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252話 スライム粉の詳細と遠征準備

 ちまちま… ちまちま…


 圧縮… 圧縮… 均一… 均一…



 出来た鉄球を、じっと見る。

 じっと、じーっと、じぃ~~~っと、()る。


 あ、(ゆが)み、発見…。



「はぁ…、ダメか…。」




 甘味の重要素材「スライム粉」。その激レア謎素材の仕入れが滞り、私達が自作することはおろかお店での提供すら危うくなっている現状を打破するべく、動いている。


 他の材料だけでもそれなりの甘味が出来るっちゃあ出来るんだけど…、やはり今の形が1番。

 至福の未来を取り戻すべく、勢い(いさ)んで話を聞きに行ったものの、女主人(ママ)さんも原因について詳しいことは知らなかった。


 それを探るのは、ウルリを筆頭とした冒険者兼従業員の皆さんにきっちりお願いしておいて。

 私は、遠征準備を整えているところだ。



「やっぱりベアリングだよなぁ…。車体構造も、スプリングもまあ、問題点はもう無いし…。

 スペアを3つ4つ作れば、足りる…か…?? もっと要るだろうなぁ…。」


 まあ、遠征準備と言っても鉄製の人力車を改造しているだけなのだが。

 しかも、障害(かべ)にぶち当たっているのだが。



 聞いた話に()ると、スライム粉を生産しているのは「スライム牧場」的な施設らしい。


 テレビゲームなんかでイメージする、青い半透明のスライムがぽよぽよと()()ねてる──訳ではなく。

 灰色で濁った体を持つ、手のひら大の「粘菌魔物(スライム)」が、うぞうぞと地面を()っている所だそう。


 牧場と言うからには、そのスライム達を飼育している訳だが。その目的は本来、「食用」ではない。


 ぶっちゃけると「汚物処理用」。

 要するに、日本で言うところの、下水処理場で使われる「活性汚泥(かっせいおでい)(微生物)」なのだ。


 この辺りの地域の下水処理(トイレ)は、各家庭や建物の地下なんかに設置された「スライム(タンク)」が分解するのが一般的で、そのタンクに入れるスライムを出荷してるのが(くだん)の牧場と言う訳。


 とは言え、「スライム粉」は超絶に安心安全の食用素材だ。そこは既に了解している。

 野生のスライムとは違い、分解するべき物を学習させる為に厳格な基準の下、清潔な環境で飼育されたスライム達は障気(どく)などを保有することはないらしい。まあ、食べ物と認識しちゃえば、人の指を溶かすことはできちゃうみたいだが…。そこは脇に置いておこう。


 出荷前の(それ)らはお手洗い(トイレ)とは無縁の、飼育魔物である。

 そして、「スライム粉」は、そんな特別な彼らから牧場独自の処理をして精製されるそう。お店を卒業した(かた)がその牧場に勤めているそうで、その人が女主人さんの為にと試行錯誤して完成させた、他では作っていない超絶貴重品なのだ。


 つまり今回の事態は、飼育、精製あるいは流通過程に不具合(トラブル)が有ったと言うことだろう。


 それを解決すれば、これからも甘味が食べられる。ついでに(つて)も確立できて、直接(おろ)してもらえる可能性も有る。

 粉であれば、シリュウさんの魔法袋(マジックバッグ)にも保存可能だし、色々な活用法が考えられる。


 何としても解決せねば…!!



 その施設の場所は草原の南東、このマボアの町から鈍亀(どんがめちゃん)馬車で片道半日の距離にあるらしい。

 普通の馬が()く馬車ならもっと速いのだが、施設の周りは他に何もなく流通網が整備されていない為、馬を所有しているギルドや商人が利用しない。


 その牧場で何が有ったにせよ、移動手段の高速化は必須だ。物資・人員の早期輸送が甘味(世界)を救う鍵になるはず。

 今回、シリュウさんが全面協力を申し出てくれたので、人力車を使っての輸送を主軸に()えて計画を立てている。


 そこで、私にできる全力と言う訳で、魔改造(アップグレード)したのだが…。

 強化した車体に対して、車軸を支える「鉄球(ベアリング)」の強度不足が浮き彫りになってしまった。



「いっそのこと、人力車の形を元に戻すか…。いや、それなら新造した方が早い。でも、それだと私ともう1人くらいしか1度に運べないし…。やっぱりベアリングを強化して──」


「順調か?」

「あ、お帰りなさい、シリュウさん。絶不調(ぜっふちょう)です。」

「…。そうか。」


 改造人力車の試験運転後、ミハさん達の様子を見に行っていたシリュウさんが戻ってきた。


 今、ミハさん達(向こう)は大調理大会の様相を見せるほど大量の料理を作ってくれている。シリュウさんへの捧げ物+輸送遠征での保存食だ。

 何故か珍しく積極的に協力してくれてるアクアが、結構な量の水を生成する為に向こうに付いてくれている。ミハさん達は面食らっていることだろうが、ここは我慢していただこう。



 スライム牧場には厳格なルールが有り、高魔力の人間が中に入ることが禁止されているんだとか。シリュウさんは絶対にアウトだし、ウルリでもダメ。非魔種(わたし)は大丈夫だが、髪留めや腕輪(アーティファクト)が引っ掛かる恐れがある。


 なので、高魔力組は輸送能力で貢献してもらい、一般冒険者数人を送り込む形がベスト。

 そして、他人を輸送する手段としてシリュウさんが牽引する人力車が現状最高、それを私が完璧な状態にする…、はずなのだが…。



「もういっそのこと『魔鉄エンジン』を完成させて、『魔導車(じどうしゃ)』を作った方が早いかぁ…?? 詳細分かるまで数日はかかるみたいだし…。でも無理だよなぁ…。免許も持ってない私が運転とか──」ぶつぶつぶつ…


「…。テイラ。問題なのは、ベアリングとか言う鉄球の強さなんだよな?」

「はい。そうです。

 私の鉄操作能力が低いばかりに申し訳ない…。」しょんぼり…


 これが魔法だったら、もっと上手くできてたんだろうなぁ…。悲しい…。



「…。(どう考えても高いだろ…。まあ、今はいいか。)

 ──なあ。その鉄球を、『魔鉄(まてつ)』で作ったらどうだ?」


「………はい…??」頭がハテナでいっぱい…


 え? シリュウさん、何言ってるの…?


次回は18日予定です。

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