215話 お叱りと詫びオムライス
「……………。阿呆が過ぎるな。」マジ声…
「ご、ごめんなさい…。」正座で頭下げ…
おバカ貴族問題を解決した2日後。
魔猪の森からシリュウさんが帰還した。
そして、即行でお叱りを受けている…。
町に着く前からシリュウさん達の帰還を察知していたらしいベスタス様サイドが、私に会うよりも先にシリュウさんに接触しているそうで、今回の暴力行為の全容が把握されている。
ベフタス様達は、私を勝手に連れ出したことなんかを謝罪したそうだ。
その場で、私が顧問さんに渡した報告書と同じ物を読んだらしいシリュウさんは、話し合いを決着させてから屋敷に戻ってきて私への聞き取りへと移行した訳だ。
「俺は、慎重に行動しろ、と言ったよな。」
「はい…。」
「それを聞いて。なんでベフタス達に呪い持ちであることを暴露した?」
「け、軽率な行動だった、と反省してます…。」
「反省は結構なことだが。俺は「理由」を聞いてるんだ。」
「えーっ、と…。もうバレてるだろうから…、説明した方が…話が早い…だろうな。と思いました…次第です…。」
「で? その結果? 貴族を1人呪い、別の貴族の腕をぶった切ることになった、と?
話が早くて、飛竜をも追い抜かしそうな勢いだな。おい?」
「いや、まあ、自分でも何故こうなったか分からず──」
「軽率な行動をしたからだろ。」ぴしゃり
「仰る通り…です…。」
「シリュウ? もう、その辺りにしてあげて?
テイラちゃん、まだ調子悪そうなんだから。」
お茶を持ってきてくれたミハさんが、助け船を出してくれた。
「ミハ。今回のテイラの行動は度が過ぎてる。ちゃんと言い聞かせないと駄目だ。」
「貴族の人達からの要望を断る訳にはいかなかったんだし、仕方ないでしょう?」
「テイラが拒否してればベフタスは手を引いたはずだ。」
「テイラちゃんは困ってる人を助けようとしたんだから、良いことをしたんでしょう? そこまで叱る必要もないじゃない。」
「権力者に良い様に使われただけだろう。隙を見せたら危険だろうが。
それにミハが口出しすることでもない。」
「私やイーサン顧問も止められなかったから。責任は有るわよ。」
お互いに1歩も譲らず意見をぶつけ合う2人。
険悪な空気ではないからケンカに発展はしないだろうけど、居たたまれない雰囲気だ…。
「ミハさん。擁護してくださるのは有り難いのですが、今回のことは私が率先してやっちゃった面が強いので…。全面的にシリュウさんが正しいです…。」
「…。(そこは認めるのかよ…。)」
「…、それでも。テイラちゃんがやったことは正しいことだったと思うわ。父さんの所に貴族からの感謝の言葉が届いたそうだし、事情を説明にきた方も晴れやかな顔をしてらしたもの。
それに今回懲らしめた貴族って、ダリアを「亜人」呼ばわりした人なんでしょう? 多少乱暴なことされても文句は言えないと思うわ。」
なんか、謎理屈な上に根拠弱くありません…?
しかし、シリュウさんはミハさんの言葉に感じいるものが有ったのか、深い息を吐きながらお叱りモードの雰囲気を霧散させた。
「…。分かった。テイラへの追及はもう止める…。」はぁー…
「そうした方が良いわ。
シリュウも疲れてるんだろうし、ゆっくり休んだら? 森の探索もしばらくしないんでしょう?」
「そうするか…。」はぁー…
──────────
私の暴力行為、ごめんなさい。&森の調査、お疲れ様です。って気持ちを込めて新作料理を作ろうと思う。
いつもの如く屋敷の庭にスペースを借りて、レッツクッキング!である。
今回チャレンジするのは、皆大好き「オムライス」!!
当然私も好きだし、きっとシリュウさんも気に入るはず! つーか、私が今食べたいと思った物をゴリ押しで作るのだ!!
何故ゴリ押しなのか、…って?
それはね!材料が存在しないからだよ!!
…。
脳内1人ノリツッコミとかバカ過ぎるなぁ…。
ちょっとおかしなテンションを落ち着かせる為にも、改めて材料の確認をしよう。
必要な物は、米、鶏肉、バター、ケチャップ、卵、各種調味料…、である。
この内問題なのが、米とケチャップ、そしてバターだ。
米が無ければチキン「ライス」が出来る訳ないし、「トマト」みたいなジューシーで酸味の効いた野菜が無いのにケチャップが作れる訳もない。
そして、今居る国は牛乳が流通していない地域なので乳脂肪が存在せず、「バターライス」にするのも難しい。
要するに無理ゲーなのである。
だが。それでも食べたいと思っていた私は、なんとか作れないものかと代わりの物を調べていた。
料理の大先輩である、リーヒャさんや専業主婦ミハさんの助言も有ったおかげで無理繰り料理が出来そうだと判断した。なんとかチャレンジしてみたいと思う。
まず米だが。これはアホほど作った遠征食である、砂麦の干し飯で代用していこうと思う。食感はだいぶ異なるけども、同じ穀物なのでまあ…いけるはず。
次にバターだが、これには「豆乳油脂」を使うつもりだ。
豆乳油脂は、豆乳にお酢とかの酸を混ぜることで作られる、濃厚なコクの有る脂肪分の塊だ。
前世でも乳アレルギーの人が食べれる代替えバターとして使われていたはずだし、そう遠くはないだろう。
最後は、代用品が全く思い浮かばないケチャップだが…。
これに関しては諦めることにした。
トマトに近い食材がそもそも無さそうだし、付け汁なんだから味付けが上手くいけば無くても美味しく頂けるはず。
代わりにかける物としてデミグラスソースとか考えたけど…、流石に一から作るとなると時間がかかり過ぎる。今回は、魔猪肉を焼いた時に出る肉汁をソースにしてみるつもりだ。
まあ、とりあえず作ってみよう!
鶏肉を1口大に切って炒めていく。そこに、出汁で戻した干し飯を入れ、豆乳油脂を絡めながら混ぜ合わせる。
豆の油分な訳だが、加熱していく内になかなかどうして美味しそうな香りを漂わせてきた。お腹が空く匂いである。
完成した「なんちゃってバターライス」を保温できる位置に置いておき、卵を焼く工程に移ろう。
シリュウさんに殺菌・消毒をしてもらっているから多少生でも問題ない。こちらにも豆乳油脂を混ぜ込み、半生ふわふわオムレツを作っていく。
バターライスの上に、とろりとした玉子焼きを乗せたら、魔猪肉の肉汁で作ってあったソースを掛けて…。
「良し。オムライスもどき、完成…!
シリュウさん、実食、お願いします。」スッ…
「ああ。」スプーンで取り分けてパクリ…
合間合間で一応、味見はしてある。そこまで変な味付けになってないはずだが、果たしてお口に合うかどうか…!
「」もぐもぐもぐ!もぐもぐもぐ!
よっしゃあ!良い笑顔、頂きました!
「気に入ったみたいで良かったです。じゃんじゃん追加していきますね。」
「」もぐもぐ!こくり!!
さあて、私も途中途中でつまみながら、いけるところまでいってみるかね~!
次回は18日予定です。




