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109話 冒険者パーティーの目的

「まずは話をしましょう。何から聞きたいですか?」



 巨大ハンマーを構えて、視覚的にビビらせつつ。

 距離を保って冒険者達と話をする。



「何なんだ!てめぇら!」


 凡骨さんがギャアギャアと喚く。こいつだけやたら元気だな。

 邪魔だから黙らせとくかな?

 イラドのガキ、って言ってたのもこいつだし。



 シリュウさんは「頼んだ。」と言って家の中に引っ込んでくれた。ただ、扉は開けたままだから、話は聞いているはず。いざとなったら出てくるだろう。



「私はテイラって言います! よろしくお願いします!」

「名前なんかどうだっていいだよ!」

「待て!フギド! 目的を──」

「アリーがやられたんだぞ!? ズタズタにしてやる!!」

「あれはお前が──」

「ああ!?」


 よし。こいつは邪魔者決定。


 ハンマーを振り上げる。


 それを見て凡骨が突っ込んできた。



 おっと、(ふところ)に入る気か。


 足の鉄輪から鉄の棒を1本ずつ伸ばして迎撃。

 これで左右を──



 凡骨が剣を振るう。なんか赤熱した感じの刃が鉄棒に向かう。


 ガキン!


「なっ!?」


 驚いて硬直した凡骨の頭上にハンマーを落とす。



「フギド!?」



 ハンマーの先は巨大な筒状にしてある。

 凡骨さんは筒の中。魔法を弾くからおおよそ一般人(にんげん)には脱出不能だろう。

 そのまま鉄操作で適当な形に拘束、拘束…。


 特に口の辺りは念入りに。魔法を詠唱されたら敵わないからね。



「──」フーッ! フーッ!


 凡骨の鉄巻き、一丁上がり。と。




 残りの鉄を切り離してハンマーを再形成。そして、構える。



「まだ、やります?」


 剣士3人は剣を収めてくれた。




 ──────────




「なるほどなるほど…。」


 この人達はここから北東方向にある町を拠点にする冒険者パーティらしい。

 上級パーティが1つ、中級パーティが2つで合同クエストを受けた。


 クエストの内容は、南方、つまりここで起きた大規模魔力放出の原因調査。

 夜が明けてから町を出発、周辺を確認しながら南下して来たところ、飛竜らしき姿を空中に発見。

 飛竜は1体。ここから離陸して南の砦に飛んでいった様子だった。竜騎士が発見した何かしらの、騒動の原因がそこにあると冒険者達は仮定。


 そして、怪しげな金属の家を発見した。



 その家を調査しようとしたら黒髪の子どもが現れた、と。

 自分は冒険者だの、エルフと大規模戦闘をしただの、妄言を吐いた、と。

 証明すると言って少年が何かしたら、上級パーティの魔法職の女性が目元を押さえてうずくまった、と…。


 そして、この簀巻(すま)き…、いや鉄巻きの凡骨はその女性の恋人だ、と…。



 ん~………。

 これは、どっちもどっちか…?


 シリュウさんは手っ取り早く魔力を出して立場を教えようとしただけだろう…。

 凡骨さんの怒りも分からんでもない。まあ、あのままだと死んでただろうけど…。




「そちらの事情は分かりました。とりあえずこの凡…、赤い剣の人。は、このまま冷静になるまで放置します。よろしいですか?」


「っ!~っ!!」フーッ!フーッ! 


「あ、ああ…。」

「倒れた女性は大丈夫ですか?」


 1人、椅子に座っている女性を見る。


 立ち話もなんだと思って椅子を勧めたが、彼女以外全員が断ったので私も立って話をしている。



「ああ…。大事は無い。アリー…彼女は魔力を感知する能力が高くてね。目が(くら)んだ様なものらしい。その内動ける様になるみたいだ。」

「そうですか。それは良かったです。」


「それじゃ、そちらの話を聞かせてくれるか…?」

「はい。とりあえず──」



「あの黒髪の少年は、特級の凄い冒険者で──

 彼に命を助けてもらって──、

 南の砦で飛竜の騎士と会って──、

 土エルフのお…姉さんがやってきて──、

 超級と特級の激しい魔法戦闘が──、

 地面の隆起、積乱雲、巨大な火炎に、砂嵐。それはもう、天変地異の如く──、」



「──で、その土エルフさんが四肢欠損の怪我をしてようやく戦闘が終わり、巻き込まれた私もなんとか寝ることができ、起きたらこの有り様でした。」


「「「…、」」」



 ふむ。あまり納得できてなさそう。まあ、私も話だけ聞いたら似た反応するだろうね。

 かなり要点を絞ってみたけど、おとぎ話とか吟遊詩人の創作とかって疑いたくなるからな~。

 気持ちは分かる。



「その人が言ってることは多分真実よ…。」


「大丈夫か? アリー?」

「ええ、なんとか…。ともかくあの少年は、ダメよ。敵対してはダメ。私達が一丸になっても何もできないわ…。」

「そ、それじゃ、本当に…?」

「ええ…。彼は高位貴族の魔力すら超えてるわ。特級だと言われて納得しかない。

 ──あんなもの、荒々しい精霊か何かだわ…。」


 話はできてるみたいだけど、体が震えてるね。


 やっぱりシリュウさんの魔力は凄いんだな。風の氏族のレイヤすら超えてるのかもな~。私にはどうせ分からないから別にいいけど。



「まあ、とにかく。この場所で起こった、特級と超級の戦闘は終了しました。報告としては以上です。何か他にありますか?」


「…上に報告するのに、できれば証拠が欲しい。口頭だけでは信用してもらえないだろうから。」


 証拠、ねぇ…。



「ギルドカード、とか…?」

「いや、読み取り具が無いから本人確認にはならない。」

「特級のカードを見たことがないから本物かどうかも判断できないわ。」


 土エルフさんの超級カードなら、と思ったが、本人に確認するとカードも燃えてなくなったみたい。


 まあ、家の中に確認に入った冒険者達に、療養中のエルフが居ることは分かってもらえたので結果オーライかな。


 その後、横たわる土エルフさんの説明も聞いた冒険者達はひとまず納得した様で、帰還することになった。


 魔法職の女性が魔法板を持っていたので、土エルフさんがそれに文字を念写して一応の署名代わりにするらしい。

 彼女達のところのギルマス宛に今回の騒動の概要と、マボアに居る知り合いへの言伝(ことづ)てを頼むそうな。

 シリュウさんも交えて何やら相談している。



 今、両腕が使えない様なもんなのに肩に魔法板を当てた状態で、板に文字を写せるとか凄いなぁ…。

 魔力制御がレベル高過ぎ…。


 非魔種(わたし)魔導具が壊れる(パウリ効果の)シリュウさんじゃあできないことだからね。助かる。


 と、思ってる間に念写が完了した。



「じゃあ、拘束外しますね。もし、変なことしたら金属の内側を針だらけにするので、…動かないでくださいね?」

「っ…。」コクン…


 大人しくなった凡骨さんを解放して、冒険者達は拠点の町に帰っていった。



 さーて、とりあえず乗りきったな。


 …ふぅ。緊張した…。


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