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139話 トラブルと布チャレンジ

とんとんしゃー… とんとんしゃー…


に○ん昔話とかでよく聞いた、この効果音。

「とんとん」はまだ動作的に分かるけど、「しゃー」ってどこの音なんだろうね??


そんな無益な思考を頭の中で展開しながら、現在機織(はたお)り中。



私は、適当な木の側に設置した鉄テントの中で、1人である。



山地を進むこと数日、トラブルに巻き込まれた。

いや、問題が発生したのは私達ではなく別の一団なのだが。


先行していたダリアさんが怪我をした冒険者達と接触し、移動を中断することなったのだ。


初めは斥候をしていたダリアさんから遠距離の念話がシリュウさんに届き、人力車と私を安全に置いてシリュウさんが林の向こうに消えていったのだが。

数分で戻ってきたシリュウさんは、「怪我をした冒険者達が居る。危険な状態だから人力車に乗せて、全力で飛ばす。悪いが、待機していてくれ。」と言ってスープが入った寸胴鍋を取り出した。どうやら彼ら(彼女らかも知れない)もポーションを持ってないらしく、町まで行くか回復薬を持っている人を探すかする様だ。


「人力車を人を寝かせる状態に改造しますか!?」と尋ねたが

「今のままでなんとかなる。」と言って人力車を革袋に収納し、再びもの凄い速度で消える様に跳んだのだった。


「お気をつけて~!!」


遠くから小さく「すまん!」と聞こえた気がした。




──────────




私は長距離の高速移動にも不向きだし、鉄で色々道具を作れるとは言え怪我人が複数居るなら人力車の座席が1人空く方がベターだろう。



そんなこんなで、1人の時間を有意義に過ごそうと取り組んでみたのが、機織りだった。

食材が無いから調理をしておく訳にもいかない。


まあ、食料は具アリのワンタンスープが有るから問題無いだろう。ちなみにワンタンの具は、猪と蛇の肉の合挽(あいび)きを使用している。これがなかなか相性良いんだ。

冷めないうちにとりあえず食べれるだけ食べたから、これで数日は確実に持つな。アクアの水も有るし2週間くらいでもいけるかも。




まあ、今はとりあえずの布作成だ。

やり方は基本的な布の織り方、縦糸・横糸を交互に絡めるやつ。


仕組みは簡単。むしろ、これしか知らないまである。


縦糸を奇数番号と偶数番号に分けて並べて、その間に横糸を通すやつ。

手元の鉄板には全ての縦糸の一端が固定されていて、もう一端側は奇数組と偶数組で別々の鉄板に固定されている。偶数組の糸の一端を固定してある板は、かなり幅広な形になっていて大きな縦長の穴がいくつも空いている。この穴に奇数組の糸を通してあり、別の鉄板に固定してある。

これを上下させることこそが機織りの基本動作。…のはず…。


要するに、横糸に縦糸が「上・下・上・下…」となれば良い。

その後に縦長穴の鉄棒を動かして、奇数組・偶数組の上下を入れ換え、横糸を再び通す。すると今度は縦糸が「下・上・下・上…」となる。

これをひたすらに繰り返すと糸と糸ががっちり噛んで、布へと至るのだ。


横糸を通す度にきっちり噛み合う様に、鉄の棒をトントンと手前に食い込ませる。

シャー、は横糸を通す音…なのかな?何か足りないパーツとか工程とかあるのかなぁ??不安だなぁ…。


そんな堂々巡りなこと考えながら、無心(になれない)でひたすら作業を行う。




とんとんしゃー… とんとんしゃー…




「ああぁ~…。こりゃダメだ。もっと緊密に糸を配置し直さないと…。」


ガーゼみたいな出来損ないの布を外して、鉄板道具の穴の間隔を作り直していく。


ここをもっとシビアにして…


これを置く台も作って…



お腹膨れてるからか眠いなぁ…。

テントに入る日の光を最小限にしているから暗くて寝たくなるのかもなぁ…。


う~ん…。軽く昼寝しておくかな…?


別にやれることもないし、体力温存がベターかも…。




──────────




「ひゅぃー…。こんなもんか…??」


昼寝(夕方までがっつり)をした後はすっきりした頭で再びの布作成に(いそ)しんだ。その甲斐あってとりあえず完成。


そこそこ布っぽくなったのではなかろうか。多分…。

どこか引っ張ったらバラバラになったりしないかな??

時々解れないかは確認してたけど…。


出来上がったのは横50センチメートル×(かける)縦1メートルくらい──異世界(こっち)の単位で「ノドゥス」と言うべきか。つまり、50「センチノドゥス」×1「ノドゥス」程の大きさの布。


なんで「100分の1」を意味する部分の言葉は地球の「c(センチ)」と同じ発音なのか…。とんでもなく謎だ。


まあ、単位の名前は違うけど、体感で1メートル=1ノドゥスくらいだと思う。

なんでも、物作りをする土エルフの昔の偉い人がその身長だったからそれを基準にして決めた…とか。つまりその人、身長1メートル…。



土エルフってそもそもファンタジーに良く出てくる「ドワーフ」と印象が同じなんだよね。話を聞く限り。

ヒゲもじゃの、ずんぐりむっくりな見た目で男も女も背が低く、頑固・無口・職人気質が基本なのだとか。


…そう言えば…、ダリアさんって…土エルフの血をひいてるって言ってたよね…?

でも背はかなり高いし、割りと喋るし、大雑把だし、全然それっぽさが無いよね??

そもそも属性の異なるエルフ同士で子どもができるのが珍しいみたいに言ってたし、なんか既存の枠組みに(とら)われない感じなのかな…?


エルド島に居た、土属性の魔法も使える風エルフ、とは意味合いは完全に別だろうしねぇ。



…。



布、完成する前に。

服ボロボロの人(ダリアさん)、人前に出ちゃったなぁ…。そう言えば…。


まあ、過ぎたことは仕方ないか。


とりあえず寝てよう。口濯(くちゆす)ぐのとか終わらせて。



「アクア~、お休み~。」


皆さん、無事だと良いね。


果たしてこんなやり方で本当に布になるのだろうか…?そもそも糸の束3つで足りるのだろうか…?


次回は20日予定です。

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