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112話 お疲れ様会と水問題

〈誤字報告について追記〉


 作者初の誤字報告をいただきました。(令和5年3月下旬)

 間違いの指摘、とても助かります。深く感謝を。


 それに付随して、作者が多用している「ら抜き言葉」について、方針を明示しておきます。


 話し言葉で使う分には「ら抜き」も認める雰囲気なのですが、文章等の書き言葉においては明確に間違いであるそうです。

 しかし、この作品は主人公の頭の中に展開される「独白」が主なので、「話し言葉」を適用するのが自然だと解釈しました。

 なので、基本的に「ら抜き」表記のまま、これからも突き進みたいと考えています。(第3者視点の文章では「ら」を正しく入れていきたいと思います。)


 人によっては不快感の有る文章かも知れません。ご容赦のほどを。



 また、誤字報告の際、誤字「以外」の文章を書き込む必要はありません。修正する時に、その不必要な文章まで作中に適用されてしまいます。

 意見や提案など有れば、コメント欄を活用していただけると助かります。




「てな訳で。新作料理が完成しました、ダリアさん!

 一応、麺料理なのでまだ馴染みが有るかもしれませんよ!」 


 鉄の家の中でお疲れ様会開始である!



「なんなんだい? その高揚(こうよう)の仕方は…。」


「新しい美味しいものが食べれるのに、テンション低いですねぇ…。やっぱり病人食みたいな、お粥とかが良かったですか?」


 こっちのお粥は、米じゃなくて大粒の麦っぽい穀物を使っているけれどね。麦飯のお粥…、いや麦粥(むぎがゆ)?で合ってるかな?

 ともかくそんなのが必要だったか。



「病人扱いすんじゃないよ…。」

「あ。(やまい)じゃないから、怪我人でしたか。」

「そんな問題でもないよ。」


「ダリア。とにかく食え。美味いぞ。」

「…、」


 対面に座るシリュウさんがベッドの上のダリアさんに食事を促す。

 しかし、ダリアさんは無言でこちらを見るだけだ。


 机の上には、水を入れたコップ、細うどんラーメンの器、栗もどきコロッケのお皿、とそこそこのラインナップである。

 甘い物としてドーナツもどきも用意してある。


 狩った肉が無い食卓にしては豪勢な部類だろう。



「まあ、とりあえず! お疲れ様でした! 心行くまで食べてください、シリュウさん。」

「おう!」


 ダリアさんは上半身を起こして、ベッドに付けた台に料理を乗せて食べてもらうつもりだ。


 細うどん麺はかなり短く切って、(すす)る体力が無くてもスプーンだけで(すく)って食べれる様にした。

 見た目は既に麺料理に分類できるか怪しいスープだが、まあ仕方あるまい。


 初見の料理ばかりだからか、ダリアさんはまるで手を付けようとはしなかった。

 用意したスプーンすら握らず、ずっとシリュウさんを見ていた。


 当のシリュウさんはフォークで麺を持ち上げて、そこから啜って食べている。完全に我関(われかん)せずのモード。


 細うどんのスープに口を付け、脇に置いてあるコロッケを口に運んで、水を飲む。


 とても満足そう。

 特におかしなところは無いと思うが…。



 う~ん…。何が問題だろう?



「何かシリュウさんの食べ方が不味かったりしますか?」

「…、」


 ダリアさんが私を見る。なんか普通にジト目?



「なんかお気に(さわ)ること、しちゃいました?」

「そうじゃないよ…。」はあ…


「右手が使えないでしょうけど、その左手だとスプーンは握れないですか?

 エルフのダリアさんならマジックハンドで十分扱えるとも思ってたんですが…。介助、要ります?」


魔法手マジックハンドなんて上品な食い方する訳ないだろ。助けなんて要らないさ。」


「テイラ。ダリアは放っておけ。

 こいつは料理もしないし、食事に頓着しないガサツ女だ。食わないなら何言っても無駄だ。」もぐもぐ…


「シリュウよぉ、あんたが食事に(こだわ)り過ぎなんだよ…。」


 うん。シリュウさんが変わってるのは共通認識で合ってたね。

 もうだいぶ慣れたけど。



「あとね。一番おかしいのは、この料理だよ。どっから、こんな食事出したんだい?」

「俺の黒袋に決まってるだろ。」

「あんたのマジックバッグ(マジバ)は量はともかく、肉と酒以外食えたもんじゃないだろう。」

「その素材を食える様にした上で美味いものを作るのが、テイラの技だ。」


 シリュウさんが得意そうに語る。

 何かむず(がゆ)いな…。


 ダリアさんは奇妙なものを見る目を向けてくる。



「いやぁ、私は鉄で調理器具を作れるだけですよ~。」

「その鉄、〈呪怨(のろい)〉で作ってんだよね…?」


「ええ、そうですね。やっぱり気持ちが良いものでなかったですか…?」

「呪具を使ってたアタシがどうこう言えることじゃないさ…。

 ただ、利用の仕方が…、何と言うか…。」


「作るのにコストが必要ですけど非魔種の私には唯一の取り柄みたいなもんでしてね。存外、便利ですよ?」

「…、」はあ…


 まあ、非常識と思われようが今さらだね~。



「そっちは、シリュウが納得してるならいいけどね。

 でも。この料理の水属性は何なんだい? 説明しとくれ。」


 料理の水属性…?


