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30話 藻塩

 シリュウさんから貰った肉はとてつもなく美味しかった。

 じっくり噛んで味わう。


 これは塩も良い仕事してる。


 2切れ目をゆっくり口に運ぶ。 

 と、そこで気づいた。シリュウさんがガン見してる。もぐもぐ。



「…。食べます?」

「いや、テイラが自分で焼いた分だ。流石に、な。」

「また、焼けば良いだけですんで。生じゃないし、謎塩かかってて問題が無いなら、どうぞ。」


 私は自分の残りを皿ごと渡す。


 シリュウさんは皿を受け取って、じっと肉を見つめてる。

 なんか「待て」させられた犬っぽい…。魔力で異常が無いか確認してる? ああ、手で掴むか悩んでるのか。



「フォークです。どうぞ。」


 鉄で新しく作ったフォークを差し出す。

 なんかまだ戸惑ってたけど、受け取ってフォークに肉を刺して口に運んだ。



「…。」もぐもぐ…


 ん? 目を閉じて、凄い噛んでるね。焼いて硬くなったかな?



「うめぇ…。」


 肉は生派の人かと思ったけど、焼いても大丈夫だったみたい。よかったよかった。

 さて、次焼くかな。



 シリュウさんが「焼けるだけ焼け。」と言うので、結局あのマンガ肉を全て焼くことになった。

 太陽が傾く度にアンテナ鏡の角度調整である。


 私の塩は残りがあまりに無いからもう使えないですって言ったら、あの黒いマジックバックからこれまたデカイ岩塩を出して渡してきた。

 いや、私岩塩見るの初めてだし、削り方とか分からないんですけど…。


 つーかその革袋、そのレベルの重量無効能力まであるんですね? こんな岩、そのままの重さで持ち運べないよね?? 性能ヤバくない?



 焼いた肉はほとんどシリュウさんがそのまま食べてしまった。


 割合は少ない私だけど、十分食べた。肉でお腹いっぱいになったのは久しぶりだ。いや、これの前は前世の焼き肉食べ放題の記憶だから、今の人生では初である。こんなに美味しい肉で満たされる機会があるとはなぁ…。


 しっかし、残り全部とか、シリュウさん食べ過ぎ…。


 おかしくない? あの量は普通に胃袋に収まるもんじゃないでしょう?? 物理的に無いよね?

 体型、まるで変わってないし。どこぞの海○王でも、もうちょっとお腹膨らむんだけど。

 もしかして、シリュウさんの胃袋って亜空間(マジックバック)にでもなってんの??


 そんなアホなこと考えて、ふと周りを見ると、夕暮れ時になっていた。

 わぁ、すっごい真っ赤。草原も綺麗に染まって()えるね。


 …肉、焼き過ぎ…。

 つーか半分晩ご飯だったね…。


 このままここで野宿である。




 ──────────




「また珍妙なものが出てきたな…。」


 私の寝床として出した鉄テントを見て、シリュウさんが呟いた。



「あんな量の肉の塊と岩塩を出す人に言われても…。」


 しかも、9割以上完食してるし。



「…。あのテイラの塩、旨かったな。どうやって作ったんだ?」


 露骨な話題転換だな。勝った。



「えーと、少し説明が難しいですかね。私1人じゃできないし。」

「誰かと協力したってことか。」

「ええ。冒険者やってた時に、パーティー組んでた親友と。」

「…。テイラの〈呪怨(のろい)〉を面白いって言った奴か…?」

「あれ?言いましたっけ?」

「呪いの存在知ってる親友がいて…、腕輪作りに血を提供した、って話しただろ?」


「…そうか。動けない時にキレながら説明しましたね。良く覚えてますね。」

「内容も行動も、忘れられそうにない衝撃があったからな。」

「アッハッハッハッ…。」目そらし…


 いやぁ、面目無い…。



「…。塩の話に戻ろう。」

「そうですね。えーと、私の親友、彼女は色んな魔法が使えるんです。で、私がぼんやり知ってた知識と鉄を使って、親友の魔法で手伝って貰いました。」

「そんな軽く作れるか?」

「? やることは単純ですよ? 海水から水分を取り除いて、塩の結晶集めるだけですし。」

「…。それが難しいんじゃないか? 相当な重労働で大変だと聞いたが。」


 あー…。日本の塩田でも、かなり仕事がキツいってテレビの特集でやってたっけ。炎天下に太陽ガンガンの屋外で、重い海水を何度もバシャバシャかけて、火を()いての釜茹(かまゆ)でだもんね…。



「そこは親友の魔法様々ですよ! 夏の日射しの中、親友が海水を浮かせて私の鉄板にかけて乾燥、を繰り返して濃い塩水にして、そこから鍋に入れて火にかけながら水魔法で逆に水分だけを抜いていく。出来た塩だけでもとても美味しかったですね!」


「…。水分だけを取り出すのもなかなかな魔力制御だが。鉄板をそんな使い方してんのかよ…。」

「そんなにおかしなことしてますかね? 私は鉄の塊しか出せないからなんとかやれること考えただけですけど。」

「いや、いい。…その作り方だと普通の海の塩だろう? あの味と色は?」

「あ~、普通に作った塩は、物々交換で食べ物を手に入れる手段だったもんで。

 今日使った塩は見た目変だからって不人気で残ったんですよ。色々やり方試した時に出来たやつで、藻塩を目指してました。」

「もじお?」

「あっ、えっと…。海藻の旨味を生かした塩のことで…。作り方は良く知らなかったので、色々適当に…。」

「かいそう…。海のクズ草(海藻)?…の旨味??」


 あっ、シリュウさんがフリーズした。


 テレビで存在だけ知ってたから、色々苦労したものである。


 最終的には、海水を釜で煮る時に生でも美味しかった海藻を投入して一緒に茹でて、出汁を取る感じにしたっけな。茹でた後の海藻は刻んで臼で潰して出来た塩を混ぜてみた。これがなかなか旨かった。見た目はだいぶ赤茶けたけど。

 塩の効いた海藻ふりかけ、って言った方が正しいかな。


 そう言えば、親友(レイヤ)の奴も、海藻を生で噛った私に驚いてたっけな。障気、この世界の病原菌的なやつが付いてないって教えてくれたの自分(ほんにん)なのにね。

 やっぱり海藻を食べ物と認識してる人が少ないんだろうなぁ。



 混乱してるシリュウさんは放置して、とっとと寝ることにしよう。


 口を(ゆす)いで水はそのまま飲んで、下着の機能チェックと処理もして、

 鉄テントの厚みを強化して、入った後に完全密閉。

 髪留めから酸素供給モードにして…、よしよし緑に光ってる。

 これで大丈夫だろう。


 最後に肩のアームを取り外しって、と…。



 おやすみなさい~…。


藻塩は、海藻を海水に浸けて乾燥させてを繰り返して、旨味が溶け込んだ濃い塩水を作ることで出来るそうですね。


この世界では海藻を食べ物と認識する文化が少数なのかも。

日本人が牛乳飲んでお腹を壊すこともあるように、海外の人が海藻を食べても分解できず体調不良になることもあるそうなので、

どちらにせよ、主人公の真似はしないでください。

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