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26話 新たなる旅路

 角兜さんが言った。


「あんた、特級冒険者になる気はあるか?」


 どうやら、呪いが頭に回ったのはこの人のようだ。おかしなことを言い始めた。



「? 頭、大丈夫ですか? 私の鉄がどっか刺さってます?」

「…。あんたは〈呪怨(のろい)〉の力を制御できてる。価値があると思うぞ。」


 あ、私の発言は無視ですか。そうですか。もっとボケてやる。


 …。


 …何も思いつかんな。



「私は見習いを卒業もできず、そもそもギルドを追放された身ですよ?」 

「特級はランクを上げてなるものでもない。ギルドにとって他に換えがたい価値があれば、それでいい。」


 ええぇ? 本気かこの人…。



「そもそも私は呪いの制御なんかできてませんよ。誓約(ゲッシュ)…、親友にかけてもらった誓約(せいやく)魔法で自分を抑えつけてるだけですし…。」


 ゲッシュなんてアニメで知った単語を使うくらい、適当な術式で縛ってるだけだからね。そもそもなんで北欧の言葉だろう単語をチョイスしたのか、3年前の私…。

 いや、親友(レイヤ)の奴が気に入ったからなんだけど。



「誓約魔法で〈呪怨(のろい)〉を…? 縛れるのか?」

「えっと私の左手首に術式を結んでもらってます。腕を呪いの鉄で吹っ飛ばしたから、もしかしたらダメになってるかもだけど…。」


 腕輪を重ねる位置に付けてるからワンチャン無事なはず。


 私の左手をじっと見る角兜さん。



「魔力見えます? 術式残ってます…?」

「ある、と思うが。分からんな。細かい感知は苦手でな。内容は?」 


「えっと、まんま、禁止の術式です。条件に当て()まらない限り〈呪怨(のろい)〉が使えない、ってやつで。

 条件は…1つが、私を傷つける・精神的に追い詰めてくる奴。

 もう1つが、死んでると私が判断した、存在の血であること。

 最後に、私と相手が双方納得して『許可』を出した場合です。」


「…。また複雑で、訳の分からん内容だな…。よっぽど正道から外れたいんだな。」


「お褒めに(あず)恐悦至極(きょうえつしごく)!」

「…。」…スバッ!


 無言の手刀が私のおでこに振り下ろされる。


 痛い! 呪いますよ!?

 腕使えないから防御もできないのに。



「呪いの条件に嵌まったらどうする気ですかぁ…。」 

「…。知るか…。」


 うっわ、凄くなげやり。



「呪いが暴走しない、なら、もうそれでいい。

 …はあ。こんなに疲れる会話は久しぶりだ…。」 

「お褒めに──」

「」スッ!


 手刀の構え。

 私は口を閉じる。


 学習はするよ、一応。

 自重はあんまりしないけど!



「…。特級には、〈呪怨(のろい)〉持ちの奴も居る。まあ、なんにせよ、自分の人生を良く考えるべきだ。」




 ──────────




 私の腕の薬湿布?が外れて、なんとか起き上がれるようになった頃。


 私はこの村を出ていくことにした。領主の部下が着任するからだ。


 ぶっちゃけ動くの大変だけど、まあ、仕方ないよね。領主の部下で魔法が使える人とか、ほぼ貴族だろうし、私みたいな呪い持ちが受け入れられるはず無いし。

 つーか私が嫌だ。確実になんかしちゃう。そうすれば村の人達に迷惑かけるし。



 とまあ、色々言い訳しつつ、ようやく旅の再開である。



 行き先は西! 大陸中央巨大台地!


 特に目的は無いが!

 なんか面白い風景、出てこいやぁ!



 今の私はほとんど動かない腕を胸の前で固定して、肩から鉄で出来たアームを生やして食事をしてる。


 スプーンを掴んで口に運ぶ程度なら鉄を変形させる力でなんとか支えられる。アレだ。バラエティーの2人羽織り的な?


 手を使わず背後からロボットアームが食事を運ぶ、みたいな感じ。苦肉の策で生み出した技だけど、思いの(ほか)良い感じである。


 あと2本生やして夢の6本腕生活を実現させるのも悪くないかも知れない。これで剣とか槍とか振り回す力があれば戦闘に活かせるんだけどな~。


 むしろ自律する鉄ゴーレムに戦闘を任して後方に引きこもりたい。

 〈呪怨(のろい)〉の力で潰した山賊辺りの魂を召喚して、ゴーレムに自我を持たす、とかできないかな~…。


 反乱待った無し、だな!



「お姉ちゃん、相変わらず変なこと考えてるよね?」

「…ん? 真面目にこの後のこと考えてたよ?」

「あの顔は絶対に違うよね…。ちゃんと食べなよ…。」

「食べてる食べてる。半分無意識で鉄腕を動かせるようになったし…。良い感じだよ。」もぐもぐ… もぐっ!


 スティちゃんの諦めた目が処置無し、とでも言いた気である。

 しっかし、こんな珍妙な食事風景を見て普通に会話できるなんて胆力あるね。大物になるよ。



 回復した私の腕は、骨と皮だけで筋肉がほとんど無い状態になっていた。

 骨髄すら鉄変換してたレベルだったのに、この状態にまで回復する効き目とか、あの薬湿布の値段を想像すると気絶しそうになる。


 まあ単に見た目がショックで、実際気は遠くなったが。



 そんな細い腕に腕輪を付けて、鉄アームで髪を縛って髪留めも付けて、鉄で足に靴を作れば準備完了である。


 腕は見えない感じに覆いつつ固定したし、新しくもらった服の上からアームもセットできてるし、必要なくなったからと返してくれた槍とかで鉄は補給できたし。


 まあ、なんとかなるっしょ!



「じゃあね、スティちゃん。お父さんと仲良くね? あと、セラティーさんによろしく伝えておいて。」


「…ばいばい。

 お姉ちゃんこそ仲良くね? バカしちゃダメだよ?」




 ──────────




「じゃ、行きましょうか。──角兜(つのかぶと)さん。いざ西へ!」


「…。確かに名乗ってなかったが…。その呼び方はどうなんだ…。」



 なんとかなるっしょ!(2回目) 


 なって!!(切実)


恐らく、これで序章的な一区切りです。


ここから、角兜さん(仮)との旅が…、多分、始まる…?


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