愛という“毒“
他のかたの作品巡りをしているときにかきたくなりました。
よろしくお願いします!
感想で名前があった方がわかりやすいかもと言うアドバイスをもらい少し修正しました。
内容は変わらないので楽しんでいただけると嬉しいです♪
あぁ……これは夢なのだろう
アセシナは、目の前にある死体を見つめる。
それは、生気を感じない男性の身体だ。
その死に顔は、優しげに微笑んでいた。
みたくない映像が目の前に拡がっている。
男性の身体から流れる赤い液体に触れてもやっぱり温もりもなにも感じない。
それが夢だとわかっていても、罪悪感が全身を攻め立てる。
“なぜ、殺したのか“と攻め立てる。
ズキリ
それが、夢だと物語っているのに、胸が痛い。
わかってる。胸が痛む感情の正体を……
夢から覚めようと目をつぶった。
外の雨の音にふと目が覚めた。
アセシナは、ため息をついた。
あの夢を思いだし胸が締め付けられる。
彼との出会いは、仕組まれたことだった。もともと私の目的は彼をうまく利用した後不自然では、ないように細工し暗殺すること。
今まで何度もそうして、数えきれないほどの命を奪った私にはあまりにもこの感情は贅沢すぎる。
頬を濡らす雫を拭き取る。
逃げられない。
だから、もう逃げない。
私が、この任務を放棄すれば、きっと他の者に暗殺命令が指示される。
彼に初めて出会った日から、彼と見た綺麗な夜空、眩しいほどの思い出、彼の優しい眼差しや暖かな温もりの数々が徐々に私を“冷酷な暗殺者“から、“人“へと蝕んでいった。
-誰かに殺されるくらいなら、私の手で全て終わらせよう。-
目をつぶる。
始めて知る感情の数々は、戸惑いが大きく、彼はその度に“かわいい“なんて私には似合わない言葉をいって私を動揺させた。
今つけている服だって、昔の私ならきっと着ないだろう。
準備を整えて、彼が待つ約束の場所へと向かう。
約束の場所に行くと、彼が待っていた。
私を見つけると、優しい笑顔で出迎えてくれた。
彼と、街で買い物を楽しむ。
その後、彼の“お気に入りの場所“へと人混みから離れた所へと案内された。
そこには、何千年も歳を重ねた桜の大樹が綺麗に立っていた。
「綺麗……」
自然と声がでた。
ふと彼が私の手を握った。
そして、私だけ聞こえる声でつげた。
「ねぇ、逃げようか?」
私は、彼を見つめる。
彼の表情は真剣だ。
「いつから知っていたの?」
彼は、少し困った顔をした。
「薄々はね……でも、これしか本当に方法がないのかな?」
私は、少ししてコクンと頷いた。
組織で逃げたもの達の暗殺もしたことがあった。
逃げきるのに、成功したものは誰もいなかった。
1人に対し無情な人数の暗殺者が割り当てられるからだ。
それに私も、もう、暗殺対象に入るのだろう……
「そっか」
彼は、切なげに笑った。
「いいよ」
いつものように優しい眼差しで見つめられる。
目頭が熱くなる。
「……」
私は、用意した、武器を震えながら彼に向けた。
それでも、彼は逃げようとしない。
彼が、私に向けて口だけを動かし何かを伝えた。
その意味に鼓動がはやくなる。
それを必死に押さえて、ついに、彼めがけて引き金を引いた。
私につけられた、監視人が、彼の死を確認した。
私はその作業をただ見つめた。
「任務完了だ。裏切り者の汚名が晴らされた。おめでとう」
そういって監視人は姿を消した。
私は、彼の温もりが残ったそれにそっと触れた。
最後の彼の言葉に答えた。
「私も……だから、許してね。ごめんなさい」
彼にキスで薬を飲ませた。そして、盗んだデータを彼のポケットに隠した。
どこか遠くから足音が聞こえた。
私は、その場から少し離れた。
バンッ
乾いた音が辺りに響いて、1つの命が終わりをつげた。
その後、無数の足音だけが響いた。
男が目を覚ましたら、仲間がいる病室にいた。
話を聞くと、私はどうやら薬物で心肺が一時停止していたらしい。
男は、確かに撃たれたとあの時思った。
でも、……
何かの血で汚れている目の前の自分の服を見る。
匂いまでも本物そっくりだ。
でも、男の体には打撲や軽い骨折により見た目が痛々しいが目立った出血はなかった。
男は、アセシナに殺されなかった。
仲間に男と一緒にいたはずの“アセシナ“について聞いた。
仲間は、男を助けた恩人だと言った。
でも、もう会うことはないと……
アセシナは、男を撃った後、私の通信機器から仲間に連絡していたようだ。
その後、アセシナは
「私は、もう、始末対象でしょうから、ばれる前に、後はお願いします」
と盗んだデータの場所を仲間にたくしたそうだ。
悔しくって涙がでた。
アセシナを救えなかった。
アセシナは、スパイだった。
はじめから気づいていた。
始めは、情報を引き出せるだけ引き出すつもりだった。
だけど、時々見せる子どもっぽさや大人びた姿にいつの間にかひかれていた。
いつかは、男を殺すとわかっていてもこの気持ちは正直だった。
だから、アセシナが男に刃を向けても逃げなかった。
アセシナに気持ちを伝えて満足していたのに……
「どうして、こんな結末しか選べなかったのか……」
手を強く握りしめる。
アセシナが私を撃つときに見せた、
涙を必死にこらえながらの笑顔の意味がわかった。
静かに声もなく泣いた。
“アセシナは、始めっからそうする気だったんだね。ひどい人だ“
アセシナとの思い出の品なんて持っていない。
アセシナが残したのは、血の匂いが残ったこの服だけ。
外は、まだ雨が降っている。
あの日から、男はアセシナが残したデータを使ってアセシナの組織を崩壊させ消し去った。
アセシナ個人のデータを探したがどこにも見つからなかった。
そして、長い長い戦いが幕を閉じた。
戦いの後の安堵と復興への兆しで世界は明るかった。
男は、今もアセシナの影にとらわれている。
アセシナが残した思い出が、今も昨日のことのように鮮やかで、まるで今見ている世界が夢のように思えるくらい。
もし、男が次にアセシナに出会うことがあれば、迷わずアセシナを離さないだろう。
男は、アセシナの生きた証を残すため前へと一歩踏み出した。
男は、国に平和をもたらした英雄として称えられた。
それだけに、生涯誰とも結婚せず子どもを作らなかったことに民衆は残念がった。
男は、かつての仲間にこう呟いたという。
「私の心は、とっくの昔にある人に奪われたままなんだ。その人は私にとって掛け替えのない人だ。世界を救った英雄だよ。その人のために結婚はしない。何処かで、待ってるかもしれないから……」
その男の表情は、何かを思いだし懐かしんでいるようで何かを切望しているようだった。
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(ハッピーエンドのストーリー制作中)
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