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115話 私の目的

「あんたはこれから何を()したいんだい?」


 テントに戻ろうとしていた私に、ダリアさんがよく分からない質問を投げかけてきた。



「ごめんなさい、おっしゃってる意図がいまいち分からないんですが…?」


「あんた自身の目的を聞いてるんだ。」


 すごく真剣な顔で私を見つめている。



「…私の、目的…?」


「…、あんたがが変わった境遇なのは聞いたしシリュウがあんたを気に入ってるのも理解した。そんなあんたが特級冒険者のパーティーに所属して、どうつもりなのかを聞いてるんだ。」


 ああ~…。これからの展望とか、ってことか。



「特に何も考えてませんよ?」

「…、あん?」


「それに訂正しておきますけど、私、シリュウさんのパーティーに正式には入ってませんから。仮候補の状態です。」


「…、何おかしなことを…??」

「テイラは自己評価が低いと言うか、自分に価値は無いと思ってる節があってな。だから特級(俺の)パーティにも入る気が無いんだとよ…。(馴染み過ぎててすっかり忘れてたが。)」


「いやぁ、普通に考えて〈呪怨(のろい)〉持ちを仲間に入れるとか有り得なくないです?」

「それは…、そうだけどねぇ…。

 今、現に一緒に行動してるじゃないかい?」


「シリュウさんには命を助けて貰った恩があるので、恩返しをしてるだけです。パーティー仲間と言うよりは、保護観察されながらご飯作ってる的な…?

 美味しくて高価な食材をたくさん提供してくれるから、全然返せてませんけど…。」


 むしろ、受けた恩が増えてるよね…。



「なので…、シリュウさんに料理のレシピを渡したり、暇潰しになる物を作ったり…。そんな感じのことが、今の目標ですかね?」


「…、本気で言って…るみたいだね。」


「ええ。ダリアさんが危惧してそうな──

 ギルド中枢に潜り込んで要人を暗殺するとか、

 特級冒険者を操って故郷に復讐がしたいとか、

 機密情報を売り捌いて大金を手に入れるとか──

 そんなことには興味ないですね。」


「…。」

「…、随分、(なめ)らかに喋るね…。」

「疑われてる内容の推測ぐらいできますよ。動機も有るには有りますし…。

 まあ、面倒臭いことは避けるのが一番です。バカなことをするくらいなら、全部放り出して逃げ出しますよ。」


 “三十六計逃げるに()かず”、“逃げるが勝ち”。


 何せ私は「全てが嫌になって自分を(『せかい』から)殺した(逃げ出した)女」だ。今更過ぎる。


 お(ひと)り様、万歳! …って、ね。



「だから。私が、シリュウさんに害を為す存在だと思ったら全力で攻撃してくださって構いません。

 パーティーからの追放を目指すのも良いと思いますよ。頑張ってシリュウさんを説得して下さい。

 まあ…、あまりに理不尽過ぎたら抵抗くらいはしますけど。」




 ────────────




「おはようございます…。」ふぁ~…

「ああ。」


 翌朝。

 シリュウさんがリクライニングシート(鉄ゆったり椅子)に座って外を見ていた。


 釣られて見ると天気は雲が多めの晴れ。

 ふむ。太陽光で調理するのはちょっとキツいかな。位置も低いし。



「シリュウさん。朝ご飯は出来合いのやつで済ましていいですかね? 天気的に。」

「ああ、そうだな。テイラもうどんで良いか?」

「はい。お願いします。」


 ガラスープが朝には多少重いかもだけど、しっかりカロリー取っておかないと動けないしまあ、大丈夫だろう。



「ダリアさんも気に入ってたし、大丈夫でしょう。」


「…。ダリアはしばらく起きないと思う。朝飯は2人で食べよう。」

「あら? そうですか。了解です。」


 ベッドの方を見る。

 昨日作っておいた衝立(ついたて)の向こうから、規則正しい寝息が微かに聞こえる。

 複合バネ(スプリング)で多少柔らかくなる様に工夫しているとは言え、オール鉄製の寝台で良く寝れるね。絶対初めての経験だろうに。



「やっぱりお疲れでしたかね。」

「…。飯を食べて活力は補充できたから、寝まくって回復したいんだとよ。」

「魔力操作が得意な人がやる、超回復(ちょうかいふく)の睡眠ってことですか?」

「ああ。」


 地球では、体を思いっ切り動かして筋肉を傷付けて強く太く再生させることを超回復と言っていた(はず)。


 しかし。こっちの超回復は、ガチの自己回復魔法だから全然違う。

 マジ魔法だよ、全く…。



「上手く回復すると良いですね。」


 良く分からない魔力の塊の手足が、どうなることやらだが。



「…。テイラには歓迎できん話だぞ。」

「…はい?」


「ダリアの奴、テイラのことをぐだぐだ考えるのを止めて、身体を動かせる様に回復するんだと。」


「…それは別に良いことでは…? 私のこと、考えるだけ無駄な奇っ怪女だって諦めたんですよね…?」

「…。違うな。」

「違うんですか??」


「…。あいつ、テイラのことを理解するのに肉体言語で(・・・・・)挑む気だからな。」

「はい!?」


 今、何つった!?



「肉体言語!? つまり殴り合って友情を深める的な!?」

「ああ…。

 普通、敵意が深まるだろうがな…。」

「どこの蛮族ですか!!? そもそも言葉で説明してるんだから必要無いでしょう!?」


「言っただろ、あいつは直情型の馬鹿だって。むしろ昨日が大人し過ぎたんだよ。テイラの話が小難しくて面倒だから、戦って本質を掴む、とよ。」

「バカですか!?」

「馬鹿だな。

 出会った頃からこんな奴だ…。」


「…めちゃくちゃじゃないですか…。

 今、寝込みを襲えば回復妨害できますかね…?」

「…。できるとは思うが、それはそれでそのまま殴り合うことにならないか?」


「…。」無言思考…

「…。」


「………。」ナウ・ローディング…

「…。」



「──私の鉄で完全密閉で埋めたら、エルフでも数日あれば窒息死するかな…。」やるか…??

「…。(割りと本当に死ぬな、それ…。魔法が効かねぇし…。)

 馬鹿だが、できれば殺さないでやってくれ…。」


 面倒な人と関わり合いなっちゃったなぁ…。

 どう対処しよう…。


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