みスクラムの様な姿勢になって、丸い鉄ヘッドを盾ににじり寄る。
それでも、近づけば近づくほどに謎圧力が増していく。
盾越しに薄目を開けて前を見るが、最後の数歩の距離が縮められない。
うっぐっおおおお…!! あと、ちょっと、なのに…!!
多分、ダリアさん達がクラゲ頭を相手し続けてくれてるから、攻撃が飛んできていない。
だからチャンスは、今しか無いんだ。
でも、あと一手が、足りない…!
鉄を足下に追加して重量を増しても、前進は無理。
棒を伸ばしても、圧力で支えられない。
〔破邪の清風〕は既に発動してるから、風魔法で押し返すのも望み薄。
何か、何か方法は──!!
──パカッ にょーん…
悩む私の腰から、半透明の青い物体が伸びて、頭上を飛び越えていった。
アクア…!?
鉄巻き貝を背負ったその姿は間違いなく、スライム水精霊のアクアさんである。
水中を優雅に泳ぐタニシの様に(タニシって泳げたっけ??)、激流じみた謎波動の中を突き進んでいく。
そしてあっと言う間に。短杖の側まで近づき。
その触腕が、ピタリと杖に触れた。
──ビガアアアア!!
激烈な青い光が辺りを覆いつくす。
目が眩むなんてレベルではない。
め、目があああ!? 痛いぃぃ!?
何してんの、アクア!? 何してくれちゃってるのぉ!?
次回は7日予定です。




