150話 確認作業と世界樹の葉
150話到達で、遂にブックマーク数が100を超えました。
ユニークPVも1万件を超えております。
間違えて踏んだ方、あらすじでブラウザバックした方、始めの数話で肌に合わずに移動した方が9割と仮定しても、
1000人近い人達がこの作品を見ていてくれているらしい。有り難いことです。
その期待に応えられているとは思えませんが、今日もゆるゆる更新します。
「風の世界樹はどんな──」
「結界?で直接見たことはないです。聞いた話では緑色の水晶みたいな──」
「非魔種とのことですがどう判定を──」
「父母に疑われて──。最終的な判断は、エルド島に来る、大陸の冒険者?ギルドの人?の魔導具で──」
「島での生活は──」
「すみません。言いたくありません。」
「…、いえ、大丈夫です。」
「一応、普通の風土・地理的なことなら──」
「冒険者とはどんな──」
「ラゴネーク国のトスラで見習いランクを2年くらい──」
私のこれまでのあらましを話した後。
秘書さんから質問され、私は1つ1つ補足していく。
私が嘘をついていないかの確認プラス、経歴を残す為らしい。書いた物にも誓約は働くから持ち出したり、他人に見せたりは無理だけどそれでも書くとは仕事人だな。
結構な情報量なのに良く順序立てて覚えてられるね。脳の働きに魔力を回すタイプだろうか?
羨ましい…。
合間合間で、お孫さんが淹れてくれたお茶を飲みながら、ほっと一息つく。
このお茶、うま~…。
紅茶みたいな液体なのに味は緑茶っぽい不思議飲み物だけど、香りも良く飲みやすい。
いかにも薬湯って苦味も無く、美味しい。
「──ああ、左腕と両足を焼失させて──」
「え!?ダーちゃん、そんな怪我を!?」
「人前ではその呼び方すんじゃないよ!」
「ダリア。年寄りが嫌って言ったのはお前なんだろ。」
「でもねぇ──」やいのやいの…
隣の4人は、雰囲気だけは親戚の集まりみたいな軽さだが、内容がアレ過ぎてギャップが酷い。顧問さんは話に参加せず、私の方にも耳を傾けてはいるみたいだけど。
「──んで呪具を消し飛ばして──」
「闇の魔法──?」
「──テイラが…、とんでもない物を持ってて…それを使って回復──」
「ああ、アーティファクト──」
「──まあ、そんな?もんかも?な??」
はて?世界樹の葉を持ってることは言わない方向なのかな?
レイヤが管理者?だってことは言ってるし、同じことだと思うんだけども。
「──領の山中で、フュオーガジョンの複合呪いと遭遇したとのことですが、どんな戦いを──」
「手も足も出なくて無駄に──」
「テイラ。あの呪い女はテイラが相当削ったんだろうが。嘘をつくな。」
「止めも差せずに死にかけたんですし、貢献度なんて無いですよ。」
「それでも──」
「ですけど…──」
シリュウさんも横から訂正を入れてきてくれるので、話がどんどん長くなっていく。
──────────
「……その…、アーティファクトを直接見せていただけませんかな…??」うずうず…
話が一通り終わった後、顧問さんが更なる確認を求めてきた。
「おい、イーサン。触れたら呪いが飛んでくると言ったろう。」
「それでも、見たいじゃろう?」
「収集馬鹿のヒゲジジイ。死ぬ気かい?」
「収集できずとも。だからこそ、手に取って感じてみたいのじゃよ…。
無理にとは言いませぬ。できれば、でよろしいのですが…。」うずうず…
確認って言うよりは、単なる興味っぽい?〈呪怨〉への警戒はどちらに消えたんです?
「あの、私に対しては敬語無しでもっと雑な口調で大丈夫ですよ?顧問さんはエルフの方なんですし、こちらは若輩者の危険人間ですし…。」
「ははは。シリュウが連れてきた客人ですからのぉ。今のところは勘弁してくだされ。」
う~ん…、ここらである程度歩み寄った方がプラスだろうなぁ…。いかにもな土エルフさんだし、純粋にアイテム好きっぽいし…。この場で変なことはしないかな…?
