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255話 クソガキの所業と悪魔の暴力

いつにも増して主人公がアレです。




「お前ら、猫女(ねこおんな)の仲間だな!」


 スライム牧場に着いて数分。施設の人を待っていると、見知らぬ子どもが現れ、騒ぎ始めた。


 手には木の枝そのままな長い棒を持っており、こちらにずんずんと向かってくる。牧場の子だろうか。猫女(ウルリ)のことを知ってるみたいだったし。

 歳の頃は小学校高学年くらい? 赤みのある茶髪で、見た目通りヤンチャ盛りらしい。



「こんにちは。私達は──」

「女は引っ込んでろ!」


 ミハさんの優しげスマイルも無視して、偉そうな子どもはトニアルさんに棒の先を突きつける。



「お前! ここは勝手に近づいたらダメなんだぞ!」

「えっと、僕らは町から手伝いに──」

「なんだ、後ろの黒いの! 変な魔物まで連れてきて! せーばい、だ!」


 成敗(せいばい)、かな? 暴○ん坊将軍か、(おのれ)は。体格が良いだけで実はもっと下の年齢っぽい? 冒険者ごっこがしたいんだろうか。



「えい!」ブンっ!

「わっ!?ちょ!?」カンっ!


「!? なんだ!お前! なんだ!その盾!」


 トニアルさんが咄嗟に射出した石の浮遊盾が、振りかぶられた棒を受け止めた。(あらかじ)め生成しておいた石の板を足のホルスターに入れておいたやつだ。役に立った様で何よりである。



「なまいきだ! よこせ!」スカッ!

「えー…、(どうしようこの子…。)」盾を操作して避ける…

「逃げるな!」ブンッ!ブン!


 んー…、鉄で軽く拘束してやろうかな…。

 この手のバカガキは騒ぎたいだけの、体力もて余し系な気がするし…。相手するだけ無駄なのよな。



「…。おい、ガキ。止めろ。」

「うるさい! お前もガキだろ!」


 対応に悩んでいる間に、後方で様子を見てたシリュウさんが前に出てきた。

 しかし、男の子はどうやらシリュウさんを同年代くらいに見てるらしくむしろ勢いづく。



「ぼく? 私達はここにクエストで──」

「サシズすんな!」棒振り回し!

「止めろ!」盾で割り込み防御!

「…。ふん。」ガシッ


 ミハさんに向かいかけた攻撃が流れる様に防がれる。シリュウさんが石の盾で止まった棒を掴み、そして一瞬で灰(?)にした。固そうな棒が持ち手を残して、綺麗さっぱり消失している。



「あ…!! 俺の、『凄いソード』っ…!!(泣)」


 安直なネーミングだなぁ。お似合いだけども。

 まあ、武器も無くなったし、この辺りで終わりにさせよう。



「はいはい! その辺にしとこうね。」

「っ!!触んな!!くそ女!!」ぐにぃ!!



 取り押さえようと前に出たところ。


 クソガキの手が、私の胸を、押し掴みやがった。



 誓約(ゲッシュ)適合(クリア)鉄血(てっけつ)〉発動。

 鉄伸長(しんちょう)──


 ──強制中断。



 身体強化、フル・マキシマム!!

 鉄纏(てつまと)い!!

 最速即座の、渾身(こんしん)アッパーカット(ボディブロー)──!!!


 ボグゥ!!!!!

「──!?」



 腹を殴られたクソガキの体は、十数メートル吹き飛んだ。

 ボールが弾む様に地面にバウンドしながらゴロゴロと転がっていく。



 し~ん………




 スタスタスタスタ…



 私は痛む左胸と右手を無視しつつ、腰からポーションの入れ物を取り出し栓を抜いて開封しながら、つかつかとクソガキに近づく。


 ガキの手を刺そうと生成され、皮膚を貫いて伸びかけていた鎖骨(さこつ)下の鉄を、大部分は収納し残りを瘡蓋(かさぶた)代わりに止血。とりあえずこれでいい。



 ガキはダメージが深過ぎるのか、声も上げずに細かく痙攣(けいれん)していた。血も吐いたらしく、土汚れと相まって大変に気色悪い。


 陥没させる勢いで殴った鳩尾(みぞおち)目掛けて、回復薬をドボドボと降り掛け、残りをクソガキの口に無理やり突っ込む。

 これである程度は回復するはず。



「──げべっ!! ゲホッ!ガあッ! 

