129話 人形騒動決着
作品タイトルに副題?を入れ、あらすじに修正を加えました。まあ、今更感は有りますが。
多少はマシになった…と思いたい。
ダリアさん、気恥ずかしさから暴徒化事件。
悲しい事件だった。何故こんな喜劇が起きてしまったのか。未来の糧にする為にも原因究明を求める…!
と、黒幕ムーブをしながら避難テントの中で時間を潰す。
アクアの水が今日も美味しい。
戦闘音はしばらく前に止まっているので、そろそろ入っても大丈夫なはず。
ワンチャン、シリュウさんに勝ったダリアさんが家の中で待ち伏せしている可能性もあるが、その場合は普通に私を潰しに出てきてるはずなので無視していいだろう。
とは言えそろりそろりと家に近づく。
壁の鉄を操作し穴を開けて中を覗くと、ゆったり椅子に座ってるシリュウさんが見えた。
立体パズルで遊んでいる。大丈夫そうだ。
「お疲れ様…です~…?」
「ん?…ああ、戻ったのか。近くでずっと何してたんだ?」
「いや様子見を…。ダリアさんは…どうなりました?」
「そこだ。」
シリュウさんが見てる方に目をやると、床に突っ伏したダリアさんがいた。
ぴくぴくと動いてはいる。
シリュウさんの側には竜骨の棍棒も置いてある。こちらも欠損とかは無さそう。
「魔力枯渇で戦闘不能だ。とは言えしぶとく動きやがるから威圧して抑え込んでる。」
「…!」じた…ばた…
家の内壁は傷だらけで、鉄製の机や椅子がひしゃげている。
衝立もぼこぼこで壁際まで吹っ飛んでいた。ダリアさんのベッドは使い物にならないね、あれは。
「相当やりましたね、これ…。」
「あんな暴れ方しておいて、ダリアが持ってる人形だけは守りやがったんだぞ?こいつ…。諸とも壊れたら方が付いたのにな。」
自我を失っても大切な物だけは守り通す、狂戦士系主人公ですかね??
現状が悲し過ぎるけれど。
「悪いが壊れたところ直してくれ。」
「元はと言えば人形を作った私が悪いんで、もちろん修復させていただきます。ダメになったところを取り換えるので、魔獣の鉄を貰えますか?」
──────────
「あの棍棒。相当だな。」
「良い感じに機能してました?」
「…。ああ。ダリアの戦闘力を確実に上げているな。」
「…、(軽くあしらいやがって…。)」ブツブツ…
家や家具、私のテントを修復した後は、シリュウさんとお話タイムだ。
魔力切れで動けないダリアさんは、作り直したスプリングベッドの上に寝かせている。
暴れた上に床にうつ伏せだったからかなり汚れていたけど、シリュウさんは気にせず台の上に放り投げていた。
意識はあったから適当に呼び掛けながら土を払って、濡らした布で顔や腕を拭いてはおいたが…。もう1度お風呂入った方が良いだろうね。
暴れて気持ちも発散できたからかそこそこ大人しくなっているけど、不満そうな顔はしている。武器を改良したら機嫌は直るだろうか?
