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2話 藍色の髪の親子

 私が村に着いた日の夕方。木を切りに出ていた男達が帰ってきた。


 どうやらこの建物で皆集まってご飯を食べるらしい。


 村にあるにしては、えらく大きな食堂だと思ってたけど多分全員集まるからなんだろうな。男ばかりの単身赴任、ここの住居に母親や奥さんは居ないからご飯を作ってくれる人も居ない。


 この山賊顔さんが村中の晩ご飯を用意しているらしい。スティちゃんが手伝ってるとは言え、凄いな。



「お父さん!」


 スティちゃんが1人の男性に近づいていった。ふむ、あれがハロルドさん。セラティーさんに聞いた印象より()せて見え──



「また料理の手伝いなんかしてるのか! お前は部屋で大人しくしてろと言っているだろう!」


 びくりと震えるスティちゃん。


 怒った様子のハロルドさん。


 周りの男達はほとんど我関(われかん)せずの構え、いや諦めてる感じかな?



 山賊顔さんがスティちゃんを(かば)ってる。顔に似合わずまともだな…。

 ハロルドさんも山賊顔さん相手に強く出れないのか勢いは弱まったけど、主張は変わらない。


 どうすっかな…。




「お父さん、お客さん。」


 ここで話題転換とはやるな、この子。



「は? 客?」

「こんにちは! お姉さんから手紙を預かってきました! テイラと言います!」


 周りの目が全て私に向く。手紙を差し出しながら頭を下げて目を合わせないようにする。

 無言で手紙を受け取ったハロルドさんは開いて読み始めて──



「くだらん。またこれか。」


 手紙をビリッと破いた。



「ちょっ!?」

「お父さん!?」


 何書いてあったの!? 内容は知らないけど破るか普通!?


 町からここまで2日かかってんですけど!? いや、渡した後の手紙は私の物じゃないけどもさぁ…。

 この辺りでは紙が普及してるけど、ほいほい使えるほどは安く無いはずのに。



「伯母さんからの手紙でしょ! なんで破るの!」

「何度も同じことを言ってくるからだ。見る価値はない。」


 そこからまた口喧嘩である。どうすりゃいいの。




「いい加減にしろ! とっとと飯食べやがれ!!」


 山賊顔さんの一喝(いっかつ)!効果は抜群だ!



 スティちゃん親子も周りの男達もいそいそと木の器にご飯をよそって着席していく。スティちゃんはお父さんのことを睨み付けている。


 まあ、面倒そうだし元気はあるし、もういいかな?



「あ~…、じゃあ手紙も渡したし、私はこの辺りで…。」そろりそろり…


 私がそそくさと移動し始めると、山賊顔さんとスティちゃんがこちらを見て声をかけてきた。



「あんた、今から町まで帰れるのか? いくらなんでもきつくねぇか?」

「私、セラ伯母さんの話、聞きたい!」

「いやまあ野宿には慣れてるんで、村を出たところで適当に──」

「バカ言っちゃあいけねぇ。便利な魔法を使えるのかも知れんが、なんでもできる訳じゃあねぇだろ。

 泊まってけ。飯も食え。」

「いや私余所者ですし、お金も無いですし──」

「薪割りはしてる。対価は払ってる。とりあえず飯は食ってけ。」

「そうだよ! その方がいいよ、お姉ちゃん!」



 とまあ、あれやあれやと言う間にスティちゃんの隣でご飯を食べることになった私。

 周りの視線がちょっと辛いけど、ご飯はなかなか美味しいかも。蒸した豆を潰した主食に、塩の効いた山菜スープ? 出汁の文化あるのかな? 割りに旨味がある。レシピ聞こうかな?


 その後もまた交渉である。私はやることやったしもうここに用は無いんだけどなぁ。

 外で1人の方が気が楽なんだけど…。



「おい、ハロルド。こいつをお前の家で泊めてやれ。嬢ちゃんも(なつ)いてるし、ちょうど良いだろ。」

「なっ!? レイさん、何言ってるんですか!」


 山賊顔さん、お名前「レイ」ですか!? 勇者っぽいよ。

 その顔で意外性あり過ぎなんですけど。



「この食堂の隅で良いとこいつは言ってるが、何かあったら危ねぇだろ。ここは朝も早くから開けるしな。」

「いや、それじゃ私の家だって──」

「てめぇんとこには嬢ちゃんが居る。それに、色々魔法を使えるてめぇに手を出すバカも居ねぇだろ?」

「それとこれとは──」

「うるせぇ! てめぇがそんなんだからこうなったんだろうが! 自分のツケぐらい払いやがれ!」


 うん。私を無視して話が進んでいくね。スティちゃんはニッコニコで話かけてくるね。


 セラティーさんにはお世話になったし、この親子が心配なのは分かるから、まあ結果オーライか?


 どうかな?どうだろ?


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