 お、お前!何、すん──!」


 ボグッ!!

「ゲェっ!!」



 意識が戻るやすぐさま悪態を吐いたガキ。

 その鳩尾に、サッカーボールを蹴り抜くが如く、右足を(えぐ)り込む。


 どうやら自分の状況を認識していないらしい。分かる様にしてやらないと。



 再びゴロゴロと転がっていくクソガキの体。

 身体強化で追随しながら、回転が止まったところで仰向けになる様に蹴り上げ、腹に足を乗せて上から押し潰す。



「──ごめんなさい、は?」

「な、ナに、いってん──」


 スッ

 ゴンッ!!

「!?!?」げばっ!?


 一瞬上げた足を、思いっきり押し戻し、金属の靴をめり込ませる。



「悪いことをしたら。『ごめんなさい』でしょ。」


 スッ──

 ゴンッ!!

「ぎゃっ!?」


 スッ──

 ゴンッ!!

「ぎっ!?」


 スッ──

 ゴンッ!!

「やべっ──止めて(やべべ)!?」


 スッ──

 ゴンッ!!

「!! や、め、ベ──!!」

「そうじゃ、ねぇだろ。」



 スッ──


「ごべっ!ごべんっ。」


「聞こえない。」

「ごべんっ!」


「はっきり喋れ。」

「ごべん、ばないっ。」


偉い偉い俺様(おとこ)、なんだろ。はっきり、声を、出せ。」

「ごべん、なばいっ!!」


 ボロボロと涙と鼻水を流してるクソガキの目を、上から覗きこむ。そこには恐怖と(おび)えの色だけが見てとれた。流石に心は折れただろう。


 私は、にっこり笑って。話しかける。



「次。あんたが、(ひと)をバカにする態度取ったら

──あんたの、股間の玉と棒(大事なもの)を、」


 ハサミを生成し、ゆっくりと、刃を閉じる仕草を見せつける。



「──()る。」バチン…


「」ガクガクガクッ!!


「精々、頑張れよ?」シャキン… シャキン…

「」ガクガクガクガク!!高速頷き!!


 (うなず)いてるのか震えているのか判断できない様子だが、まあいいか。これで、世界から男尊女卑野郎(あく)の芽を摘み取ることができた。



「ふぅ…。」


 小汚ないガキから顔を上げ目線を外し、息を吐いて気持ちをリセットする。



 さて、と。


 ──あれ? 私、何してる途中だったっけ?



 周りの状況を探ろうと後ろを振り返ると。


 離れた場所で私を見ている皆が、ドン引きしてるのが、わかった。



「あー………。」


「…………。」

「…………、」

「…………、」



 ふむ。まずは正確な報告。だな。



「皆さーん、悪は滅びましたー。」真顔で叫ぶ…



「…、やり過ぎよ、テイラちゃん…。」手で顔を覆う…

「…、(ダーちゃんより過激だったな…。)」若干の怯え…


「…。(呪いが発動した、よな…。だが、あのガキは呪われてる様子はねぇ…。良く抑えたな…、本当に凄いぞ…。)」所業からは目を逸らしつつ…



 はっはっはっはっ…!

 後悔はしてないけど、やっぱ、やり過ぎだろうなぁ!


 反省はしよう…。

 せめて、人の見てないところでやるべき──いや違うか…。



 その後、私は男の子から引き離された。

 ミハさん・トニアルさんが魔法で体を調べてくれたが、異常は見られず怪我はきちんと回復した模様だ。上級ポーション様々である…。

 まあ、あの子は、私のことを人喰い魔女の如く怖がってはいる様子だったが。当然だな。



 次回、「傷害罪で懲役7年、牢屋飯はもう嫌だ~最低女の脱獄計画の勧め~」をお送りします…。かな…。


鉄人力車内の冒険者(私は何も見ていなぁい! 見てないったら見てなぁい!!)ガクブルガクブル!



※作者注 次回の内容は、「牧場のお手伝い」です。多分。


27日予定です。

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