こういう時こそ愛が欲しい
明日は休み。
だから今日の仕事が終われば、大好きな彼の家にお泊りの予定。
一週間ぶりに会える。
喜びで舞い上がる気持ちを必死で抑え、業務開始。
なのに、ミスの連発。
上司にも同僚にも迷惑をかけ、謝罪の嵐。
「覚えたての業務だからね。失敗して覚えていけばいいよ」
「私なんてもっと派手なミスしたことあるから、大丈夫!」
完全に浮かれすぎていたと反省する私に、声をかけてくれる。
その優しさが身に染みて、緩みかける涙腺。
最近は恋愛も仕事も上手くいっていただけに、心に与えられたダメージは大きい。
完全に落ち込んだまま業務を終え、彼の最寄り駅まで向かう電車に乗り込む。
ほどほどに混んでいる車両のドアにもたれかかり、ため息を一つ。
外を眺めれば、夜にだけ見られる色とりどりの輝き。
今の私には眩しく感じる。
鞄からスマホを取り出し、電車に乗ったことを報告した。
早く会って抱きしめてもらいたい。
何も言わなくていいから。
いつもより少しだけ力を込めて、ただただ抱きしめて欲しい。
駅まで車で迎えに来てくれるときは、いつもコンビニの駐車場で待っていてくれる。
見慣れた車を見つけ、駆け寄った。
助手席側から覗き込むと、スマホを触っていた彼が私に気付き、優しく微笑んでくれた。
大好き。
一瞬でそう思えるほど愛おしい彼の隣へ乗り込む。
「お待たせ」
「お疲れさん」
座って洋服を整え、落ち着ける体勢になると、ふっと笑う声がした。
その声の方を見ると、ハンドルに両腕を乗せ、また優しく微笑んでいる彼と目が合った。
つられて私も微笑む。
その微笑みの理由も知りたいけど、今はいい。
ただただ抱きしめて欲しいから。
微笑みと一緒に私を包み込んで欲しい。
言葉で言うより先に、彼の首元に腕を伸ばした。
「どうしたんだよ」と笑って言いながら、背中にしっかりと腕を回し、受け止めてくれている。
それだけで、今日一日取り除けなかった胸のつかえが下りていった気がした。
「すっごく会いたかった」
「俺も」
会えなかった間の出来事をたくさん聞きたい。たくさん話したい。
でも、もう少しだけ。
あともう少しだけ、こうしていたい。