過去
「ルーク……本当にこれ全部食べるの?」
用意された料理は屋敷にいる人、全員で食べても食い切れないほど山の様に料理が並んでいる。
「あぁ……ちょっと足りないくらいかもだけど……
でもありがたく頂くよ」
と言い俺達は皆んなで料理を食べた。
黙々と料理を口に運ぶ俺を見て、全員唖然としていた。
早く食べているわけではない、綺麗にそしてゆっくりとナイフで料理を切り分け口に運んでゆくのだが、全く手が止まらない。
気づくと山の様にあった料理は綺麗に無くなっていた。
「久しぶりに美味しい物食えて嬉しかったよ
ありがとう……お陰で腹8分目くらいにはなったかな」
俺は食事を終え、一息ついた。
「ねぇルーク今どこに住んでるの?」
アリスはそんな俺を見て質問してきた。
「どこっていうか……家みたいな場所はあったけど気づいたらボロボロでさ……家族も皆いないし……まぁ浮浪者ってやつだな」
すると彼女は少し考え込む。
「んーもしよかったらでいいんだけど私の家に住む?」
と思ってもない申し出に俺は驚く。
「いや……まぁ俺としてはありがたいんだけど……いいのか?」
「その代わりにお願いしたいことがあるんだけど……
私の守護者として一緒に学校に通ってくれないかな?」
《守護者》とは貴族が学校に通っている間、その貴族のパートナーとして一緒に学園内で行動し、パートナーを護衛する役目を持った生徒のことだ。
主に貴族に使える平民の実力者が守護者として仕える。
確かに俺は一応500年を引けば、19歳な訳だから学園に通ってもなんら問題はないはずだ。
「そんなことでいいなら協力させてもらうよ」
「じゃあ編入手続きはこっちでするから来週からお願いね」
と言い彼女は部屋へ戻っていったので俺も、用意してもらった部屋へと戻る。
少し時間が経ち、屋敷の人間全てが寝静まった頃、玄関が開いた音がした。
起きていた俺は警戒し玄関へと向かう、すると外にアリスの姿があった。
アリスは外のベンチに座っていて、その眼からは涙が出ていた。
両親が目の前で死んだのだ。
それを周りに心配をかけまいと気丈に振舞っていたのだろう。
「今はそっとしておこう……」
俺はベットに寝転び、寝ることにした。
その日俺は夢を見た。
500年前、大規模な魔獣討伐の戦闘で俺は前線で戦っていた。
あらゆる魔法を駆使して戦い、魔獣の巣の中で次々と魔獣を消してゆく。
「アルク!!レイ!!無事か!?」
返事が聞こえない。
王の命令で先に討伐へ向かっていたはずの俺の仲間の二人が魔獣の巣で行方がわからなくなっていた。
俺は急いで魔獣の巣に入り二人を探す。
しかしそこには魔獣に喰われて、ただの肉片となってしまったアルクとレイがそこにいた。
アルクの鎧とレイの剣がその場に落ちていたので俺はそう理解した。
魔獣とは違う人間の悲痛な叫びが魔獣の巣に響き渡る。
その後、魔獣を皆殺しにした俺は王の元へ帰った。
「そうか!!あの魔獣の巣を潰したか
よくやったぞルーク
それでこそ我が七王剣だ」
「しかし先に向かった私の二人の仲間は死んでしまいました
彼らのおかげで俺は魔獣の巣を滅ぼすことができました」
そう王に報告した。
「知っておるぞ
予言眼で見ておったからな
あの二人は死ぬのはわかっていたことだ」
王は当たり前かの様にそう言った。
「どういうことですか……!?
あの二人が死ぬのを知っていて王は彼らに魔獣の巣へ向かう様に命じたのですか!?」
王には代々先見の力が備わっており、未来を見ることができるのだ。
「所詮捨て駒じゃ……気にするな
今度我が別のもっと優秀な仲間を連れてきてやろう
どうじゃ我は優しいじゃろう?」
「捨て駒……ですか……」
俺はその場で立ち上がる。
これで20人目だ……20人も王の勝手な命令で仲間が死んだ。
すると周りにいた他の七王剣や兵士達が魔法や鉄の鎖などで俺を拘束する。
「ルーク!!お前何をしようとしているかわかっているのか!?
気持ちはわかるが……我慢しろ」
同じ七王剣の一人アビスが俺を宥める。
「我慢だと……?
一体この1年でどれだけの仲間を殺されたと思っている……
もうここで終わらせるしか無いだろうが!!」
王に対する殺意が最高潮に高まった瞬間、俺の体を縛っていた鎖や魔法が消滅した。
この時の俺はまだ知らなかったのだがそれが『見境のない暴食』による力だったのだ。
あらゆる妨害魔法や肉壁となった兵士を全て破壊して、その日ルークは王を喰らった。