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『まさかこんな日がこようとは、誰が想像していたか?』の回



『まさかこんな日がこようとは、誰が想像していたか?』の回



前回までの 24トゥエンティフォーあらすじ


ざっくり色々すっ飛ばして話そう。まさかの弓月さんが僕のアパートに遊びにくるっていうことになったんだ。良いでしょ、へっへーん。や、こんなことをしているヒマはないっっ。くそうっ24時間以内に部屋を片付けなければっっ‼︎



✳︎✳︎✳︎




まさか、こんなことがあるのかと、信じられない気持ちだ。けれど、なにかあるごとに神に祈ってきて、心底良かったなって思う。


富士登山以来、色々と残念な目にあっている僕の身の上を、神さまは可哀想と思って(実際は危なっかしくて見てらんないって思われている)、きっと見守ってくれていたんだな。


弓月さんが、僕のアパートに遊びに来てくれる、という奇跡。奇跡と名のつくものは今までにたくさんあったが、これが一番サイコーーーにエモーーーーイ‼︎ ひゃっほい‼︎ (※ ただし厳密に言えば、僕ではなく僕の新聞紙に会いにくる)


「なんだとっっ、弓月くんがキサマのあ、あ、あ、あ、アパートにだとっっっっ」


すみっこパイセンがひっくり返るほどのけぞっている。


「いやあ、なんだか僕も信じられなくてですね。奇跡を見ているようですよ、これはもうモーゼの、海よ割れろ級の超奇跡ビッグミラクルですよね」


「……ぼ、僕もお邪魔しようかな」


すみっこパイセンが急につつましくなって、そんなことを言うもんだから、僕は、はは、ちょ待ってくださいよ、勘弁してくださいよー、そんなのダメに決まっているじゃないですかあ、と言いたくなるが、この話し方だと逆にすみっこパイセンの逆鱗を買って、食い下がられる可能性があるので、


「すみません……うちの定員、2名までなんですよ。最大積載量102キロなんです。大家さんがそこんところ、曲げてくれなくてねえ。実際、僕も困ってるんですよ」


いや、困ってない。


僕の部屋には、うっかり道を間違えて飛び込んできた G 以外、誰も来たことはないのだから。


「えええっぇ、長谷部、おまえそんなボロいところに住んでんのか? 定員が2名までだと⁉︎ それは本当かあ? 本当に本当なのかあ、真実まことなのかあ?」


G 以下の人が飛び込んできた。

実にねちっこい神田川先輩だ。


どこかから聞きつけたのか(いや嬉しすぎて大きな声で話してしまっていたのかもしれない反省)、神田川先輩は妙にいやしい目で見てくる。どうやら僕の言い訳は、見破られているようだ。(間違いない)


神田川先輩は、最初こそは下卑げびた顔を浮かべていたが、そのうち弓月さんが僕の家に遊びにくるということの「真の意味」に気づいたのか、そのうちに顔を真っ赤にして震えながらこう言った。


「せ、狭いアパートの一室に、だだだだだ男女2人っきりだなんて、イヤラシイ‼︎ 俺は絶対に許さんぞ‼︎ 」


父か。


だが、確かに弓月さんのお父様が、そんな状況は許さんっっっと言って怒鳴り込んでくる可能性は否定できない。僕は、心臓が潰れるのではないか、いや弓月さんのお父様のお言葉にボッコボコにされるのでは、というプレッシャーの中、慎重に言葉を選んで訊いた。


「ゆ、弓月さん。僕のアパートに来るっていうこと、ご、ご家族のかたはなんて?」


「うん、ほにゃらりの長谷部くんの家に遊びに行くって言ったら、お父さんがね……」


(ごくっ)

(大汗どばーだらだら)

(心臓どきどき)

(次第に青ざめていくさま)

(動悸息切れめまいに救心)




「長谷部なら、まあ良いだろうって」


「…………」



……まさかのお許し?


長谷部なら良し?


僕のことを知ってる?


調べはついている?


僕がチキンだと


……知っている?



「そ、そっか。それは良かった。……ほっとしたよ」


うそっ、僕、これ終わりじゃないの‼︎ 弓月さんのお父上に、銃口向けられてるよねこれ。

赤いレーザーみたいなので狙われてるよね絶対。


ドキドキと変な汗が止まらないが、とにかく僕は慌てて家へと帰り(周囲を警戒しながら)、部屋をピッカピカになるまで磨き上げた。


そして、約束の日。


僕は命の危険を感じながらも、チャイムの鳴ったドアを開けたんだ。


「こんにちは、長谷部くん。お邪魔します」


それは星。あるいは花。

僕の希望。僕の光。

太陽のように燦然と輝くキミ。

僕の、

女神。

花柄のワンピース姿、

キミは髪をあげた。

透き通るような白いうなじで、

僕を誘う。

ルルル




「長谷部、邪魔するぞ。あ、これ差し入れな。俺のお気に入りだ。いいか、渡すぞ。結構、重いからなっっ気をつけろよ、そらよっっ受け取れっっっ」


キミは誰だろう?

いったいキミは?

人の恋路を邪魔するのなら、

馬に蹴られてしまえ。

最大積載量102キロって言っただろ?

なんで差し入れでダンベルなんか持ってくるんだ?

ルルル




「長谷部くん、これハッピーターンとサーターアンダギー。ありがたく食してくれ」


ハッピーターンの袋が開けられている、

いったいどういうことだって、

僕は言いたいんだ。

だって、ハッピーターンはね、

袋を開けた瞬間から、

切なく湿気ってゆく。

しかもサーターアンダギーとのコラボ、

最高に口の中の唾液が持ってかれるヤツー

口の中パサパサになるヤツー

ルルル



そんなわけで、週末。

4人で仲良く新聞読みました。


めでたしめでたし。


さあ、ここで重大発表だ。

ここまで読んでくれた、温情あるみんなの前で、僕は宣言する‼︎



僕が新聞を一ヶ月契約する時、それは弓月さんにプロポーズする日だと‼︎



以上終わりっ


僕の回、終わるの早あぁっっっ‼︎


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― 新着の感想 ―
[良い点] 長谷部くんが読む『悲しいポエム』みたいなの大好物です。 [一言] さすが弓月さん。一筋縄ではいかない。大好きです。 あと神田川と林。少しは空気読めよ!!
[良い点] 最大積載量(笑) 長谷部くんの言い訳が面白すぎます。 私の体重が58㎏で二人は無理ですし、自動車の乗車定員は55㎏で計算するので、それでも無理とは、どんなボロアパートなんだっていう(笑)…
[一言] みなさん、気を遣うとか遠慮ということを一切しないんですね(--;
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