151話 難題と食客
(初代ポ○モンを思い出す話数ですね。)
「…、(難題じゃな…。)」頭抱え…
「…、(これは…仕事なんでしょうか…?)」揺らぐ信念…
「(おじさんには、似合いの人だな~…。)」思考放棄…
「…、(こいつらの立場じゃなくてマシ…、と思うしかないね…。)」
「…。何なんだろうな、本当…。」
氏族エルフにあるまじき暴挙に、皆が頭を抱えている。
いやぁ、うちの親友が申し訳ない…。私もちょっぴり共犯者だけども…。
とりあえずお茶でも飲んで、お茶を濁そう。私しか飲んでる人居ないけどね…。
はあ…、落ち着く…。
──────────
「気分を変えて。私の〈呪怨〉についての詳細でも話しましょうか?誓約の具体的内容とか──」
「テイラ。それは止めとけ。」
シリュウさんが真面目な顔で、忠告してきた。
「へ…?なんでですか…?」
「…。話す方が色々面倒だから、だ。」
「…そうなる…んです?」
秘密を保持する誓約を結んでくれてる訳だし、大丈夫なのでは?
「誓約は万能じゃないからな。
…。仮に。
“テイラと手を握って魔力を籠めれば、アーティファクトが出来る。”って縛りだったとして。それを聞いたこいつらが、どういう行動に出ると思う?」
「…アーティファクト欲しさに、私の手を握ろうとする…?」
「その通りだ。」
「いや、でもそれは──」
「しないかも知れない。──だが。するかも知れない。」
「…。」
顧問さんも秘書さんも反論をせず、真面目な顔になって話を聴いている。
お孫さんは…思考を止めたのかやんわり笑っている…。
「未知であることは、人を慎重にさせる。互いにな。
テイラが〈呪怨〉持ちであることは伝えても、どんな風に発動するか・限界量はどのくらいか、って具体的な情報は伏せておけ。魔法の適性と同じ理屈だ。
そうすりゃ、適度な距離で付き合える。
その後で細かい部分をどの相手に、どこまで話すか決めればいい。」
火の魔法が使えると分かっても、ファイアーボールを何発撃てるのか・身体強化の程度はどのくらいかが分からないと具体的な対策が立てられない様に。
血を鉄の変える能力とは伝えても、必要量とか運用方法とかが分からないと、どう仕様もない訳か。
つまり、
「お前の血を見せろ!」斬りつけ!とか
「僕の血でアイテム作ってよ!」病み病み血液ダラダラ…とかを躊躇させられるかも知れない、と…。
「はい…!」
シリュウさん、有り難い言葉どうもです!
「(おい。アタシは知ってる訳だけど疑わなくて大丈夫なのかい?)」
「当たり前だろ。そんなことをすれば、武器と人形が鉄屑になるんだぞ?する訳がない。」
「念話で返せよ!?」
「…、(人形?)」はて?…
ふむ?ダリアさんとシリュウさんが何かじゃれている。
まあ、別に問題無さそう。
「そうだ…。トニアル。お前はテイラと極力関わるな。」
「え?でも、誓約的に話できるのに──」
「テイラは。男が…苦手なんだ。特に夢魔は駄目みたいでな。お前は両方に引っかかる。何の拍子で呪いが飛ぶか分からん。」
「…!?」
あ。そうだ。ダリアさんの娘さんは、夢魔と結婚して子どもが生まれたって言ってたな。ってことはお孫さんは、夢魔とエルフのハーフになるのか。
…道理で、笑顔に裏があると感じる訳だね…!クソチャラ男っぽい匂いがするんだ…!!納得納得!
「アタシの孫に手を出さないでおくれよ…。」
「もちろんですよぉ。──向こうから何もして来ない限りは。」
「…ひぃ!?」ゾクゾクゾクッ…!
「…。だから、外れろと言ったんだ…。」
「…、(すまんな。孫よ…。)」
「…、(顧問が特級のお相手をするのだから…、呪い持ちの相手は必然、私か………。)」
──────────
とりあえず。大体の言うべきことは済んだので、話し合いは終了する運びになった。
最後にもう一度シリュウさん達3人が誓約を確認し合う。
すると再び炎が、秘書さんとお孫さんの首と頭を縛る輪の様に噴き出した。シリュウさんの右手首にも炎の輪っかが2つ巻き付いている。
違反した場合に体を焼くペナルティの象徴であると同時に、他人に魔法などで頭の中を覗かれない様に守る防壁の意味合いもあるらしい。
そんなことを聞いてる間に、目に見える炎は消えた。
「これで誓約は完全起動した。ここからは公正な付き合いで頼む。」
「…、承知しました。」
「もちろんだよ。」
「トニアル…。もう少し、立場を考えた物言いをなさい。」
「おじさん──シリュウ、さん。ならこれくらいじゃないと──」
「個人的付き合いならともかく。公式な場ではきちんとするのです。
せめて、口調だけは、テイラ殿がシリュウ殿にしていらっしゃるくらいになさい。」
なんか「口調だけ」の部分を強調してません?
他の部分は見習ったら…、──まあダメだわな。
「おじさんはその辺り寛容だから…。」
「だからこそ、特級冒険者で慣れておくのです。」
「…、承知、しました。」
──────────
「──2人を、儂の食客として迎えいれたい。どうじゃろう?」
考え込んでいた顧問さんが、遂に決定を下した。
秘書さんとお孫さんは粛々と受け入れるつもりなのか、黙りだ。
「こちらとしては助かるが。良いのか?それで。」
「ああ。落とし所として問題ないかの?」
「そうだな。俺は異論ない。」
「あの。食客って、衣食住の面倒を見てもらう代わりに用心棒──個人的に雇われて依頼とか護衛とかをこなす人材、ってことですよね?」
「ええ。
不都合ですかな?」
「あ、いや。意図の確認と…。呪い女をそんな感じに引き入れて大丈夫なのか、な…??と…。」
「確かに。〈呪怨〉の所持者に対する懸念は有ります。
ですが、氏族エルフや精霊様と繋がりがある方ですし、真っ当な交流も可能と思っております。」
「…。」ふむふむ…
そうかなぁ…?信用するには弱い材料だと思うのだが…。
「それに。シリュウも居ますからの。なんとかしてくれると信じとります。」
「やりたい様にやるが、な。」
「それで良い、それで良い。」ははは!
「とかなんとか言って。どうせアーティファクトを近くで見たいだけだろ、ヒゲジジイ。」
「もちろんそれもあるのぉ!!」
な、なるほど…。珍しいアイテムを手元で眺めたいって欲求が、割合大きいのね…。
下心有りきなら、ある意味信用できる…かな?
「まあ、そういうことなら…。」
「では。お2人を儂の家に案内しましょう。
マボアの地に赴任する際に貰い受けた別宅ではありますが、十分な設備を整えています。ご心配なく。」
「ああ。」
「…よろしくお願いします。」ぺこり…
実験の被験者とか冒険者としてではなく、言うなれば町の有力者の家に居候する感じか。
居候かぁ…。どうなるかな…。
普通に見習い冒険者で再出発させるつもりだったのに、どうしてこうなった?
食客って何だろう??この後どうしよう?
次回は28日予定です。




