表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

272/406

272話 サーチアンドデストロイ、アンドデストロイ

「おやりなさい、ロザリー。」


 ポ──ワアーーーーーー!!!!



 真っ白な光を纏ったロザリーさんの口元から極太の白色光線が放たれ、左手側の草原に着弾。白い爆風を炸裂させる。

 白いは○いこうせん(ドラゴンブレス)はそのまま前方へと薙ぎ払われ、一筋の道を描きだす。



「──『砂塵竜巻(さじんたつまき)』。」


 右手側の草原では、地を這う大蛇の様な黄土色のトルネードが地面を抉っていた。ダリアさんが放つ、土・風属性混合魔法である。

 竜巻の後には、草のない剥き出しの地面が現れていた。


 太陽も高く昇り晴れ渡る寒空の下、小さな虫や植物の命を刈り取る破壊行為が行われている訳だが。

 これら2つの行為は、実のところ、攻撃を目的にしたものではない。


 本命(・・)が範囲外に漏れない為のガイドラインなのだ。



「──〈黒炎(こくえん)〉。」


 ゴオオオォォォォォォ!!



 日光を呑み込むかの如き真っ黒な炎が、ドロドロと粘りの有る泥水的な挙動で、辺り一帯の緑を舐め取っていく。


 シリュウさんの、本気も本気の超攻撃魔法である。


 どう見ても世紀末の光景だ。

 普通の草原に対して行う所業ではない。圧倒的オーバーキル・オブ・ザ・キル。


 一応、これは呪いに汚染されている植物の「浄化」作業なのだが…。うん…。



「見た目がまんま、魔王の攻撃っぽいのよなぁ…。

 口に出したら、シリュウさんの不機嫌が爆発しそうだし、言わぬが吉だけど…。」遠い目…


「!? (口に出してるけどぉ!?)」無言で背中にしがみつき…

「あらぁ~…。(聞こえてらっしゃないみたいで、良かったわぁ~…。)」内心冷や汗…



 牧場の住人・スライム達の避難が完了した後、呪いの汚染源の特定に移った私達だったのだが、痺れを切らしたシリュウさんが急遽(きゅうきょ)参戦。


 井戸・畑を黒炎で完全に抹消し、その流れで林の木々も焼ききり、呪いの痕跡が薄く続く草原を地獄に変えながら進撃中である。


 その姿、正しく「歩く災害」。


 高温の粘性火炎に触れた草花は跡形もなく消え去るが、その(ふち)では発火点に達した植物から次々と普通の(赤い)炎が生じて周囲へと広がっていく。

 その延焼をフーガノン様とダリアさんが食い止めることで、無関係の部分は守られていた。


 個人的には、ここまで徹底的に根絶やしにしなくても…と思わなくもないのだが。

 草花人間(ママ)さんの目の前で、植物を焼き殺しまくるの、どうなんだろう…。



「ママさん、大丈夫ですか?」

「ええぇ~、むしろ周りが暖かくなって快適ですぅ~。」

「ひぃ…。(快適じゃないよ…! 怖いくらい恐ろしい魔力だよぉ…。)」


 心配して質問するも、肯定的な言葉が返ってきた。朗らかな笑顔で笑ってらっしゃる…。逆に気を使わせたか…?

 背後のウルリは怯えっぱなしだし…。


 まあ、しばらくはこのまま行くしかないか。



 シリュウさんが黒炎を消し去り、前方の赤い炎を追いかける様に焦土の道を歩き出す。


 それを確認してから、ダリアさんの右側後方、無事な草原の上を、ママさんの車椅子を押しながら一歩一歩前へと進んでいく。




 ──────────




「──〈黒炎・火山弾(かざんだん)〉。」


 真っ黒なボールが山なりに飛んでいく。

 呪いの反応が強い茂みを感知したとママさんが警告の言葉を発した途端、シリュウさんが放った魔法である。


 そして、地面に触れる直前──



 ゴオオオオオオッ!!



 空中で大炸裂。

 地面から吹き出す間欠泉(かんけつせん)の如く、巨大な黒い火柱が噴出。そのまま崩れ落ちながら黒い津波となって周囲に広がり、一切合切を焼いていく。


 サポートの2人が慌ててフォローに動き出していた。


 私は、こちらまで飛んでくる強烈な熱風を防ぐ為に、鉄板防護壁を展開。ママさんとウルリを守る。



「シリュウさん…、無茶し過ぎ…。」

「…、いいえぇ…、そうでもないかもぉ~。」


 ママさんが鉄板の端まで車椅子を移動させ、大声を上げた。



「竜喰いさぁん~! 〈呪怨(のろい)〉の気配が消えてませぇん~! 炎の中で動いてますぅ!!」




 ──────────




「…。だろうな。」


 花美人の声を聞き、納得の嘆息を吐き出すシリュウ。


 闇属性の精霊魔法(・・・・・・・・)たる〈黒炎〉ですら、あの魔王クソを死に至らしめることができなかったのだから、その眷属の類であれば相応の耐性を持っていることも想定内ではあった。



「〈黒炎・火砕地帯(かさいちたい)〉。」


 黒炎に追加で魔力を送り込み燃え上がらせ続けながら、更なる追撃の為に魔力を練りあげる。


 両の拳の前に、限界まで圧縮し硬化させた〈黒炎〉の弾丸を生成。



 ──ジギイイイイ!!



 地獄の業火の中で、のたうちまわる様に「何か」が暴れはじめた。

 その何かは表面を(ただ)れさせつつも、脱皮するかの様に自身の中身を空中へと射出させ難を逃れる。


 それは、青みがかった黒茶色の大きな「ナメクジ」であった。体長が2メートル程はあり、触覚に加えて触手を脚の様に何本も生やし、黒い邪気を纏っている。


 化け物ナメクジは、身体構造を〈変貌(のろい)〉で変質させ、昆虫の羽状の物を背中に展開。飛行を開始──



 ドゴオ!!!! ボガアァ!!!!


 ──ジギイイイイ!?



 黒炎弾丸が直撃し、羽が()がれる。化け物は再び炎の海へと落下した。

 魔王の眷属たるナメクジは〈呪怨(のろい)〉の本能のままに事態へと対処。邪気を増強することで黒炎の魔力を乱し、自身の肉体構成を変化させ続けることで高速再生し、ダメージを少しでも抑えようと試みる。



 ドゴオ!!!! ドゴオ!!!! ゴオオオ!!!!



 が、次々と直撃する炎弾に肉体を(えぐ)り飛ばされ、抵抗もままならない。

 シリュウは、最凶威力の精霊魔法に速度と手数を加えることで、再生速度を上回っていた。その結果、化け物ナメクジはその場から脱出することも叶わず延々と(あぶ)られ続けることになる。



「…。1時間も焼けば、死ぬ(くたばる)だろ。」


次回は5月6日予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