319話 激突と微妙な救援
何やら「小説家になろう」の仕組みが変わった様子。
特に執筆編集画面がガラリと仕様変更されています。
無事に投稿できたかな…??
久しぶりの投稿ですが、ゆるりと暇潰しになれたら幸いです…。
「うっあ!?」
「キャー!?」
水のドームの中は大嵐の様相を見せていた。
青く輝く水の渦が、巨大な蛇の群れの如く流れ落ち。
緑と橙色に輝く砂竜巻が、破城槌となって水流をぶち抜く。
鉄棺の形を重量級のタワーシールドに変えて対応するも、強烈な衝撃波に思わず叫び声を上げてしまった。
背中の子竜カミュさんも必死にしがみ付いている。
ちぉおい!? なんか私に対してよりもぶちギレてんですけどぉ!?
あのクラゲ頭にとって、「アニキのオマケ」ってそんなレベルの禁句なの!? ダリアさんは事態を収めに来てくれたんじゃないの~!?
目視と危機察知を活用して、盾から飛び出て回避行動を取ったり、身を屈めつつ新たな盾を生成したり、タワーシールドの陰に戻ったりして魔力渦巻く暴風をやり過ごす。
「おらおらおらおらぁ!!」
ダリアさんが竜骨棍棒を空中操作し、ロケット弾みたいにクラゲ頭に叩きつけようとするが、それを虚空に生じた水の盾が受け止めた。
衝突部分の水が弾け飛ぶものの、残った所が軟体動物の足の様に絡みつき棍棒を捕縛する。
その頃には無手になった両腕から、拳大の砂塊がマシンガン並の手数で撃ち出され。
突如降り注いだ局所的豪雨のカーテンと激突。
ドロドロの粘土みたいな塊がいくつも生まれ、地面にベシャベシャと落ちていく。
あああ! もうどうしたらいいの!? って危なっ!?
ともかく逃げようと離脱も考えたのだが。
水ドームの壁を引き裂こうと近づいたら、内壁が形を変え水の槍衾となって襲いかかってくる始末。
鉄盾を構えたまま強引に突破できそうではあるが、背後から飛んでくる即死級の攻撃にも対処しなくていけないので結局動けなかった。
そんな中、この状況に似つかわしくない呑気な声が聞こえてくる。
「はいは~い♪ 2人ともその辺にしとこうね~♪」
周辺の大量の水滴と砂粒が黒く変色し、ボロボロと崩れ消えていく。
ダリアさんの足下の影が濃く大きくなったかと思うと、その中から黒い人影が伸びてきた。
「レースちゃ~ん? ちょっとやり過ぎだよ~?♪」
「ダブリラ…。」
クラゲ頭が、現れたダブリラさんを睨み付ける。
ダリアさんも「今、いいとこなのによ。」と言いたげな視線を送っているが、当の本人は少しも気にせずニマニマと笑っていた。
「邪魔、するな。」
「ん~? 何のこと~?」
「そこの2人を。『浄化』するのを、妨害するなと言ってるの。」
「え~? 理由は~??」
ダブリラさんの癇に障る声色により、クラゲ頭の水エルフは苛立った様に騒ぎたてる。
「視て分からないの!? そこの人間は〈呪怨〉持ち! 『砂塵の』は気色悪い『風』に毒されてるじゃない!」
「砂塵ちゃんはちょっと魔力回路が変わっただけだし~。
それにこっちの子は、シリュウくんのお気に入りだからさぁ、手を出すのは止めておいた方が良いよ~?」
「だからでしょう! あの男に干渉できる〈呪怨〉なんて、殺処分しなくてはいけないじゃない!!」
「ん~。この子の呪怨、結構特殊でさ~。ギルドとしても保護するべきだと思うんだよね~?
私個人としても、割りと、“目をかけて”るし~。」
怒りを露にしていたクラゲ頭が、ストンと表情を無くした顔になった。
「…、そう。お前まで、籠絡されたの。」
「うっわぁ~♪ 殺る気満々だね~?♪ そんなに強い感情を向けてくれて嬉しいな~♪♪」
「良いわ。あなたもまとめて浄化してあげる。」ゴゴゴ…!!
再び高まる水魔法の気配に、むしろ嬉しそうなダブリラさん。
うん、知ってた…。
この灰色夢魔さんが他人を煽ることを生き甲斐にしてることくらい…。
心の中で諦めの気持ちになっていると、その眼の周囲に紫色の魔力を纏っていたダブリラさんが突然大笑いしはじめた。
「ああ、そう! そっかそっか! 泉の氏族のレースちゃんが、なんでこんな土地まで派遣されたのかと不思議だったけど!
