168話 お酒の献上と鴨肉のロースト
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100話以上有るのでその分増える訳ですが、それでも多く、戸惑っております…。
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作品評価の方も四つ星を貰っていますが、もっとこう…、真っ当に低い評価をしてほしい感じでは有ります…。高いと怖い(謎)
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「ほう…。確かにとても荒い…。だが、強めの刺激が喉を通るのは…上々…。」ごくりごくり…
「悪くないだろ?」
「うむ。」
帰ってきた顧問さんに早速蒸留酒を振る舞ったシリュウさん。
木のコップに注がれたアルコール度数が高いお酒を、水みたいに飲む顧問さんの姿にちょっぴり不安を覚える。
食事前にそんなパカパカ飲んで大丈夫かな…。まあ、喜んでくれてるみたいなので良しとしましょうかね…。
このお酒は顧問さんに対する感謝の気持ちを表したものでもある。なので、シリュウさんにも許可をもらって作り方を刻んだ極薄鉄板も一緒に渡してみた。蒸留の仕組みをイラスト付きで解説してあるから他人が見ても分かってもらえるはずだ。恐らく。
製造するかどうかは自由にしたらいいと思う。
顧問さんにも確認したのだが。物理的な蒸留でアルコールを濃縮するやり方は、どうやらこの世界に存在しないらしい。超酒好き種族である土エルフが知らないなら、よほど一般的で無い様だ。
魔法で似たことが可能だから、誰も発見・発明しなかった…。ってことなのかなぁ??
この世界でもお酒は、綺麗な飲み水が手に入らない場所で衛生面で安全に水分補給が可能な物、って要素が有る。そんな理由で、水分を減らしてアルコール成分を高める蒸留は本末転倒だったのかも知れない。
“「必要」は発明の父”ってね。
…ん?発明の母だっけ??いや?それは「失敗」の方だったか…??
まあ、どっちでもいいか。そんなことよりも…。
「あ、すみません。私から1つ確認したいことが──」
私は、ギルドマスターを害しかけた私への処遇がどうなるのか不安である旨を伝えた。
顧問さん達に迷惑がかかっていないか、これからどうすればいいか、なんなら町を出ていった方が良いのか等々…。
「なるほど…。
テイラ殿。もし行動を起こされるのなら、せめて1日待ってくださりませんかな?
明日には貴女に関する調査の報告ができると思いますので、それを聞いてから判断していただければ。と思っております。」
「そうですか…。はい。大人しくここで過ごさせてもらいます。ご迷惑をかけていますが、よろしくお願いします。」
「いざとなったら、シリュウと好きに動いてくれて構いませんので、どうぞ気楽に。」ははは!
顧問さんはなんでもない顔でそう言うと、再び蒸留酒の試飲を再開した。
シリュウさんが精霊の水で割った物を解説しながら差し出す。
「どうだ?」
「これもまた…。」ほふぅ…
「何年もの風味の薄い安酒から作ったとは思えないよな。」
「うむ…。
水の清廉さが…酒精の尖り具合を円く包んでおる…。精霊様のお力の賜物じゃな…。只の魔法の生成水ではこうはいかん。こちらで作るすれば、山の湧き水に酒の味を合わせる方向──」
ぽよん ふりふり!
アクアさんが、ログインしました。
私の腰から飛び出して触手をゆらゆらと振り回している。
「アクア?」
「なんと!精霊様ですかな!?」
「突然なんだ?水精霊?」
ゆーらゆら~ ふりふり…
「…。我が従者が作った酒と自分の生成水を褒めたから、顔を見せてやる…、ってよ。」
「おおお…!これは有り難いこと…!
イーサンと申します。しがない土エルフです。」
ぽにゅ…
アクアが触腕の1つを顧問さんの目の前に突き出した。
「握手してやる、…だそうだ。」
「感激の至り!」
顧問さんが万感の想いを込めた様な力強い握手を交わしている。
相手の見た目、スライムなんですけどね?
