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囚人番号:0000番 王殺しの勇者  作者: ラグニート
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王殺しのルーク

『王殺しのルーク』


帝都ガルムの監獄の地下の一番奥に幽閉された男ルーク・ヴァレンタイン懲役500年、罪状は『王殺し』

懲役500年となっているが、そこまで寿命は長くないので終身刑と同じ様なものだ。


しかし誰かが王を殺るしか無かった、そうしなくてはまた死者が増える。

その結果、俺はここにいる。


「裏切られるのには慣れてはいるが……

 流石に500年はな……ここに来てまだ7日か……」

と俺は牢屋に用意された食料7日分が底をついた事で経過日数を想像していた。


「そろそろ次の食料が転送されてくるはずなんだが……」

部屋の中からは外の様子は見ることが出来ず、こちらから外にいる看守に声も届かない。

それ程までに頑丈な牢屋に入れられていた。

当然扉は幾重にも魔術刻印が記されている。


すると何故かその魔術刻印入りの重い鉄扉がゆっくりと音立てて外に開いてゆく。


「なにも扉を開ける必要は無いだろ……

 食料を部屋に転送してくれさえすればいいんだから」


と俺は扉の外にいるであろう新人看守に声をかけるが応答しない。

不思議に思い外を覗き込むも誰もおらず、地下の通路も風化して屋根が落ち、上から光が差し込んでいる。


「誰もいない?何が起きてるんだ?」


敵国の襲撃だろうか……

帝都ガルムは付近の4つの国と仲が悪く、いつ襲撃を受けてもおかしくない状況だ。


俺は急いで外に出て辺りを見渡すが、監獄は7日前とは思えないほどボロボロになっていた。


監獄は帝都から離れた森に設置されており、とりあえず俺は囚人なのだが一応報告の為、帝都へ向かう。


「よーく考えたら囚人が報告って……帝都の入り口で捕まるだけなんじゃ……」


その瞬間、近くで女の人の叫び声が聞こえた。

俺は急いで声のする方へ向かう。

すると森の道で大勢の人が死に絶え、辺りは血の海となっていた。

旅でもしていたのだろうか……護衛付きの20人が食い散らかされた後だった。


「魔獣……か」

恐らくこの人達は魔獣に喰われたのだろう。

するとまだ息のあった身なりの綺麗な男が俺の足を掴む。


「頼む……娘が……帝都に行って助けを呼んでくれ……」

と言って男は息を引き取った。

「娘って言っても……」

周りにいる人間は全て食い散らかされた後だ。

女か男かもわからない、あるのは肉片のみだ。


俺が死体を確認していると背後に濃い血の匂いがする……

「なるほど……最初から誘き寄せるつもりだったのか」

よほど頭の回る魔獣なのだろう。

「グルルルル……」

一体の魔獣が背後から襲ってくる。

それを俺は間一髪で躱す。


「人型か……しかも成獣と見えるな」


魔獣の中でも幼獣、成獣、老獣とあるが、3メートル以上あるこのサイズは成獣だろう。

魔獣は群れで5体はいる。

そしてその一体の人型魔獣の右手には先程の男の娘であろう女の人が手に握られていた。


「に……逃げて……」


彼女はかろうじて息があるようだ。

次の瞬間、魔獣達は一斉に俺に襲いかかる。

グジュグジュと肉を齧り血を啜り、バキボキと骨を噛み砕く音が聞こえる。



しかし喰われていたのは魔獣の方だった。

骨すら残らず……魔獣達はそこから姿を消した。



「7日間も食べてなかったからな空腹だぞ……こいつは」



『見境ない暴食』、触れたもの全てを喰らい尽くす力。

この能力は固体、液体、そして気体に至る全てを喰らう。


今回は7日ぶりの能力使用の為、かなり空腹のようだ。


「黒い髪……赤い目……全てを喰らう暴食の力……」



彼女は俺を見てそう呟く。

残る魔獣は娘を掴んだ一体のみ、そしてその一体も逃さず喰らう。

俺の手に触れた先から魔獣の肉が削られ、血も吸われてゆく、そして魔獣の全てを喰らい尽くす。



「貴方は一体……」

俺は彼女を持ち上げ帝都へ向かう。



