10話 戦闘が終わって色々
伐採作業とか仕事は全部放置して、道具と角兎の死体3つを回収し、警戒しながら村に戻る。
怪我した人は、サポート役が要るけど一応皆歩けてる。
いいねぇ、魔力持ちは回復力が違って。
脇腹の怪我が治ったばかりの男を軽く支えてるレイさん。
めっちゃ、こっち見てる…。
何て説明したもんかなぁ、このまま無視してくんないかな。
鉄魔法っぽいことはスティちゃんにしか見せて来なかったからねぇ。そんな奴があんな風に動いたら怪しさの塊だよねぇ…。
ハロルドさんはスティちゃんを放置した私に怒鳴ってきたけど、私の説明とレイさんの取り成しで引き下がってくれた。
ま、言ってることは理解出来るけどね。
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そのままなんとか村に到着。村の方は特に異常は無さそう。
食堂に入るとハロルドさんが鉄の箱に驚き、声をかけてもスティちゃんが出て来ず私に喚き散らし、私も「熱中症で倒れた!?」とパニックになった。
まあ、スティちゃんは、私が箱をちゃんとノックして合言葉言ったら、出てきてくれたけど。
勉強の時に人を操る魔物の話と本人確認の大切さを教えて、それをちゃんと実行したのは偉い。
でもあなたのお父さんが面倒臭いからほどほどで頼むね…。
あ、あともう1つの箱に入れた連絡役の若者は熱中症二歩手前くらいになってた。無理矢理突っ込んだから出れなかったのね。
めんごめんご。
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他の角兎が居ないか山の捜索、遠距離通信の魔導具を使っての領主への今回の出来事の報告・周辺状況の聞き込み、作業員達の休養と村での見回り・警戒等々、やることは多い。
そんな中!!
役立たずの私は食堂の横で、お風呂タイムである!!!
もう鉄魔法(っぽいもの)は皆に見られてるし自重しないことにした。
近くの小川から何杯も何杯も水を汲んで、グネグネの鉄パイプに溜めて太陽光で温める。オール鉄製の浴室ユニットに繋いでお湯を張る。
いやぁ、日差しがあって予想外に熱いね!冷めるまで待機だよ!
浴室に扉は無い。私の操作でいちいち穴を開ける仕組みである。天井に灯り取りの隙間はあるけど。
覗きは許さないし、私の裸なんか見せる訳に行かないからね。スティちゃんすら一緒じゃない。
靴や服は脱衣スペースに鉄箱で包んで固定、腕輪は念のために再装着しておく。髪留め、自作してある石鹸もどき(液状)の入れ物を持って浴室に入る。
「はふう…。」
いやぁ、元日本人には風呂無しとかやってらんねぇっすわぁ…。
お湯節約のための小さい浴槽に、三角座りで肩まで浸かる。髪は髪留めで束ねてるから問題無い。
ふへぇ…。気持ちいい…。
全くもっていつぶりだろ…?
セラティーさんのところではお湯貰っての湯浴みだったし、その前は天気の良い日が無くて水ばっかりだったからなぁ。そもそも腕輪の中身を切らして浴室形成とか無理だったっけ。
今この浴室や鉄パイプは、スティちゃんのシェルター箱とか戦いで無事な部分を集めてまとめて再形成してる。今敵が来ても武器は出せない。
代わりにこの浴室に近づけば針千本&熱湯をお見舞いできるけど。
「アクア、いつもありがとうね。」
私は隣のバケツ風呂にぷかぷか浮いてる相棒に声をかける。
青い2本の触手で丸を形作る、不思議生物。
私の礼に応えてる? それともお湯の温度が良い感じなのかな?
私に魔力あれば、意思伝達が出来るのになぁ。
アクアは、相棒って言うより私にとっては神様だ。
正確には、親友から預かってる従魔…が一番近い表現かな。
見た目は、鉄の巻き貝を背負ったスライムである。青くて半透明なぷるぷるボディ。普段は貝殻に閉じ籠って寝てて、その殻を私は腰に付けている。
この方は水魔法が使え、私がお願いすれば美味しい水を生成してくれる。私はいつもその水を鉄水筒に入れて旅してる。
そこらの生水飲んで腹を下す私には必要不可欠、救済のメシアである。アクア様を崇めよ!
え? 風呂の水も出して貰えば良かったって?
貴重な美味しい飲み水を!私ごときの清めに使う訳ねぇだろ!!
…。精神統一、精神統一…
…ダメだな。いつも以上に思考がとっ散らかってバグってる。
この後色々聞かれるんだろうなー!
私の戦闘時の動きのおかしさとか! なんで角兎の毛皮をただの鉄で貫けたのかとか! とか!
「はあ…、お湯、足そ。」
パイプ接続蛇口を操作して、解放──
「…あっつい!!!」