 ──あ、アクアの水か。



「お口に合わない感じでした? それはごめんなさい。」


 ほとんどの料理に大なり小なり使ってるからね。避けようが無いな。



「そんな問題じゃないんだよ…。

 ちょいと。シリュウ。あんたから説明しとくれ。」


「…。」つるつる… もぐもぐ…


 凄く面倒そうにしながら、無言で食事を続行してる…。



 ごくん…

「ダリア。とりあえずこの水は美味い。それだけで十分だろ。」

「アタシにゃ説明しないってのかい。」


「…。頭が痛い、解決不能な問題を聞くことになるがそれでもいいか?」

「あ? (たか)が料理にそこまで──

 いや、悪かった。シリュウにとっちゃ重要なもんだね。」


「…。まあ。いい。

 で? 本当に説明されたいか? 美味いもんは美味いで済ますのが平穏だぞ?」

「説明しとくれ。シリュウの火や土ならともかく、こんな凄い水属性がどこから湧いてきたのか知らなきゃ気色悪い。」


「…。ちょっと待ってろ。もう少し食ってから話す。」つるつる… もぐもぐもぐもぐ…




 ──────────




 ある程度食べた所で机の上の料理を一旦、黒袋に仕舞ったシリュウさん。


 説明するのにここまでする必要あるかな…?

 まあ、私は構わないけど。



「…。水精霊。出てこい。」

「いや、シリュウさん、アクアは親しい人以外が居る所だと出てこな──」



 パカッ… ぽよん…



 出てくんのかい!!?



 アクアが私の腰から跳ねて机の上に乗り、ダリアさんに「よっ!」って挨拶をするみたいに触腕を伸ばす。



 あれぇ、いつもと反応違くない?

 シリュウさんの命令聞き入れ過ぎでしょう。


 …それともあれかな? エルフ相手だからかな?

 レイヤに対するのと同じ親近感?でもあるのかな…。



「受肉した…精霊…かい? こいつが水を出してんのか…。

 なんで今まで魔力(気配)が…?」

「テイラの鉄には魔力遮断効果があるんだ。水精霊(そいつ)はその中に()んでる。」

「…?? なんだいその能力…??

 いや? そもそも、精霊が呪いの塊に棲んでる??」


「テイラ、俺達の周りをテイラの鉄で囲えるか?」

「へ? いや、かなり薄く、でなら多分できますけど…。」

「なら、してくれ。

 水精霊。体を全部出せ。」



 よく分からないけど、指示に従うか。


 テーブルとベッドを覆う様なドームを展開…。

 足を上げながら地面にも伸ばして、机や椅子、ベッドの脚と(なか)ば融合気味に接着して…、と。



「何すんのさ…?」

「口で説明するより魔力感知()で確かめた方が良い。」



 暗いな…。日光届かないもんね。



〔世界 を 巡る 強き 風 よ。〕ホワァ…



 良し良し。髪留めの灯りでドームの中が見える様になった。


 緑色に照らされたダリアさんが、酷く焦った顔をしている。



「…。ダリア。髪留め(テイラ)は関係無い。ともかく水精霊を見ろ…。」


 机の上を見ると、アクアが鉄の貝殻から完全に体を出していた。


 スライム形態モードは久々だね!


 わ~い、久々のぽよぽよアクアだぁ♪



 アクアの頭(?)や背中(?)を両手で撫でる。良い感じにひんやり冷たく、もっちり弾力がある。


 これは無限にぽよぽよできるやつ~。




「…。テイラ。何してんだ…?」


「いやぁ、アクアって鉄の貝殻からなかなか出て来ないから、全身をぽよぽよできる機会に撫でておこう、と…。」ぽよぽよ… ぽよぽよ…


「…っ!!?!?」


 なんかダリアさんが驚愕の顔している。興味あるのかな?



「ダリアさんも撫でてみます? 頼めばアクアも了承──」


「こ、この、魔力かんじは…!? …激流蛇(げきりゅうだ)様!?!?」



 ゲキリューダ? 様付け? 何それ??


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