『僕が弓月さんとどうなるかっていうと、どうにもならないことについて相談に乗って』の回
『僕が弓月さんとどうなるかっていうと、どうにもならないことについて相談に乗って』の回
ついに僕の番が来た、と言えるだろう。
第1回、読サーの長にして、スポーツ万能、筋肉最高な神田川先輩。
第2回、性格に問題ありで、ちょっと根暗なすみっこぐらしの林先輩。
第3回第4回、僕の中では同級生アイドル、可愛うぃ弓月さん。
ときたら、もう僕しかいないだろう。(4人だけの愉快な仲間たち)
順番が回ってきた。
さあ、僕の話をしよう。
真面目に話すとだね。
僕は、弓月さんを愛している。
ま、待ってくれ、スルーはいいが、無視はかなりこたえる。
頼む。
ここは頼んでしまおう。
どうか、聞いてくれ、と。(真の土下座)
今回は、恋愛相談的な要素が入っている。
鳥肌が全身を駆け巡る?
うん、わかった。耐えてくれ。
キミをアイシテルーキミのことがスキダカラーっていう類は、もうやらないと、神に誓う。
だから、このまま僕の恋愛相談に乗って欲しい。
僕はもともと、とてもシャイボーイで、自分から告白したり、面と向かって好きだと伝えたりすることができない。
いつもというか常に『好きな人』はいるにはいるのだが(現在は弓月さんにドキュン)、心が通じ合って両思いになったことは今までに一度もなかった。当たり前だ。僕は決して、好きだと告白しない、できないからだ。
告白されたこと?
あるわけがない。
そして、これからも?
あるわけがない。
自分には自信がないが、これは自信を持って言える。
あるわけがない。(強い断定)
「でも、大丈夫。読サーの人で、彼氏彼女いるって人はいないっしょ」
おお、僕を憐れんでそう言ってくれる人よ、ありがとう。その優しさと残酷な○○のテーゼに感謝。
けれどね、実を言うとね、信じられないかもしれないけど、みんないるんだよ。
もれなく恋人っていう存在が。
『読書サークル研究会ほにゃらり』とは。
リア充。という名の、巣窟。
はっっ信じられないだろう?
非常に言いにくいし、言おうと思うと口がへの字に曲がってしまいそうだが、実は。
……恋人がいないのは、僕を筆頭に、……僕だけなんだ。(筆頭)
って、ええぇぇぇえーーーーー???? うっそーーーーってなるだろ?
あの読サーの面々が、リア充だと⁉︎ ってなるよね。うん、なるなる。キミは悪くなーい。
説明しよう。
まずは神田川先輩からだ。
神田川先輩は、地味にモテる。当たり前だ。スポーツ万能でイケメンだからな。高校の時は助っ人で甲子園に行ってるし、先日も謎のシックスパックで水泳大会の県代表になったのは、記憶に新しいだろう。
座布団の中に隠していた部費の封筒の件、もしかしたら本当に尻は外しているのかもしれない。神田川先輩の運動神経が半端な過ぎて、僕の中では今、先輩は座っている時、もしかしたら3センチくらい宙に浮いているかもとの疑いが生じている。
だって、神田川先輩は、指一本(親指)で腕立て伏せができる男なんだぜ? 指一本だなんて、普通だったら折れてしまうだろう? (小指なら折れている)
そんなことができるだなんて信じられるか?
座布団に座っていると見せかけて、常に宙に浮いているくらい、どうってことないのかもしれない。
あ、や、そんな話じゃなかったな。
そうそう。神田川先輩はね、実はたくさん告白されているようなんだ。バレンタインでは、チョコでヒノの2トンをいっぱいにしたって噂がある。いや、噂は無限に大きくなるから、本当は紙袋 2杯かもしれない。けれど、紙袋 2杯でも、ひとつも貰ったことのない僕からしてみれば、神の領域。
やはり座布団に尻はついていない。(導かれし真の法則)
女の子に告白されるだろ? で、オッケーして付き合う。けれど、一週間ほどで自然消滅。
一週間? 一週間って言ったら、7日しかないのに?
