123話 お風呂でのんびり
超絶今更なのですが、「障気」という言葉についてお知らせをば。
作中では“障害のある邪魔な空気”として使用している、この言葉。実はポンコツ作者が「瘴気」と間違って覚えていた誤字です。
瘴気は、マラリアなんかを引き起こすと考えられていた概念で、後の世において病原菌やウィルスに繋がるものだそうです。
まあ、この作品内では障気の表記でとりあえず突き進んでみようかと思います。とりあえずニュアンスが伝わればそれでいいかな、と。
何かご意見あれば感想コメントにでもお願いします。
「ふへぇ…。とろけるぅ…。」
久々の温かお風呂は気持ち良いねぇ…。
雨はしばらくしたら止んだけどそのまま天気は悪かったので、お風呂は翌日の天気次第となった。
そして、現在翌日の朝。
ピーカンに晴れた夏空から燦々と太陽が降り注いでいる。
空気に触れる面積を大きくしたグネグネパイプをタンクに接続して、水を適量移動、周囲に配置した鏡で熱を集中させて湯沸かし完了。
私の鉄で作ったユニットバス(1人用サイズ)に流し込めば、温かお風呂の完成である。タンクの水も接続してあるから、今回は温度調整も可能だ。
鉄の湯船は冷めるのも早いけど、そこはパイプ内のお湯を適宜足せば問題ない。
問題なのは石鹸もどきがもう無いことだな。
灰はあるけど動物の脂身が無いから作れない。まあ、灰も水につけたり火にかけたりして必要な成分を取り出すのに手間がかかるし、どのみち放置だな~。清潔にするのは他の手段あるしね~。
「いいおんど~…。」
明かり取りに開けた、天井の枠の向こう側にある空を眺めて。ぼ~…っとお湯に浸かる至福の時間…。
──────────
「ふぅ…。さっぱり…!」
ちゃんとお腹が隠れる様に服を着て、と。
石鹸が無くともお湯に浸かって汗をかくだけで十分にすっきりした。
久々の銭湯に行ったみたいな気分だ。
やっぱり風呂上がりと言えばフルーツ牛乳だよね。
ひたすらに懐かしいねぇ…。久しく飲んでないなぁ。当たり前だけど。
牛乳は無いし、果物の確保とかかなり難度高いなぁ。再現は難しいか。
まあ、リストにメモだけはしておこう。
「ただいま戻りました~。さっぱりです~…!」カランカラン
浴室から直通の扉を開けて鉄の家に戻る。
靴を履いて家の中を移動するのがかなり違和感だね~。
私の腕輪の中に入れるには鉄以外の物を極力排除しないといけないけど、今はシリュウさんの持ち物だから室内は普通に土足である。日本人には有り得ない世界だ。
まあ、流石に風呂上がりにブーツみたいなしっかりした靴を履く気にならなかったから土の半輪2個部分を分離させて足輪にし、靴は鉄のサンダルを装着してる。
サンダルってかほぼ下駄だけど。
レイヤの風と水魔法で服は簡易的だが清潔にしたし、髪もちゃんと乾かした。なかなか良い気分である。
「この暑い中、随分熱い風呂に入ったんだな?」
「ん~?普通のお風呂ですよ?」
「…。(火と水が無駄過ぎるから、“普通”は風呂なんざ入らないんだがな…。しかも町の外で…。)」
はて?シリュウさんには非常識なことなのかな?
人間の魔法使いも体表面の汚れとか障気とか自動分解できるらしいから、お風呂にあまり入らないのだったか?
「あ!そうか。シリュウさんは暑いのが苦手だから、熱いお湯に馴染みが無いんですね!」
「…。(見事にズレてるな…。)」
否定の顔で無いっぽい。ならば、間違ってはいないはず。
「なんならお湯捨てて、水風呂入ります?」
夏に入るなら水風呂だよね。まだそこまで暑くないから、ちょっと早い気もするが。
「…水…風呂…??水なら水浴びじゃねぇか…?」
「お風呂の浴槽にお水を張って、そこに入るから水風呂で合ってますよ?」
「…。(デカイ盥に浸かる様なもんか?)」
ふむ?ピンときてない様子。
水を頭から被ったら水浴びで正解だと思うけど、水に浸かるから風呂呼びで問題ないはずだが。
ん?川に入るのは水浴び呼びか?合ってるのか??
「まあ、いい。とにかく止めとく。」
「そうですか。」
「…。(風呂だと服を脱いで装備を外すからな。テイラとダリアが居る側で、この角を外すのは、一瞬でも止めておこう。)」
ダリアさんはまだ寝てるし、アクアも今回は入らず殻に籠ったままだ。シリュウさんが入らないならパイプの中のお湯、捨てるか。
元雨水だから未処理だと飲み水にもなんないし。乾かさないと回収──
待てよ?
今回のタンクも浴室も大部分は、黒の革袋に入ってた魔獣鉄で出来てるから私の腕輪に回収するのは無理じゃん。
「シリュウさん。物は相談なんですが。」
「なんだ?」
「このタンクと浴室も、この家と一緒にそのままの形で保管してもらえたりします?」
「…。質問の意図が分からん。元からそのつもりだが?」
「いや、シリュウさんが使わない物は価値無しになるかと考えまして。お湯と水を捨てて、鉄の塊に戻した方がいいかな?、と。」
「ああ、そういう意味か。安心しろ。ちゃんと入る。
──ただ、中の雨水は蒸発するから諦めてもらうことになるが。」
「…?…あ~…。そうか。アクアの水以外は異常乾燥に負けるんでしたね。」
鉄で囲った中の料理も乾燥するんだから、タンクの中でも同じか~…。なるほどね~。
「全然大丈夫です!」
また雨溜めれそうな時に使えばいい訳だからね~。
「…。そうか。
──一応言っておく。これも闇属性の弊害だ。闇の特性『浸透』で、物の内部まで俺の火の熱が到達するのが原因でな。」
「ああ~!!なるほど!そんな理屈ですか。大納得です。」
「テイラの物なら大概持ってやる。だが闇と火に耐えられるやつだけだから、そこは考えて渡してくれ。」
「了解です~!」
「テイラの魔力を弾く鉄でも、黒袋の中じゃ浸透熱を弾ききれてないからな。基本的に水精霊の──」
シリュウさんが会話の途中で止まってしまった。
え?何か来る??
「──!…。テイラ、ダリアが起きる。覚悟しとけ。」
シリュウさんが衝立の方を見ながら呟く。
「あ。なんだ、そっちかぁ。敵襲じゃなくて良かったぁ…。」
「いや、ほぼ敵襲だろ。テイラと手合わせしたいって言ってんだぞ?
ダリア、かなりしつこいから逃げようが無いんだぞ?」
シリュウさんがげんなりした顔で念押ししている。
相当面倒な目に会ったことがあるようだ。
「まあ、なる様になりますって~。
あ!今起きるなら、ダリアさんもお風呂入れますね~。入るか聞いてみよ~。」
「…。(ダリアを舐めすぎだ…。まあ1度経験しないと分からんか…。)」
ふっふっふっ!
準備はできてる…!昨日の夜にテントの中でちまちま作った秘密兵器がある!
我に秘策アリ…!!
次回は2022年1月3日予定です。
皆様、良いお年を迎えられますように。




