200話 猫耳についての真面目な考察
ビバ、200話!
記念回にするかどうか悩みましたが、今回は本編を投稿します。
次回か次々回で過去話でもしましょうかねぇ?
「ふ…、んっ…。」もぞり…
「髪の毛から生えているのに、完全別物の手触り…。とても柔らかく細かい毛で覆われている…。」さらりさらり…
「うぅん…。ひゅぅ…!」びくり…
「毛の下にはちゃんと肉がある…。この弾力…、まさに耳たぶ…、いや、それ以上の柔らかさ…?」ふにふに…
「ちょっ…待──ふゅんっ!あっ!」ふるふる…
「ちゃんと神経が通っている、と。なるほど、なるほど。なるほど?」くにくに…くにくに…!
「…っ…、ひゃあっ!」びくびくり!
「──ねぇ。やり過ぎじゃない?」
私を諌めるサシュさんの声で、トリップしていた意識を現実に戻し手の動きを止める。
「」へなり…
その途端に、猫耳が生えてるウルリが顔を真っ赤にしてぷるぷる震えながら、テーブルに突っ伏した。
へにゃり、と2つの猫耳も垂れている。
垂れ耳、可愛い…!
もう1度触ろうと、手をわきわきと伸ば──
「表情、ヤバいよ?変態男みたい…。」
「うぐっ!?」
そうか…、スケベ親父と同じ反応してたか…。同性間でもセクハラにはなるもんね…。うん。流石に自重しよう…。
解体作業が終わり、シリュウさんとダリアさんが再び魔猪の森へと出発した数日後のこと。
今日は朝から「蜜の竹林」にお邪魔して、女主人さんの寝室でわーきゃーと騒いでいる。
寝てる人の横でうるさく喋ってるのアウトだと思うけれど、「私達が側で楽しくしてたら夢魔の栄養になるから!」と言うので、それならと謝罪ついでにとウルリを弄って遊んでいた。
太陽が昇ったくらいの頃、「ママが!ママが起きた!」と屋敷の壁を蹴破る勢いでウルリが突撃してきたのだ。
起きたばかりで寝間着の私は、やたらテンションが高い彼女に辟易しながらも部屋に戻って外行きの格好になり、出掛けるところだった顧問さんから「ご無理はなされん様にー!!」と言う声援を受けて門を出た。
そのまま半ば引きずられる形で早朝の町を全力ダッシュという苦行をさせられる羽目になった訳で。
ウルリを落ち着かせる為に「お店、後片付けとかしてんじゃないのー!?」とか声を掛けてはみたが、「誰も客は泊まってないから!それより早く!」と相手にされず、そのまま町の最南端までノンストップである。
で、店に着いたら女主人さんは再びすやすやと、いつもと何ら変わらずの状態で寝ていて。私が得たのは激しい疲労感だけであった。
まあ、ウルリも恩人が回復した嬉しさで行動した訳だし、共感はできるから普通に許すつもりだったのだが。
「ごめん…。何でもするから…。」と言われ、「ん?今、何でもするって言ったよね?」「う、うん。できることなら…。」「なら、猫耳出して。触る。」「!?」
と提案したお願いが受け入れられ、今に至る。
「ごめん、ごめん、ウルリ。あんたの反応が無駄に良くて、つい調子乗った。」
「や。別に、これくらい…。」まだぷるぷる…
「ウルリ姉。ちゃんと拒否しないと、この人またやるよ。」
他の人は昨夜からお店に居てもう寝た方とか冒険者として早くに出掛けた方ばかりらしく、仕込みをはじめる為に起きていたサシュさんが今この場で唯一のまともな人物である。
「え…。」ちらり…
「やりたい♪」にっこり♪
「うひぃ!?」びくぅ!
ペタンと垂れてた耳を、両手で頭を押さえる様に隠す猫耳女ウルリ。
その姿、まさにカ○スマガード!…ん?何か違うか…?まあ、いいか。
つーか、猫化を解けばいいのにね?
いや、解いたら解いたで、耳の位置が変化するらしいからまた確認したいけども。
「う~ん。良いではないか良いではないか、って言いたくなってきたな~。」わきわき…
「あなた、同性愛の趣味の人?」
「どうですかね~?
男そのものは、触れるなカスが。くらいにはどうでも良い存在なんで…、女の子に触れる方が好きな可能性は有る…のかなぁ?」首かしげ…
「自分のことでしょ…?
そこは否定してよ…。」
「ん~…、否定も何も、恋とか愛とかどうでもいいんで。そういう欲も無いですし…。
どっちかって言うと、むしろウルリに対する感情は、ペットとか小動物を可愛がる的なムーブメントに近い気がするかなぁ~?」首かしげ?