答えはYES。最初の二日、早くて初日に、その残念さを見破られるパターン。で、フェードアウトのパターン。
そんな短期間の自然消滅って、逆にすごくない? (それでも羨ましいが)
どんだけ短時間で見限られてるんだよって話なんだ。それはそれで酷だな。
とにかくそんなわけで、神田川先輩はその一瞬一瞬で、恋人がいることになるから、時間軸でいう『今』いるかと言えば、それは『不明』としか言いようがない。
そして、次にすみっこぐらし林先輩。すみっこパイセンはまあ、ちょっと『不明』ってことで。(また?)
だってね。
「長谷部くん、キミはどうして僕に対して恋人がどうとか彼女がどうとかそんなことを僕に対してだけ言ってきてなぜそんなことを訊く?」
と、まずおかしなことを言い出す。
そして。
「そんなプライベートなことを、なんでキサマに言わなければならないのだ」
「個人情報だぞっっ。詮索するんじゃない‼︎ 」
「いちいち答えなくとも僕がモテるってことはわかるだろう⁉︎」
「そういうセンシティブな話を二度とするなああぁぁっっっっっっ」
教えてくれないんだ。なんとなく答えは出ている気もするが、はっきりと彼女がいないとは明言してくれないんだ。だからいちおう『不明』ということで。(合掌)
それでまあ、次に弓月さんが出てくるわけだけど。
ぶっちゃけて言うと、弓月さんには恋人がいるんだ。
それも僕なんか、逆立ちしたって逆上がりしたって、勝てない彼氏だ。
弓月さんの相手は誰だって?
神田川先輩?
否
すみっこパイセン?
否
こんな茶番は必要ない?
そうだな。皆さんもう分かっていらっしゃる。
新聞紙だと?
もちろん、そうだ。
弓月さんの新聞紙への信頼は絶大だ。弓月さんは彼を尊敬の念をもって見つめている。彼は僕の最強のライバル。彼を超えなければ、弓月さんと並んで歩くに足る男になれないんだ。
僕にできるか。できる‼︎ と言いたいができない。
あの膨大な情報量に太刀打ちできるのか。あの変幻自在な利便性を超越することができるのか。
僕のスパコン富嶽を持ってしても、答えはNOだ。
僕に新聞紙を超える自信など、これっぽっちもない。
どんと落ち込んだ。(もう何回目だろう。途中数えるのを断念。僕はそれくらい情けない男だ)
勇気を出して訊いてみたことがある。
「ゆ、弓月さんって、かかかかかかrしいrんlれの?」
「え? 彼氏?(←解析)やだあ、長谷部くん。私に彼氏なんているわけないじゃない。こんな私じゃ、お嫁になんていけないよ」
えへへと苦笑いする弓月さん。どういうことだ、弓月さんがお嫁にいけないわけがないっっ‼︎
きっと、弓月さんは新聞紙をこよなく愛するがために、その溺愛ぶりを自分でもちょっとおかしいと感じているんじゃないかな。薄々だとは思うけど。いや、気持ちはわかるよ。
僕も、そこまでえぇ?? そこまでなのぉ?? って思うことがあるから。
でも弓月さん! 安心してくれ! 僕にだって、新聞を契約することができたんだぞ‼︎ (←?)
「え、うそ、長谷部くん。新聞、契約したんだ?」
「うん。でも情けないことに、毎日取ることはできなかった。月々3000円近く支払うのは、苦学生の僕には難しくてね。だから、週末だけ取ったんだ」
「そんなことできるの?」
「ああ。できる。だけど土日だけの契約だなんてね。不甲斐ないにもほどがある」
「そんなっっ‼︎ 長谷部くんは不甲斐なくなんてないよっっっ。契約は契約だし、契約として1件は1件でカウントだものっっ」
N○Kの集金の人みたいなこと言ってるけど、僕はその言葉でほっと安堵したのを覚えている。
「ありがとう、弓月さん。もし、手持ちの新聞紙が足りなくなるようなことがあったら、僕に言ってね。すぐに脇に抱えて、かけつけるから」
ってね。
なぜかカッコつけてこういうことはスルスルっと言えるんだよー。でも、面と向かって好き、とか付き合って、とかは言えないんだよー。
なんでなん?
すると弓月さんが、とんでもないことを言い始めた。なんかモジモジしているように見える。
「は、長谷部くん、その……も、もし良かったら週末、新聞読みに行ってもいい?」
え!
空耳かな。
「…………ち、地方紙だよ……?」
「全然っ、全然だよっ、私結構、地域のお出かけ&お得情報欄見てるよっっ」
人生の転機が訪れようとしている。
以上終わり、いや、次回へ続く