「消費が激しすぎるのが難点ではあるか。」
「普通の大きさじゃないから魔力を溜め込めませんし、自前のものを使うしかないですもんね~。長時間の魔法戦闘は難しいですね。」
生き物はじっとしてたら魔力がじわじわ回復するらしいけど、魔石は魔力を溜め込む機能しかない。
この棍棒に組み込んでいるのは、髪の毛に含まれるキラキラや砕けて細かくなった魔石だから溜め込める量はたかが知れてる。
魔力を流れる道筋としての活用だけしかなく、魔力量を補う目的では使えないからねぇ。
「そこは、ダリアが要所で効率的に使えばいいだけだ。ダリアの魔力量を使いきる程、暴れるのが間違いなんだ。」
「ふ~む…。それでも色々改良点は有りそうだな~。
ダリアさん?あの棍棒、これからも使いますか?使ってくれるなら改造する為の意見を教えてください。」
「…!」ジロリ
「ダリアさん人形を作ったの、まだ怒ってますか。」
「当たり…!前だ、よ…!」
「シリュウさん人形も作ったんだし、お相子で許してくれません?許してくれたら棍棒改造しますよ?」
「フンっ!」
ふむ。根に持たれたな。
「シリュウさん。私のテントの中に置いてた砂魔石の残り、お返ししますね?これ以上勝手に何か作らない様に。」
「…。そうだな。それがいいな…。」
ついでに、テントの中で無事だった物を処理するか。これも問題になりそうだし。
「…そのついでに、もう1つお伝えするべきことが…有ります。」
「…。またか…。」
「実は、シリュウさん人形を作った時に…。取引のダメ押し用にと…。シリュウさんの、イラスト…絵、を描いてまして…。」
「…。それで?」
シリュウさんが右手をワキワキさせている…。
下手なことを言ったら、またアイアンクローが飛んでくるか…。
「その絵をシリュウさんに渡すべきか今のダリアさんの機嫌を直す為に贈るか、相談したくて。なんなら最悪廃棄しても良いですけど…。」
「…!(先にアタシの人形を破壊させな…!)」
「…。(機嫌が直りそうには無いな。)」
「ある意味、人形よりも思い入れが有るので…。できれば廃棄は止めてくれると…、ちょっぴり嬉しいです…。」
「…。(マンガ、みたいなもんか。)とりあえず。どんなもんか見せろ。」
ごそごそ…
「こちらです。」
「…。(これ、は…。)」
私が絵にしたのは、幸せそうなシリュウさんの顔だ。
ドラゴンの照り焼きを食べていた時の、満面の笑みを斜めから見た構図になっている。背景は鉄の黒だが顔部分は全て人形の時と同じなので、本物にそこそこ近いはず。
人形が格好いい路線だったから別系統のおまけとして、こんな感じになった。
しげしげと絵を眺め続けるシリュウさん。
「美味しい物を食べている姿を表現するのに、デフォルメして…いや伝わらんな。えーと…表情を強調して描いてた、ので印象は異なるかもしれません。けど…どうでしょう…?」
「…。テイラには。俺がこう見えてる、のか。」
「え?まあ…。私の画力のせいで表現しきれてないでしょうけど、照り焼きとか食べてる時のシリュウさん、子どもみたい…いえ、普通に。普通に、幸せそうなので。こんな感じ、かと…?失礼でしたかね…?」
「いや?悪くない。」
真顔…、いや若干柔らかい表情かな?
ともかくこのイラストで怒られることはない、っぽい?
シリュウさんが改まってダリアさんの方に向き直る。
「ダリア。人形をお前に渡す。俺は絵を貰う。それで面倒事は終わりにしろ。
──良いな?」
──────────
「──で、先端側を尖らせるんだ。突きの破壊力が欲しい。あと、側面にも放出の起点を付けな。風の推進が要る。」
「なら、相手にぶつける打撃面と、風の噴出面とを分けて──」
「いや、どう振っても使える様に──」
「それだと打撃力と魔力消費が──」
「…。(ダリアの奴、無茶苦茶言ってるな。)」
許してくれたダリアさんと棍棒の改良案について議論している。
魔力が回復しきってないのでベッドの上に起き上がった状態ではあるが。
ダリアさん人形は、破壊せずに所持してくれるらしい。
人に見せたりシリュウさんに持ってられるのは我慢ならないが、それを回避できれば壊すのは勘弁してくれるそう。
まあ、他人の目に晒す気はないのでボックスカバーをがっちりロックして封印状態にし、シリュウさん人形の下に安置することになったが。今は共々に、シリュウさんが渡した魔獣の毛皮製の袋に入れている。
棍棒を持ち運ぶ方法も考えないとな。
あの呪具よりは短いけど、やっぱり背負う形になるかね?固定具も必要だな。
魔獣の皮辺りでベルトとかも作るかね。肌に触れる部分は鉄だと色々不便だろうし。
「良し。いくつか試してみて、どの形が良いか確かめていきましょう。」
次回は21日です。