結構な地位に居るはずのエルフとは思えない平身低頭である…。
「…!(凄まじい魔力じゃあ…!儂ごときでは押し負ける…!!)」
「その辺りにしとけ、イーサン…。」
その後食事の時間になるまで、顧問さんはシリュウさんを介してアクアに感謝の気持ちを伝え続けるのだった。
なんか、アクアの本体さんは土エルフに水を提供してる存在っぽい?その水が酒作りに役立ってるみたい?
そんな理由で特級案件の精霊様になってんのかな??
──────────
「今日の主菜は、鴨肉の焼き物よ。召し上がれ~。」
脂ののった、めちゃ美味な鳥肉料理が晩ご飯に出てきた。ローストされた鴨肉に微かに香辛料が降りかけれられているらしく、とても食欲をそそられる。主食は今日はパンではあるが、脂と相性が抜群だ。何個でもいけそう。
右手の鉄箸で鴨肉を頬張り、左手で掴んだふわふわパンを噛れば、口の中で甘みと旨みが合わさってとても幸せ。いやぁ、蒸留酒作り終えた後の料理は格別だ。
もう夜だと言うのに、この後顧問さんはギルドに戻るらしい。重要な業務が予定されていて、秘書さんやお孫さんは施設に詰めっぱなしなんだとか。
私のせいで発生した面倒事の処理関係かな…。蒸留酒の話で貴重な休息時間を潰してしまったか…。
「すみません…、お忙しい時にあんな変な物を出してしまって。」
「なんのなんの!おかげで活力がみなぎりましたわ!感謝しますぞ!」ははは!!
とても上機嫌で笑う顧問さん。まあ、心の底から嬉しそうだから大丈夫かな?
「すまんが、ダリアよ。この後、時間をくれぬか?」
「あん?なんだい?」
「力を借りたくてな。付いてきてくれ。」
「…、ギルドカードは?」
「お主が条件を呑めば直ぐにでも。」
「そうかい。」
「頑固じゃな…。」
「当たり前だよ。」
顧問さんとダリアさんが短い単語で言葉を交わす。私にはちんぷんかんぷんだが、2人の間では会話が成立している様子だ。
「まあ、いい。付いてってやるよ。」
「助かる。」
「代わりに早くしな。」
「ここではこれ以上は無理じゃな。」
「…、」ふーん…
「母さん?勝手に大陸中央に戻ったら今度こそ親子の縁を切るわよ?」ごごご…!
話を流れを察したらしいミハさんが、なにやら恐ろしい釘の刺し方でダリアさんを諌めている。
「お、おい、そんなこと考えてな──」
「──嘘つくの?」ごごご…!!
「あ、う…。」
食事もほどほどに、ダリアさんは顧問さんを急かして外出していったのだった。
シリュウさんやミハさんに聞いてみると、ダリアさんは自身のギルドカードの処遇で揉めていたらしい。
呪具の棍棒を扱うことが「超級」ランクの認定に重要だったのだが、あれは完全に焼失したから本人は資格を失ったと思っている。だが、ランクの降格を決めるにはこの町のギルドでは無理なんだとか。さらに超級の身分証も材質や魔法刻印の関係でここでは発行できず、ならばと出した顧問さん達の妥協案をダリアさんが突っぱねているそうだ。
だから屋敷に籠りっぱなしだったのか。
「超級ともなれば、ギルドにとっても大戦力だからな。中央の連中が、また妙な呪具を与える実験をやりかねん。」
「私も母さんの人生全てに口出しするつもりは無いのだけど…。あんな虚ろな目を娘に向けてくるなんて、二度とごめんだわ。」
ふむ。あの呪具の棍棒を持ってる間、過去の想いに囚われて肉親への認識がバグってたんだったかな。ミハさんからすれば辛い話だったのだろう。
まあ、ダリアさんにはなんだかんだお世話になってるし、周りと衝突することが無い様に力にはなってあげたいところではある。
「私の鉄で武器とか人形とかもっと作ってあげるべきですかね…?」
「竜骨の棍棒を相当気に入ってるし、十分だと思うが?」
「…、人形って何?」
「シリュウさんの姿を模した鉄人形を作ったことがありまして──」
「え!?そんなの有るの!?見たいわ!!」きらきら!
「…。(ダリアは絶対見せないだろうから、揉めるなこれは…。)」
おっと…。これって不味い展開?
次回は18日予定です。