「夢魔族でも、ちゃんと生きてるんだし。動物扱いはどうかと思うよ。」
「まあ、そうですね…。その通りです…。
よし、この辺で切り替えよう。ウルリ!これで諸々チャラってことで。もう何もしないから、普通に戻っていいよ。」
「あ、うん…?(普通、って何…?(哲学))」
ウルリが復帰したことだし、帰ってもいいとは思うけど。側で色々リアクションしてれば女主人さんの為になるかもらしいし、このまま雑談トークを続けますか。
「ねぇ、なんでウルリ姉には雑な態度なのに、私には変に丁寧な言葉使うの?」
「え?ウルリは、ほら…、ウルリだし。サシュさんは、天才パティシエ様──あ、えっと、甘味作りの職人様ですから。」
「ウルリ姉は、上級冒険者で凄く強いし、色々魔法も使える。けど私は冒険者ですらないし、大して人気の無い食べ物しか作れないんだけど?」
「値段が高くて味わった人が少ないだけです。
それに、魔法がたくさん使えるのは素晴らしいですけど、それは使い方次第ですから。」
「…、ウルリ姉が、依頼で、あなたを闇討ちしようとしたこと。根に持ってるの?」
「いやいや。そう言う含みは無いですよ。単に、魔法が使える人、イコール貴い人。とは考えてないだけで。」
「…、変なの…。」
「ええ。まあ、変人ではあるでしょうね~。」
「それは否定してよ…。」
「否定しても現実は現実ですから…。
まあ、感性だけは一般人と大差ないとは思うんですけどね。」
「「…、(絶対、違う。)」」
2人から疑いの眼差しを受ける。
まあ、私が言ってるのは前世の一般人のことで、この世界の一般人とは当然異なるのだから仕方ない。
そう…!仕方ないのだ…!
「ま、まあ、ほら、サシュは私より年上の可能性もあるし。別に敬語でもいいんじゃない?」
「関係なくない?」
「え?歳が分からないんです?」
「うん。」
「それは大変ですね…。」
「ま。サシュも苦労してるから。」
「別に。親に捨てられるなんて普通でしょ。」
「普通じゃなくない?」
「ああ~、誕生年が不明なんですね…。」
「そう。だから、14歳かも知れないし、18歳とかってこともある。」
「なんと…。16歳より歳下の可能性…?」
「後輩として接してるけどさぁ。それは無いよね?」
「(無駄に大きな)胸のこと言ってるんなら、こんなの邪魔で切り落としたいって──」
「だから怖いこと言わないでよ!?」
「男の視線が鬱陶しいでしょうね…。」共感…
「…、ほんとに、それ…。」本気で憂鬱…
「ぶっ潰したい男が現れたら遠慮なく言ってください。私、潰しに行きますから。」
「まあ、別に…。ううん。その時はお願いする。」
「…、サシュとテイラってちょっと似てるよね…?」
「そうかな?」疑問…
「どこが?」意味不明…
「…、(変に暗くて、時々過激なところだよ…。)」しかし無言…
──────────
「!」バッ!
会話の途中、ウルリが猫耳をピーンと立ててベッドの方を向いた。
「ママが起きそう…!」
「ほんと!?」
「色んな話をした甲斐があった!」
「騒がしくて目を覚ましただけに感じるけども…。」
「……ぅ……。」ごそ…
「ママ?聞こえる?」
「ママ?おはよう。ママ?」
「ふぅ…ぅん──あらぁ…?おはよう、サシュゥ…。ウルリィ…。」ぼんやり…
「おはよう…!」涙目…
「さっきぶり!ママ!」
草花人間な女主人さんが、間の抜けた声と共に目を覚ました。
瞳はとても綺麗な青みが有る緑色。とろんと今にも二度寝しそうな目で、サシュさんとウルリに優しく微笑みかけて会話している。
ふむふむ。良きかな良きかな。
「ママ!この人が、ママに色々してくれた人!」腕を掴んで引き寄せる…
「そんな別に今、紹介しなくても…。」引っ張られ…
「あらぁ、」
「えと、はじめまして。テイラと言──」
「──おはよう、ございますぅ~…、女王様ぁ~。」
「はい??」
「え…?」
「ヘ!?」
私の顔を見るなり、変なことを宣うママさん。
女王様、って何?え?「夢魔の女王」のこと??
「あの?ママさん?」
「ふ…ぁ~……。」zzz…
「ママさん?ママさーん!?」
「」zzz…
「…、」
「も、もしかして…、テイラって、お忍びで変装した本物の夢魔の女王様だったり…!?」わなわな震え…
「その腐ってる耳、ぶち切ろうか…!?」鉄ハサミ形成…!!
「ひぃ!?止めて!?ごめん!?」
「…、(どう言う状況…?)」
誰が夢魔の女王じゃコラァ!?
ちょっとママさーん!?初対面の人間におかしなこと言わないでくれないかなぁ!
寝言は寝てから言ってください!!
…。寝てたわ…。
寝てるわ…。
お目付け役が居ないからアーティファクトを使える絶好のチャンスなのに、そのことを思い出さないポンコツ主人公。
次回は29日…あるいは30日予定です。




