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114話 お疲れ様会再開

「これは…、確かに美味いね…!」

「だろ?」


 アクアの紹介と気分転換の運動も終わったので、お疲れ様会を再開した。


 料理が保温されるシリュウさんの黒袋のおかげで、すぐに食べられる。マジ有り難い。

 アクアの冷水は魔法瓶で冷たいままだし、完璧だ。



 ダリアさんは蛍光色の左手でスプーンを握り、細切れうどんスープを口に運んでいたが、途中から面倒になったのか器を直接掴んで飲み始めていた。


 うーん、なんかエルフって感じがしない行儀の悪さだ。


 お代わりの時、器に取っ手を付けて渡したら微妙な顔をされた。マグカップ型ならとりあえず食べ易くなると思ったけどダメだったかな?

 まあ、ちゃんと取っ手を持って豪快に啜ってはいたから大丈夫だろう。



 ヤドカリモードのアクアも一緒に食べている。お気に入りのクッキーもどきだけだが。

 ただ小麦粉を水で練って焼いただけだし、より美味しいドーナツもどきも完成したのに変わった精霊(やつ)だ。



「──角兎の骨を数時間煮込んだやつだ。」つるつる… もぐもぐ…

「…、魔法薬か何かかい?」

「美味いなら良いだろ?」


「──トーケーの揚げ物だ。高温にしたミーシェルの油溜(あぶらだ)まりの中で加熱するんだ。」もぐもぐ…

(ミハ)が聞いたら卒倒しそうな──」


「──と──と──を、水精霊の水で──」もぐもぐもぐもぐ…

「さっぱり分からん…。もういいよ──」


 シリュウさんが上機嫌に話をしてる。


 ドラゴン肉(激レア食材)砂糖と塩と酒(高価な調味料)で焼く、照り焼きとかの話したらどうなるかな…?


 ちょっと興味ある…。 つるつる… もぐもぐ…




 ────────────




「ご馳走様です…。」


 いやぁ、今回も食べたね~。満腹だ。



 ダリアさんも細切れうどんスープだけしか食べなかったが、何回もお代わりをしていたから気に入ってはくれた様子。


 シリュウさんはまだまだ食べる気らしい。

 灯りの魔導具を机の上に出して、食事を続けている。

 現在は、コロッケうどんラーメンとでも言うべきジャンクな食べ方を試している様だ。


 時間的にそろそろ日が沈むけど拠点は既に在るし、何も問題はないだろう。



 さて。


 寝るには流石に早過ぎるし…。


 仕方ないからアクアに(ぬる)いお水出して貰って軽く体を()くかな…?



 ごくん…

「テイラ。ちょっといいか?」

「はい? 何でしょう?」

「これを補修して欲しい。」


 シリュウさんが取り出したのは…、ん? 何これ? 私の鉄の塊?

 ひしゃげてるけど、カードケースみたいな形の──



「あ! 豹柄(ひょうがら)カビが入ってるやつか!」

「…。(ヒョウガラ…?)

 ダリアとの戦闘で変形してな。中身は無事だから一応直してくれ。」

「お安いご用ですよ~。」


 ふむふむ。鉄はそこそこ曲がって表面が傷だらけ。

 確か革袋には入れずシリュウさんの腰に付けてたからね、仕方ないね。

 ダメになった部分は外して、私の鉄を追加して…と。


 良し。これで大丈夫だろう。しかし、何なんだろうね? このカビ。

 まあ、いいけど。


 とりあえずシリュウさんに返しておく。



「どうぞ。」

「助かる。」

「いえいえ。

 じゃ、ちょっとテントに戻ってます。」




 ──────────────




 パンツ(水のアーティファクト)の力と、髪留めの風、火の腕輪で体温上昇(身体強化)…。

 で、完了…と…。


 ふぃー…。今日もサッパリした…。

 これだけ丁寧に乾燥させれば体も冷えないだろう。使った水も少量だし。


 アクアの水を使う罪悪感さえなければもっと頻繁にしたいんだけど。こればっかりは仕方ないね。


 テントから出ると相変わらず食べ続けるシリュウさん。それを眺める、手持ちぶさたな感じのダリアさんが居た。



「そうだ、ダリアさん。ダリアさんはお体、拭いたりしますか? 気持ち悪かったりしないです?」

「ん? いや、大丈夫さ。これでも冒険者だからね、慣れっこだよ。」

「了解です。」


 ふむ。別に()せ我慢をしてる訳ではなさそうだ。なら、放置でいいか。

 エルフだから、魔力光(オーラ)が天然の清潔魔法みたく機能してるだろうし。



「もうお休みになります?」

「いや?

 …なんかあんのかい?」


「シリュウさんがこの調子だし、お話でもして暇潰ししましょうか、的な…。」

「別に気を使ってくれなくて良いよ?」

「まあ、私がまだ眠くないってだけですよ。テントに戻ってもレシピ書いたり、料理のアイデアを(ひね)り出したりするくらいしかやることないし…。」


「重要なことだろ。優先してくれ。」もぐもぐ…

「…いや、シリュウさん…。書くレシピも今日のうどん分くらいだし。アイデアなんて食材が増えない現状、それこそ“絵に書いた餅”にしか…。何も急ぐ必要無いでしょう…。」

「それは、そうだが。」つるつる…


「それに。ダリアさんとは色々有った訳ですし、こう…。距離感、を掴んでおきたいんですよ。これから一緒に移動することになるんだし…。」

「なんなら、置いていってくれれば勝手に移動するよ?」

「却下だ。そっちから喧嘩吹っ掛けておいて逃げる気か?」


「…、そんなつもりじゃない、けどさ…。」

「その状態で何かあったら面倒なんだよ。大人しくマボアまで一緒に来い。」もぐもぐ…

「…、」むぅ…



 ふむ。親に(さと)された子供みたい。


 もしかしたら、シリュウさんの方が年齢上だったりするのかも…??



「すみません、ダリアさん。“藪蛇(やぶへび)”だったみたいで…。」

「…、まあ、良いけどさ。ちゃんと従うし、話でも何でもするさ。」

「いえいえ。私から無理強いするつもりは無いので。

 テントの中に入って適当に過ごしますから。」


 ここは一旦退散しよう。

 ゆっくり距離を詰めていけば、それで──



「──1つ聞いてもいいかい。」

「はい? 何でしょう??」


「あんたはこれから何を()したいんだい?」


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