風氏族のお姫さまと勝手に敵対して、エルド島との交流を断絶させちゃったんだ~!?♪ やらかしてるね~♪♪」ゲラゲラ~!
──ビギリ。
蠢いていた水流が、一斉に動きを停めた。
水エルフも俯いたまま硬直している。
ええ~…? エルド島との国交断絶に関わってるの? このクラゲ頭さん…。
トラブルメーカー過ぎない…?
「な~るほどね~? それで、大・大・だ~い好きな『お兄様』の顔に泥を塗って、離れ離れになった訳か~♪ 御愁傷様~♪♪」ゲーラ、ゲラゲラゲラ!!♪♪
あ。
ヤバい。絶対、ヤバい。
「『大泉水牢』──!!」ゴォッッ!!
「──〈極大汚染・魔力惑乱〉。」ギュウウン!!
ダブリラさんの呪文と同時に、新たに構築されはじめていた魔法紋様が一部黒く変色し、歪な形のまま動きを止める。
紋様構築が邪魔されて魔法は不発になったらしい。
「あああアアア亜亜ァッッ!!!」
凄絶な顔になった水エルフが絶叫しながら、めちゃくちゃに魔法を連発しはじめた。ダリアさんもまた砂嵐と棍棒を操り、先ほどと同じ光景が繰り返される。
ただ、今度は私の所まで余波が飛んでこない。ダブリラさんが〈汚染〉の力で霧散させているらしい。
「あの、ダブリラさん? 助けてくれてありがとうございます?」
「なんで疑問形~? ちゃんと感謝してよ~?」心外だな~?
「あの水エルフをバカにしに来たのが、メイン目的に見えるもんで…。」
「あそこまで真っ直ぐに悪感情を叩きつけてくれるのは、面白いけどね~。鉄っちナイス~♪」ケラ♪
「きょうえつ、しごく…。」投げやり返答…
「まあ、シリュウくんがこっちに来るまで耐えれば制圧はできるから、もうちょっと頑張ってね~。」おっと、〈汚染〉・〈汚染〉~♪
「え? シリュウさん? いやでも、このまま押しきれるんじゃ…?」
「ん~それは無理かな。砂塵ちゃんが挑発して精神を揺さぶってくれたから押せてるけど。腐っても『世界樹の欠片』持ちだからねぇ~、ミャーマレース。」
へらへらと「〈呪怨〉が効きづらいんだよね~。」って呑気に笑っているダブリラさん。
規格外過ぎない? そのスペック…。
こっちは私が足手まといとしても、「夢魔の女王」の娘と、戦闘狂土風エルフの2人がかりなのに…。
「ま、シリュウくんの封印の方に大部分の魔力を使ってくれてるから、ここまで楽に戦えてるんだけどね~。」
「封印…?」
確かダリアさんも、シリュウさんの封印がどうのこうの言ってた様な…?
「ん? ああ、知らないか~。
今、シリュウくん、レースちゃんの魔法で身動きが封じられてるんだよね~。」
「え!? だ、大丈夫なんですか!?」さりげに鉄盾防御!
「心配要らないって~。あのシリュウくんだよ?
まあ、レースちゃんに出し抜かれたのは、らしくないお間抜けさんだけど~♪」
つまり、あのクラゲ頭は、草原に居るシリュウさんまで相手にしながらここまでのことをしているのか。
だったら──
鉄盾を地面に固定。
腕輪から適当な鉄を取り出し、バネ弓を簡易形成。
鉄の矢をセットし、身体強化を目一杯使って鉄の弦を引く。
──ギギギッ!
「ちょ、鉄っち何する気?」
「しっ!」
放った呪鉄の矢が、迎撃の水を貫いて、水のドームに触れた。
──ファン!!
澄んだ音と共に、ドームの一部が輝く紋様ごと弾け飛ぶ。
「!?」何事!?
「余所見してんじゃねぇよ!」棍棒ドーン!!
「くぅっ!?」
ドームの穴はすぐさま塞がるが、術者が戦闘中の為か紋様は再構築されない。
「うわぁ、鉄っちの呪怨ほんと気持ち悪っ…。」軽く引き…
「しっ!」第2射!
私の真骨頂は足を引っ張る悪質プレイだ、おらぁ!
このまま魔力を削りきってやらぁ!!
次回は24日予定です。