「そうですね…。これ、1つなら──」
私は、右足の脛辺りに付けている半輪を取り外して、机の上に置く。
「これも土属性のアーティファクトです。腕輪と同じく、私の鉄を出し入れするマジックバッグの機能しか有りませんけど。」
「よ、よろしいのかな…?」
「ええ。顧問さんなら、手に持ってもらっても良いですよ。」
顧問さんが、宝物を見つけた子どもの様な表情(もじゃもじゃヒゲのおじいちゃん顔だけど)で半輪を手に取る。
「基礎は魔力を弾く黒鉄──
表面に走る橙色の紋様が──刻印と組み合わせて「固体操作」──
「収納」を──この紋様そのものが「魔鉄」とやらで構成されとるのか…!!
この薄さ大きさでなんという規模の魔法を発動維持し──」早口ぶつぶつ…
「顧問さんに見せたら不味かったですかね…??」
「しばらくしたら満足するはずだよ…。放っておきな…。」
──────────
「激流蛇様の分霊はどちらに居られるのかな?」
「…。テイラの鉄で出来た入れ物の中だ。魔力を弾いて遮断する金属の、な。」
「なるほどのぉ…。姿を見ることは叶いますかな?」
「私には言葉が分からないので何とも…。」
「…。出てくる気はねぇ、と。
代わりに、これを見せよう。」
シリュウさんが黒袋から寸胴鍋を取り出してテーブルに置いた。そのまま蓋を開ける。
「ん…?スープか??」
「美味しそうだね。」
「ああ。数日前に作った物だ。」
「…!お主の「蒸発」・「乾燥」に耐え──そうか!分霊様の生成水か!!
──、精霊の水を料理に!?!?」
「凄いだろ。」
「そう、…じゃな…。」遠い目…
「…、(こいつも大概だよな…。)」
「…、(これも仕事これも仕事これも仕事──)」
──────────
「そなたの親友殿が風の世界樹の管理者である証明が…、できれば欲しいのじゃが。何か有りませぬかのぉ?
管理者の証が、どんな姿だったとか。」
「有るには有るんですが…。
──シリュウさん、見せても大丈夫ですかね?」
「…。大丈夫じゃない…。
が…、誓約が効く今、見せた方が早いだろうな…。」
「んじゃ。出しますね。」
「何を、ですかな?」
「…。ダリアを回復させたものだ。」
頭から髪留めを取り外し、呪文を唱える。
「『ゴニョゴニョ』ごにょごにょ──アーティファクト解放!!」
開いた部分に指を入れ、結晶塊を机の上に置く。いつも通りの丸みのある三角形な薄い結晶塊の姿で、黄緑色にほわっと光っていた。
「こ、これは??」
「世界樹の葉、です。元々は親友の持ち物ですけど。」
「なん…と…。」
「今回は光も魔力も溢れ出ないね…。」
「ダリアさんを回復させた時は、なんか親友の意思?か何かが髪留めから伝わった?みたいで。普段はこんなもんですよ。」
「…、(訳分かんないね…。)」
「単なる風の魔石にしか見えませんね…?」
「じゃが…。内の内、深い深い中心に…、途方もない力を秘めておる…。
ダリアの、肉体を再構成できる訳じゃな…。」
「魔力回路の方は回復できなかったみたいで、申し訳ないです…。」
「それは言いっこ無しだろ。この武器貰ってチャラだよ。」
「う、うむ。ダリアよ、その武器も後で──」
「ここにあるのが半分だけじゃなかったら完全回復できたかもなんですがね…。」
「「「半分!?!?」」」
「「??」」
「あれ?シリュウさんにも言ってませんでしたっけ?」
「聞いてねぇ!」
「どういうことだい!?」
「えーと…、親友の奴がですね?
「これはテイラと生きていくと決めた時に世界樹から渡された物!ならテイラにも半分資格があるから半分こにするの!!」って言って叩き割ったんですよ。」
「「叩き割った!?!?」」
「…。管理者が、自分の証を手離してるのはおかしい、と思ってたが…。
それ以上に狂ってるじゃねぇか…!」
「…、待ってくれ!?世界樹から生まれた極大のアーティファクトじゃぞ!?どうやったら砕けるんじゃ!?」
「レイヤの奴が、──呪いの鉄を、ガンガンぶつけてまくりまして…。ノミで削るみたいに…。」
「「「「「………。」」」」」
「あ、でも、割った後…、なんか断面が勝手に丸く変形したから…。葉っぱ自体が、許してくれたっぽい…とかなんとか言ってたんですけど…。」
「「「「「………。」」」」」
「まあ、ダメですよね~…。」
次回は25日予定です。




