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286話 雑談と急報と旅立ち

 7月の21日で、この小説を書きはじめて2年が経ちました。早いものです…。エタらずにまだ続けてるとか、作者の気まぐれが過ぎる。


 多分きっと、読者の皆様のおかげかもです。

 総PVも30万目前とか、どうなっているのやらやら。拙作は、チラシ裏の書き殴りと大差無いはずなのですが。


 まあ、気にしたところでどうにもならないし、本日もゆるっと投稿していきます。



「え? シリュウさんは春の大討伐作戦に参加しないんですか…?」

「…。ああ。」ジュウジュウ…


 漫画──じゃなかった、紙芝居のネタ出しの為に頭への刺激を求めて屋敷の共用スペースへとやってきた私。

 そこで、照り焼きソースと魔猪肉ハンバーグを自作自消し続けていたシリュウさんに出会い、その光景を眺めながら雑談をしていた。


 にしても、そんな勢いでお砂糖を消費しても大丈夫かな…。本人の持ち物だから自由にしたら良いんだけども。



「森を切り開くのにシリュウさんの火力は頼りになるはずだし、『例の魔王』の眷属?を滅ぼしに行く訳ですから嬉々(きき)として参加するものかと…。」

「…。色々と。難しいんだよ…。」もぐもぐ…


 照り焼きソースにまみれたハンバーグをマイフォークをぶっ刺し気難しい顔で口に運ぶシリュウさん。「あの森は、焼き過ぎるのも問題が──」とか「近づきたくねぇ…。」とか、ぶつぶつと呟いている。実に歯切れが悪い。

 食事に集中していないくらいだし、あまり触れない方がいい話題だったかも。



「あれ? じゃあ、なんで『北の大地』に行かないんです? 参加しないならぐっすり睡眠をとりに行く、またとない機会なのでは??」

「…。数年起きっぱなしでも問題ないと言っただろう。夜に数時間横にはなってるし、支障はねぇよ。」


 横にすらならず、仕事帰りの顧問さんやダリアさんを捕まえて飲酒駄弁りや将棋に没頭しまくってるとか聞いたけどな…。

 鉄グリップとか鉄立体パズルも何度か補修・追加もしてるし、休むことすらしてなさそうなのだが。



「支障はなくとも…。何か…、行くのに邪魔な要素が残ってるんです? ウカイさん達が北の大地(あそこ)の手前の町で起こってたギルドの騒動、完全に収めたんですよね?」


「…。その流れで、面倒な奴が居座ってるからな。」

「確か…、水の氏族エルフの方が、供回りのエルフ達と一緒に駐屯(ちゅうとん)してるとか…。大討伐でも主力として参加するらしい、って…。

 もしかして。シリュウさんと仲、悪いんです…?」


「悪い訳じゃ──いや、(はた)から見たら似た様なものか。

 あいつ──ミャーマレースは、偉そうと言うか、他者全員を見下してる奴でな。俺に戦闘力で負けてることが我慢ならないのか、毎度毎度突っ掛かってきて鬱陶(うっとう)しいんだ。」


「えぇ…。水のエルフって、知的で落ち着いたクール系の人達だと思ってたんですが…。」

「あいつはただガキなんだよ。成人(せいじゅく)前に水属性の世界樹に選ばれて調子に乗ってるんだ。」

「なるほど。世界樹の管理者ですか。それは凄い。」


 若くして族長権限を持つに至るとか、親友(レイヤ)と同じだ。ちょっと興味湧いた。


 まあ、レイヤの場合、リアル10代でそこに至った、エルフ史上稀に見る特例のはずだけども。



「あいつの兄貴が同じ樹の管理者で、なおかつ現役。言わば、あいつは予備戦力なんだが…。

 兄を支えようと阿保な方向に力を振るって失敗する、傍迷惑(はためいわく)な行動ばかりしやがる。周りのエルフ共も、見守るばかりで止めやしねぇ。」


 な、なるほど…。ブラコン(こじ)らせた妹が、世界樹の欠片(アーティファクト)の力で半ば暴走してる訳か…。

 それは面倒(めんど)い。近寄らない方が良いな。



「だからまあ、春が終わるくらいまでここに逗留する(居る)つもりだ。テイラは気にせずに、美味い料理を作ってくれればいい。スライム粉とやらで色々考えてるんだろう?」

「スライム粉はまだ製造ラインの確立すらまだですよ。気が早過ぎです。

 それに今は、紙芝居の次回作の内容を吟味してるところなんで。」

「ダブリラなんて放っておけば良いだろ。──?」視線を横へ向ける…

「いや、そう言う訳にも──」



 コンコンコンコン!!


 ガゴッ!

「失礼!」


「ゴウズさん?」

「…。」


 仕事をしているはずの堅物秘書(ゴウズ)さんが、何故か部屋に飛び込んできた。普段の雰囲気らしからぬ、随分と慌てた様子だ。

 そんなゴウズさんは、シリュウさんの方に向き直ると息を整え急報を告げた。



竜喰い(ドラゴンイーター)シリュウ、専任官ベフタス様が間もなく来られます。(むか)える準備をお願いします。」




 ──────────





「悪ぃな、急に来ちまって。」


 この町の最高責任者、ベフタス様が屋敷の応接室に座っている。

 お供も連れず、たった1人、到着を知らせる先触れすら無しだ。近所の親戚(おじさん)が訪ねきたくらいのフットワークである。勘弁していただきたい。


 大慌てで合流した顧問やゴウズさんがセッティングをしたが、色々と大丈夫だろうか…。


 そして、何故、私も同席しているのだろうか…。



「火急の用なんだろ。用件を言え。」


 シリュウさんがムスッとした顔で冷たく言い放つ。ちょっと不機嫌っぽい。まあ、食事時間を邪魔されたら()も有りなん…。


 普段なら数日前に知らせが届いて、ナーヤ様かフーガノン様が訪ねて来られる過程(プロセス)が踏まれる。

 それら全てをすっ飛ばして行政トップが突然訪問とかただ事では無かろう。


 なんで、私まで席に座ってるんですかね…? (2回目)

 シリュウさんのパーティーメンバーだからかな…? いや、候補止まりのなんちゃって飯炊き女なんだけども…。


 ベフタス様は再度謝罪の言葉を口にし、真面目な顔になる。一気に雰囲気が引き締まった。



「──隣国キーバードとの国境より、知らせが届いた。

勇者の一団(・・・・・)』がこの国(コウジラフ)に入国、北東方向に進行中、とのことだ。」


「ってことは。」

「ああ。恐らく、この町に向かっている。そう考えていいだろう。

 入国目的は、昨今の呪い騒動の『鎮圧』と申告されている、が…。」

「狙いは『俺』か。」

「可能性は高い。」


 ん?? 「勇者(ゆうしゃ)」?

 この大陸の西に位置する、光属性至上主義の大国における「戦闘職」の名前のはずだ。ファンタジー物よろしく、「魔王」と敵対する存在。

 確か【光の教え】とやらを広める為に、「勇者の候補生」みたいなのが大陸を渡り歩いているとか何とか…?


 それが何故、特級とは言え(いち)冒険者たるシリュウさんを狙うの…??



「世話になった。」

「──すまん。」

「今日か、遅くとも明日には出立する。」

「「!?」」


 明日のメニューを決める様な軽さで、旅立ちを告げるシリュウさん。

 なんかクエストで数日離れるとかじゃなく、完全退去しそうな文脈(いいかた)なんですが!?


 何が起こるの!? 何をする気なの…!?




次回は30日予定です。

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