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23話 アーティファクト

 角野郎は今度こそ理解不能と言った顔で、振り返る。



「作った? これを? 自ら魔力を放ってるこの異常なアイテムを?」

「そうよ。…親友が、提供してくれた魔力の(こも)った血を。鉄に変えて素材にした。

 魔法刻印・魔法紋様の技術を応用しながら、非魔種の私にも使える、アーティファクトを作った。」


 驚愕した顔で私を見る角野郎。質問に答えても、どーせ信じないと思ったから話さなかったんだよ。


 お返しに、このまま情報過多(非常識)で殴ってやる。



「親友は4属性全てに適性があってね? 土の魔力を籠めた鉄から、固体操作で鉄を収納するマジックバッグを。火からは身体強化の腕輪。風からは危険を知らせてくれる髪留め。水からは…、清潔、にしてくれる浄化の下着。魔導具も使えない私が今まで独りで生きてこれた、命の糧。とても、とても大切な、ものなの。」


 角野郎は放心した様子で立ち尽くしてた。


 ふんだっ、ざまぁ見ろ! さらに畳みかけてやる!



「ちなみにここに居るアクアは、アーティファクトじゃあないからね! この子は親友と仲良くなった水の精霊様なのよ!

 水スライムみたいな姿してるけど、けっこう(くらい)の高い精霊で、私の鉄を食べる変わり者よ! 2人とも私が呪い持ちだって知った上で行動してるからね! 私なんかよりよっぽど非常識だよ。

 親友なんか私の呪いを見て『何それ面白い!』とか言って自分の魔法に応用しちゃうくらいなんだから!」ごほっげほっ!


 咳き込みながらもまくし立ててやった。


 頭を押さえて沈痛な顔つきになった角野郎。よっしゃ、私の勝ち!



「…って訳で、その装備品(たからもの)に触れたら全力で呪うからね?」

「…もう、触れたくもねぇよ…。」


 完全ノックアウト!!確認!


 やったよ、親友(レイヤ)、あんたのバカさ加減が角野郎に止めを差したよ!


 祝杯じゃあ! アクアの水で!



「ちょっと。床に置いたまま帰らないでよ。」

「だからもう触んねぇ、って…。」

「床に置いたのあんたでしょう? 責任を持って、こっちに置け。」

「…。」 


 うんざりした様子で、言われた通りに行動する角野郎。死にかけの呪い持ちを下に見んなよ? 呪うぞ?


 アクアの横に装備品を置いた角野郎に、こちらから声を掛ける。



「ねぇ。こっちからも質問していい?」

「…。」


「少しにするから。スティちゃんの声はしてたけど、村の人達全員無事? お父さんのハロルドさんとか。」

「村の奴ら全員居るらしいから大丈夫だろ。町から来た冒険者達が見回ってる。安心してろ。」

「…。まあ、いいか。わかった。ありがとう。

 あのムカデ女は…、どうなった?」

「…。むかで…?」

「えっと…。森の中で私と戦ってた化け物。スティちゃんやレイさんも見てたはずだけど…?」

「あんたと〈呪怨(のろい)合戦(がっせん)してた髪と肉の塊か。あれなら消滅させたが。」


「消滅…。そう。なら、安心。」


「体は消し飛ばしたが…、(呪い)があんたに乗り移っているかと思ってたんだがな。」


「んー、乗り移ってる可能性あるんじゃない?」


 スッと目を細める角兜。



「どう言う意味で言ってる? またふざけてるなら殴るぞ。」

「いや、さっきのも全部本気だけど…。

 いやまあ、私の現状よ。私、あの髪の化け物を呪い殺そうと全力出して腕をほとんど鉄に変換させた、のよ。あいつが滅ぶ前に気絶したし、血も大量に失ってた。体内魔力の少ない私が生きてるのは…、おかしいなって。なら、あいつが私の体に入り込んで何かしてんのかも?って。」


 非魔種でも体内に魔力は持ってる。この世界の食べ物を取り込んで、空気を吸ってる訳だからね。けどまあ、操作もできないし体に馴染んでる訳でも無いから、ただただ無意味だけど。



「俺がここに駆け付けた時。〈呪怨(のろい)〉の塊が蠢いてた。複数の呪いが混ざりあった危険な存在だ、全力で攻撃した。もちろん、あんたごと。

 それをそこの水精霊が俺の全力攻撃から、あんただけを守りやがった。精霊魔法でな。あの時は驚いた。俺の攻撃が防がれたことも、呪いの塊の中に人間が居たことも、まだ息があったことも…。」


 私はアクアを見上げる。そうか、アクアが助けてくれたのか。


 私が嬉しい気持ちでいっぱいになっているとアクアが顔出して、触手伸ばして──



 ──ペチッ!



「いたっ。痛い。ちょっ、何すんのアクア!?」


 私の顔をペチペチ叩いてきた。動けないから()けられないんですけど!?



「…。『簡単に死のうとしやがって、この馬鹿娘(ばかむすめ)。』みたいな考えらしいぞ。面白い?味?の金属を…(みつ)ぐ…?役目を放棄するな。って言ってるか?」


 え゛っ? 私、アクアの食事係みたいな存在だと認識されてたの…? まあ、間違って?は無いか? 無いかな? いや??



「ま、魔力で念話できるなら、止めさせて。お願いして、通訳…。」

「…知らん。バカなこと言ったからだろ。甘んじて受けてろ。」

「ううぅ…。」


 そのまましばらくペチペチされる私だった。


 きっと少し元気になったから、不満をぶつけてくれてるんだよね。信頼の鞭だよね。きっとそうだよね。


 そうだと言ってよ、パ○ラッシュ…。


テイラの左腕に付けてる腕輪は、鉄専用のアイテムボックスです。


これをダウンサイズした簡易版を両足に付けて靴と一体化させてます。簡易版の輪を三日月形に半分割して脛にセットした感じ。

むしろ靴を鉄で形成して、接続した格好です。


右の腕輪にも少量の鉄を収納する機能が付いてます。


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