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271話 井戸の調査とスライムの救出

「これは、駄目ねぇ~…。とても弱いけど、完全に()み着いてるわぁ~…!」


 牧場内に在る井戸の(たもと)で、忌避感たっぷりの声色で声を出すママさん。

 その視線は斜め下、井戸の底の辺りを向いている。



「井戸内部に、呪具の類は在りませんか?」

「むぅ~…、少なくとも、〈呪怨(のろい)〉を新たに放出している気配はないですねぇ~…。そう…、呪いの『残滓(ざんし)』が、底に溜まった水に混ざっている…、そんな風に感じますぅ~…。」

「ふむ…、不活性状態に移行した呪具であれば、可能性は残りますか…。」


 フーガノン様は、(くだん)の魔王が、魔猪の森の呪具を持ち出させた可能性を疑っている様だ。

 他に何も無い辺鄙な場所だから隠すことは容易いとは思うが。悪事の為に呪具を手に入れた輩が選ぶ選択肢ではない様に思う。


 牧場の方々の状態を確認した後は、敷地内部の調査を行った。

 入り口でママさんが探索の魔法を放った──正確に言うと、付近の植物と同調することで自身の知覚を延長させる魔法らしい──結果、井戸と畑の辺りが〈呪怨(のろい)〉に汚染されていることが判明する。

 魔法の干渉を防ぐ処理が(ほどこ)された飼育施設内部を除くと、他に呪いの気配は無いみたい。物陰や住居空間に隠れ潜んでいるものは居ない模様。


 畑には井戸の水を撒いているそうなので、呪いの汚染源は井戸だろうと言うことになり、真っ先に様子を見にきた訳だ。


 まあ、見た目は木で出来た普通の井戸なのだが。

 簡易な屋根が有って滑車がぶら下がっているくらいで、おかしな物は見受けられない。

 魔力を感知できる人達も異変は感じられない様で、私の髪留めも反応はしていない。


 ふーむ…。井戸から突然現れるモンスター「い○まじん」とか、リ○グの「井戸女(さ○こ)」みたいな化け物とエンカウトする可能性も考えてたんだが…。杞憂だったか…?



「私が、井戸の内部に入って確認してきましょうか?」

「それは止めましょう。」

「テイラさん~? 無茶はしたら駄目ですよぉ~?」


 真面目な提案をしたのだが速攻で否定された。

 ダリアさんやウルリまで呆れ顔である。何故だ。


 底までの高さはちょっと不安だけど魔法のサポートはしてもらえるだろうし、閉所・暗所は問題ないし、いけなくはないと思うのだが…。



「いやぁ、私はそもそも呪い持ちですし、危機察知で事前対処もできますし、お役に立てるかと──」

「や。違う。」全力首振り!

「もしも、それで何か有ったら。シリュウが何するか分からねぇだろ…。」

「」こくこく!


 何か呪われる事態に陥っても、〈鉄血(てっけつ)〉で対抗できるみたいだしなんとかなると思うんだけどな。



「…。なら、謎水を出せるアクアを預けていけば──」

「止めな。

 それ以上戯言(ざれごと)抜かすなら、竜骨棍棒(これ)で頭カチ割るよ!」

「い゛っ!? イエス・マム! 待機してます!」直立不動!


 その後、冷静に話し合った末に、内部の確認はせず水脈ごとシリュウさんに焼き尽くしてもらうのが確実だろうと言う結論に落ち着いた。

 全体の調査が終わってからまとめて焼いてもらう為、現状は、私の鉄とダリアさんの岩で井戸を封じておく。これで(あやま)って水を()んでしまうことを防げるし、仮に井戸内部に化け物が居ても出てこれない。


 畑の野菜達も、魔法の岩で周囲を封鎖しておけばとりあえずの措置は完了である。




 ──────────




「うんうん。怖かったのねぇ~…。もう大丈夫よぉ~。」


 ぷるぷる… もじょもじょ…!


「不気味な呪いの物(怖いもの)を食べない様にするなんて、偉いわぁ~。」


 ぷるもじょ! ぷるもじょ!



 白い半透明の動く葛羊羮(くずようかん)みたいな塊達と語らう、鉄車椅子に乗った草花人間(アルラウネ)的な美女。


 微妙にナ○シカ感が有る光景だ…。


 周囲が金属で覆われていて、開けた天井から日光が降り注いでいるから、シチュエーション的にはどっちかと言うと漫画版の方っぽい…──まあ、些細な差か。うん。


 今居るのは、スライム施設の中。

 ウルリとママさんの3人で慎重にスライム飼育施設へと入り、危険がないことを確かめた後、スライム達の状態をママさんに確認してもらっている。


 施設の入り口を開け放った状態にして、ダリアさんとフーガノン様、召喚竜達には外から警戒してもらっている。放つ魔力が特に凄い方々だからね。スライム達への魔力変質を防ぐ意味はもうないかもだが、念のため。



「まあ、スライム達が呪いに汚染されてなくて本当に良かったけど…。

 ママさん、スライムの言葉、分かるんだね…。」

「言葉って言うか、ふわっとした意思みたいなのは有るらしいよ。スライムの魔力なんてすごく低いから、意思を感じるのは難しい、はずだけど。」

「…普通に会話してる、ね。」

「ん…。」肯定…


「ちゃんとしたご飯を食べれる様に、1度ここから出ましょうねぇ~。ご飯をくれる人達が、皆を待ってるわぁ~。」


 もじょもじょ!ぷるもじょ!



「あれかな…。植物の根は、菌と融合してて共生してる的な…?」

「(『きん』? 何のことだろ…?) ただの草と話ができるから、その応用なのかな…。多分。」



 ママさんの意思伝達が功を奏して、スライム達の運び出しは非常にスムーズに行えた。

 専用の輸送箱に自主的に入ってくれたスライム達を、即席で作った鉄リアカーに乗せ牧場の外へと運び、無事に天幕まで帰還。お役人の文官や牧場の皆さんに引き渡すことができた。


 結局、スライム達に鉄水を与える必要もなかったし、魔力的な影響は最小限にできたはず。牧場の再稼働ができることを祈るばかりである。

 ひとまず、ミッションクリアだ。



 さて。ここからはいよいよ本丸攻め。

 周辺に居ると思われる、魔王の眷属を探し出し排除しよう。シリュウさんの心の平穏を取り戻す為にも、完膚(かんぷ)なきまでに殲滅(せんめつ)である…!


 まあ、肝心の、本丸の場所が分からんのだが…。

 ママさんの知覚能力だけが頼りだな。



紅蕾(ママ)さん。とりあえず、お水どうぞ。」

「ありがとうぅ~! いただくわぁ~!」こくっ!こくっ! 残りを座面の土にバシャー!


次回は30日予定です。

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