「俺は……」

本名を名乗っても良いのだろうか……

王殺しの罪で名前が帝都中に知られている筈だが

彼女は幸い俺の顔は知らない様だった。



「俺の名前はルーク……ルーク・ブラッズだ

 よろしく頼む」

名前を少しだけ誤魔化すが彼女は気づく様子はない。

「わかったわルーク……助けてくれてありがと……う」

と感謝した後、彼女は気を失った。


俺は彼女を背負って、帝都の入り口まで来た。

「捕まっても仕方がないな……

 こいつをこのまま置いていく訳にもいかないからな…」

俺は辺りを警戒して立っている門番に声を掛けた。


「いきなりですまないが

 彼女の家族が東の森で魔獣に喰われてしまったみたいなんだ……彼女の家がある所を教えてくれないか?」


普通他人の家など知らないだろうが、彼女の胸には貴族の証である紋章がついていた。

恐らく名のある名家なのだろう。


だか問題はそれを運んできたのが、囚人である俺という点だ。

しかし予想に反して門番は俺に気づくことなく、彼女の紋章を見て気づいて驚く。



「リーヴァル家の!!それでは彼女の父親は?」

という門番の問いに俺は無言で首を横に振る。



門番は兵士を集め俺に地図を渡した後、森へ向かって行った。

俺は地図を頼りに彼女を家まで連れて行く……が。

「なんだこれは……」

地図が全くわからない。

どころか街の全ての配置が変わっていた。

「たった7日で一体何が起こっているんだ?」


俺はとりあえず人通りの少ない道を使って知らない地図を読み取り時間をかけて彼女の家に到着した。


「でかいな……しかしこのリーヴァル家一体いつできた貴族なんだ……」


俺はとりあえず門の前で掃除をしていたメイドに「家に入れてくれないか?」と尋ねる。

怪訝な顔をして断ろうとしたメイドだったが俺の背中にいる彼女を見て慌てる。


「アリス様!!」


メイドは急いで門を開けて俺を家の中に案内する。

そして彼女を寝かせて、俺は使用人達に事情を説明した。

俺は部屋に案内され、彼女が起きるまで泊まって行くこととなった。


「暇だ……本でも読むか」

あれから2時間この部屋のベットで転んでいた俺は、部屋にあった本を一冊手に取る。

見たこともない本だった。



『王殺しの勇者』

暴走した王を止める為、犠牲になった勇者の話と書いてある。


その瞬間後ろのドアが開き中に、気を失っていた彼女が現れた。

「傷はもういいのか?」

と聞くと彼女は頷き、神妙な顔をして近づいてくる。



「その本の主人公の名前は『ルーク・ヴァレンタイン』」



唐突に語り始めた彼女に俺は、警戒を強めた。

「そうか気づいていたのか……しかしたった7日で本の主人公として書いてもらえるとはな……光栄だよ」



俺はそう言うと彼女は不思議そうな顔をする。

「何を言ってるの?『ルーク・ヴァレンタイン』は貴方のご先祖様でしょ?」



その時、本に書かれた500年前という意味を俺はようやく理解した。

「500年……経ったという事なのか……」

それで全ての謎に説明がつく。



「私この本を子供の頃に読んだ時すごく悲しい気持ちになったの……皆の為にたった一人犠牲になった彼の物語を見て……でも彼は生きていたんだね……

そして子孫である貴方が彼の罪を受け継いだ」



そう語る彼女に俺は頷いておいた。

そういうことにしておこう。


『ルーク・ヴァレンタイン』としての人生は終わったのだ。

新たに『ルーク・ブラッズ』として一から始めよう。


「ありがとうルーク……

 貴方がいなければリーヴァル家は途絶えていました

 リーヴァル家を代表して感謝致します」



彼女は先程までと違い恭しく、優雅にお辞儀をする。

お辞儀をし終わると先程の彼女に戻った。



「何か欲しい物とかない?

 命の恩人なんだから遠慮しないで言ってね」



と言うので俺は「今この屋敷で用意できる全ての食材を使って料理を作ってくれ」と頼んだ。


閲覧ありがとうございました。

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