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1話 迷子の私

レビューを投稿した作品の作者様達に、反応をしていただけたことが嬉しくて、調子に乗って長年の妄想を形にしてしまいました。


どこまで出力できるか謎ですが、無理しない範囲でゆるゆるやっていきます。

「…はあ、…迷ったかな。」



 目的の村は近いはず。

 なのに道が完全に途切れている。


 空を見上げると、太陽の位置はお昼時だと告げていた。



 とりあえず、水でも飲むか。

 水筒に手を伸ばし、蓋をコップ代わりに水を(そそ)ぐ。



「はあ…、水、美味(おい)し…。」こくりこくり…


 こういう時はまず状況を整理して考えよう。



 私はテイラ。冒険者もどきの…旅人?


 今いるのはそこそこの高さ──2000メートルくらい??──の山。その中腹くらい。の、はず…。



 家に泊めてくれた方への恩返しで、この山に()る村に手紙を届ける、クエスト的な真っ最中。


 麓の無人中継所みたいなところで一晩休んで、そこから上に向かう道があったから辿(たど)ってきた。分かれ道もなく迷わず進めたから早々に辿り着けると思っていたのだが。

 何故か道が消えて草木が生い茂るところにぶつかった。周りに建物も何もなく、草を()き分け無理やり進んでみたが道らしきものは全く見つけられなかった。


 う~ん。やはり迷っているか、これは。 



 可能性としては…


 1。道は一本道だったはずだけど、単に脇道を見落とした。


 2。入る(いりぐち)が間違ってた。


 3。実は来る山を間違えてた。


 4。植物を操る魔法で道が寸断された!


 5。実はその村は幻術で守られていて魔法で突破しないといけない!


 無いわ! 材木の切り出し用の作業村でしょう! 魔法が使えない私に対する嫌がらせがこんなところにあって(たま)るか!!




 …。


 精神統一…、精神統一…。明鏡止水の心…。



 …んー、流石に目的の山はここで合ってるし、脇道もきっちり見てたはず。なら入るところ、間違えてたんだろうな。

 あの中継所とセットのこの道、昔は使っていたけど今は使ってないとか。有り得るかぁ…。



「戻って別の入り口探す、かぁ…? でも、けっこう登ってきたんだし、ここから下りるのは嫌だなぁ…。」


 せめて、高いところから見渡せば村っぽいもの見えないかな?

 いや、高所恐怖症の私だ。ビビって落ちて怪我すれば割りとアウト。リアルに死ぬ。動けなくなったら餓死するって意味で。


 食料なんてほとんど持ってないからね~。

 あっはっはっはっ…。


 はあ…。

 ダメだ、ネガティブな思考ばかりになってる。


 こう言う時はとりあえず、体を動かそう。



「山の南側に村はあるって言ってた。それは確実。木を伐採する村なんだし、材木を運び出す運搬道もあるはず。

 …。下りながら何か見えないか探すか。手紙はちゃんと届けよう。頑張ろう、私。」





 ────────────





「これは、当たりでしょう!」


 目の前に村らしきものが見える。あれから多分2時間くらい。


 道を下りてる途中、茂みの向こうに岩場を見つけて周りを見渡したら西の方の斜面に煙が見えた。


 多分誰かが火を()いてる! 最悪でも人に会えればなんとかなる! と慎重に突撃してみた。

 いやぁ、良かった! 特に大型の動物に出会うこともなかったし。


 木の建物がいくつか並び、奥には煙も見える。普通に人が住んでる所だね!



「時間的には一泊するべきだけど、男が数十人の村らしいし、余所者(よそもの)の女はなぁ…。どっかその辺りで野宿するくらいに想定しておこう。」



 まずは誰か見つけて、手紙を渡す人を探そう。


 獣避けの柵を迂回して、入り口らしきところから村の中に入る。

 人の姿は見えない。門番的なのも居ないらしい。


 煙のところ目指すか。この時間だし晩御飯の用意をしてるんだと思うけど。



「すみません、誰か居ませんか~。」


 ややあって建物から人が顔を出す。



「ああん?」


「!?

 ──この村に着任してるハロルドさんに手紙を持ってきました!テイラと言います!ハロルドさんはどちらにいらっしゃるでしょうか!」


 挨拶は基本! きちっとお辞儀をして頭を下げる!


 出てきたのが食堂のおばちゃんって感じではなく、山賊顔の厳ついおっさんだったからビビった訳じゃない!



「…あの野郎に手紙?あんたが?」

「はい!ハロルドさんの姉の、セラティーさんに頼まれました!ついでにハロルドさんが連れて来てる娘さんの様子も見てあげて欲しいと言われてます!これがその手紙です!」


 腰のポーチから手紙を取り出して見せる。

 山賊顔さんは怪訝(けげん)な顔をしつつも、建物の奥に向かって声をかける。



「おい嬢ちゃん! おめぇに客だ。こっち来い!」

「は、はい!」


 山賊顔はそのまま建物に戻っていき、代わりにパタパタと女の子が出てきた。

 10歳くらいの、綺麗な濃い藍色の髪をしてる。



「あなたがスティちゃん?」

「…、そうです。」

「私、セラティーさんからあなたのお父さんへの手紙を預かってるの。」

「セラ伯母さん?」


 お、表情が柔らかくなった。少しは信用してくれたかな?

 私は手紙を手渡そうとする。



「お父さんはあと少しで帰って来るので、直接渡してあげて、ください。私、まだご飯のお手伝い残ってるので。

 中にどうぞ、えっと…──」

「あ、テイラって言います。失礼します!」


 そうして、食堂でハロルドさんを待つ間、ひたすら薪を割るお手伝いをすることになるのだった。

 薪割りの仕方、習っておいて良かったね…。



「山を歩き回ってからの薪割り、とか…。健康的、だなぁ…。」ふぅ…


S級冒険者(仮)さんに会う前の話になります。

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