183話 謝罪とお茶会
朝から通信が不安定だったので事前投稿ができてませんでした。
直前までアップロードしていなかった作者のミスです。
皆さんも、行動は余裕持ってやりましょう~。
「ウルリさん、助かりました。ありがとう。」ふぅー…
「あぁ~…、まあ、偶々…ね。通りがかっただけだし…。」
「冒険者の方なのかしら。危ないところを、ありがとうございます。」ぺこり…
「いや、うん、どうも…。」
猫耳のない猫耳女はウルリと言う名前らしい。
あの耳は飾りだったのか?どうでもいいが。
軟派男達が去っていった為、集まりかけていた野次馬達も離れていった。
そのまま建物の側でお礼を言う時間が始まる。
しかし、この女。どうにも挙動不審だ。
いや、理由は明白か。私が居るからだろう。
目を合わせない様にしながら少しずつ距離を取ろうとしている。
「本当にたまたまですかね?魔猫族さん?」
「うっ、あ…。」冷や汗…
「テイラちゃん?」
ふむ。挙動がさらに怪しくなった。
「私をもう1度闇討ちしようとか考えて隙を窺ってた。
なーんてこと。無い、です、よね?」
「う、ひぃ…。」冷や汗だらだら…
ほうほう。この反応は図星かな?
「今はシリュウさんも居ませんもんねー?私みたいな雑魚女、余裕で無力化できるでしょうしねー?
もしかして、今の2人もあなたが雇った仕込みで、助けた所を油断させて襲い──」
「──テイラちゃん。」
とても鋭い声色に反応して、目線をミハさんに向ける。
かなりキツい顔で私を見つめていた。
しばし、無言で見つめ返す。
「助けてくれた人に、その態度はどうかと思う。
何か因縁が有るのかも知れないけど、そんな言葉をかけるべきじゃないわ。」
「…。」
「母さん…?テイラさん…?」おろおろ…?
「いや、私が、その…──」
「助けてくれて、どうも。」しぶしぶ…
「うぇ!?
いや、うん…こちらこそ、どうも…。」
ミハさんの言い分ももっともではある。2人は猫耳女のことは知らないんだろうし、助けてくれたのは事実だし。
まあ、「男に襲われた女2人」を助けたことではなく。
「男として再起不能になってたバカ2人」と「暴行の罪で逮捕されてた私」、「迷惑がかかって処理に追われる顧問さん達」って可能性を止めてくれたことへの、礼だけど。
──────────
「つー訳で。(軟派共の息子が)危ないところを助けられた、って話。」
「お、おう…。」
現在は近くの食事処に入り、4人で情報を合わせている。
まあ、食事処と言うか、軽食と飲み物がメインのカフェみたいなお店だけど。こんな形態の所がこの町に在るんだねぇ。
買い物を続行する雰囲気じゃないし、特に欲しい物も無いから良いんたけど。
元々は塗料が目的だったが、現代日本じゃ無いんだから、その辺りの店に画材なんか置いてる訳無いんだよね。この町は魔物と戦う最前線なのだし、なおさら。
まあ、それでも存在はしてるんだし、本当に必要になった時は業者?卸問屋?に発注すれば大丈夫だろう。
「そっちのお姉ちゃんが、まさかトニアルのお母さんだとは…。(そうは)見えねぇ~…。」
「ふふ。どうも。」にこにこ
「まあ、これでも一応エルフだからね。若くは見えるよね。」飲み物ごくごく…
「トニアル?お客様に紹介する時は、ちゃんとしないとダメよ?」にこにこ…ゴゴゴ…!
「ご、ごめん!…なさい!」
「は、はは…。」
「…。」
トニアルさんがその身を犠牲にして場の雰囲気を明るく変えてくれた。恐らくは天然だろうけど。
「えっと、雨瑠璃って言います。えー…、魔猫族で冒険者。…一応上級で1人パーティーだけど、今は「赤の疾風」に所属して斥候職やってる…。そんな感じ…、です。」
それから猫耳女──ウルリ、は先日の私やシリュウさんに出会った時の話を自ら喋った。
ギルマスに頼まれて、特級冒険者に寄生してる怪しい女を見張る役割だったこと。いざと言う時に確実に攻撃できる様に、闇のローブまで発動させて隠密してたこと。シリュウさんにあっさりバレて半泣きになったこと。
私とギルマスの戦いを見て、自分が相当危うい仕事をさせられたと恐怖したこと…。等々。
「ツルピカに勝てそうだったのは、単に…(〈呪怨〉…)(小声でボソッ)を使った初見殺しが効いただけだと思うけど。」
「いや、普通に怖かった…。火魔猪よりも怖かったし…。
逆らっちゃダメだと、はっきり分かった…。から、もう闇討ちはしない、です…。」しょんぼりびくびく…
「テイラさんがギルドマスターと揉めたのは聞いたけど、ウルリさんまで参加してたんだ…。」驚き…
「ごめんなさい、テイラちゃん。この子を警戒するのも当然だったわ…。事情も知らずに偉そうなこと言っちゃって…。謝るわ…。」
「いえいえ。ミハさんの言い分は正当でしたし。
どんな出会いだったにせよ、偶々危ないところを見かけて助けてくれたことには感謝しないと。」
「えっと…。あの…、実は、今日もギルマスに頼まれて…。朝からトニアル達を、監視してた…。」
「え。」
「あら…。」
「ほ~~う?(怒)」ズズズ…!
「ご、ごめん!なさい!襲いかかるとか、そんなんは無し!本当に!
竜喰いさんが居なくなって、変な事をしないか見張ってこいって言われて…!」
ぶっちゃけつつも、椅子に座ったままテーブルに頭を付ける勢いで頭を下げる猫耳女。
「はあ…。まあ、助けてくれたのは事実みたいだし。ここの支払いは猫耳女がやってくれるのよね?」
「そ、それは、もちろん…。」
「なら。それでチャラにする。もう謝らなくていいよ。」
「お、おう…。助かる…。」
「んじゃ、この店で一番高いやつ──」
「!?」
「──いや、一番甘くて美味しいやつを3つ頼もうかな。
すみませ~ん、追加の注文お願いしま~す。」
「うぅ…(泣)」
猫耳女は奢る余裕が無いらしい。高い物と言っただけで泣きそうになっていた。
上級冒険者って儲からないのか?結構良い身分のはずなんだが。
まあ、遠慮はしないけど。
「ぼ、僕は必要ないかな…?」
「私は、自分で払うわ。」
「うぅ…、ありがとう…。」
「ん~…。橙の搾り汁とか売って無いかな…?」
「…!?(そんなん色々無理ぃ…(泣))」
次回は5日予定です。




