3話 薬草採取
翌朝。
スティちゃんは早起きして食堂にお手伝いしに行き、私も薪割りをしに引っ張られ──
ふぁああ…。眠い…。
まあ、久しぶりにベッドで寝れたんだけどね。布に藁みたいなのを詰めた布団とは言え、毛皮マントよりは休めたと思う。
スティちゃんのベッドに2人で寝るのはギリギリだったけど。
床で寝ようとしたら止められたし。一応テントみたいなの出せるからなんとかなると思ったんだけどな。
村人達が朝ご飯を食べに集まってきた。ハロルドさんの姿も当然ある。手伝ってるスティちゃんを見つけて顔をしかめていたが。
朝からがっつり食べながら、軽い朝礼──とは言うより連絡事項の通達をして、男達が仕事へと食堂から出て行く。
去り際にハロルドさんが、「この後は大人しく家に帰っておきなさい。」とスティちゃんに言ってきた。
スティちゃんはそっぽを向いて無視である。
まあ、今から晩ご飯の準備は流石にしないし(ここは昼ご飯は無いみたい)、出発しようと思っていたんだけど…。
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「はて、なんでこうなった…?」
現在、私は薬草採りの護衛をしています。
汚れてもいい服で薬草をブチブチと引きちぎっているのはスティちゃん。なかなか荒れてらっしゃる。
お父さんの言い付けはガン無視ですね~。ストロングスタイルですね~。
…あ、その種類の草は根も買い取り対象…、いや。冒険者ギルドに売る訳じゃないし、いいか。
護衛と言いながら特に危険もない場所らしいので、私も食べられそうな山菜や香草を探して背中の籠に入れていく。
「しっかし、大丈夫かな~…。」
「お父さんの話なんか聞かなくていいの。自分勝手で私の話、聞いてくれないんだし。」
おっと、声に出してたか。独り言の癖は治らないな。
スティちゃんは数年前にお母さんを亡くしている。
その当時は町に住んでいて伯母のセラティーさんが二人を助けていたそうだ。そんな中ハロルドさんにこの村への赴任の話がきた。そして、ハロルドさんは娘や姉に相談することなくこの村への移動を決めたらしい。
まだ小さい娘を姉に預けることもせず、大人の男しか居ないこの場所に連れてきたのだ。ま、そこだけ聞くと嫌な父親だろうね。
セラティーさんは素性の怪しい私みたいなのを家に泊めて助けてくれた人で、この親子を気にかけていた。
ハロルドさんは仕事を頑張って、一人で娘を育てていこうと思ったんだろう。
娘のスティちゃんも優しくて良い子である。だって、今集めてる薬草はお父さんの体を想っての物みたいだし。
んー、なんか力になれればいいけど。
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採集中に、魔物が襲ってきた!
なんて、ネット小説みたいな展開は無く。
普通に食堂へと戻ってきた私達。
山賊──ではなくレイさん、は狩猟に出掛けている。私が居るからスティちゃんの面倒を見なくてよくなったんだと。
優しさで私を引き留めた訳でなく、割りと打算もあったんだろうな。
まあ、良いけど。
2人で山菜のチェックをして、薬草を持ってスティちゃん家に向かう。
「さて、レイさんが帰って来るまでに薬、調合しちゃおっか? その後は食堂でご飯作らないとね。」
「ううん。家に調合する道具無いからレイさんに借りないと…。朝、言いそびれて…。」
「…作りたいのは疲労回復の薬だよね?多分。必要なのは擂り鉢と鍋、とかって辺り?」
「うん。」
ハロルドさん働き過ぎなのか顔色あんまり良くないし、早くなんとかしたいよね。
「んー、それならなんとかできるかも。──私の魔法で。」
「ほんと?」笑顔!
スティちゃんが明るくなって、嬉しそうに笑っている。
ま、私の〈コレ〉は魔法じゃないけど、問題は無いでしょう!