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愛と復讐のビギニング

 商業都市ベルセリアに到着したセイヤたちは、町の検問でひと悶着あった。

 

「だーかーら! イメチェンだってイメチェン!」

「イメチェンって……肌も目も髪も色変えて、どうなってんだよ」

「傭兵は廃業して炭鉱夫や鉱山開発するからだって。なめられねぇためには外見でブルッちまうくらいかっけぇのがいいだろ?」

「意味わからん……」


 検問所の兵士(バニッシュの馴染み)が、姿の変わったバニッシュたちを見て訝しんだのだ。

 さすがに、こればかりはどうしようもない。

 だが、口八丁のバニッシュがなんとかした。そして、ようやく街中へ。

 セイヤの隣を歩くヴェンがため息を吐く。


「はぁ~……まさかみんな死んでで、あたしの魔法で動いてるなんてバレたらヤバいよね」

「かもな。でも、バニッシュさんのおかげで助かったよ」


 そう言うと、バニッシュがセイヤと肩を組む。


「さ、オレらのアジト行って話を詰めようぜ。その後、不動産屋行って鉱山を買うぞ」

「やったぁ! パパ、ついにあたしたちの夢が叶うんだね!」

「おう! オレたちの鉱山……へへ、炭鉱や鉱山が待ってるぜ!」


 セイヤたちは、ベルセリアの中心から少し離れた倉庫区画へ。

 大きな赤い蛇のマークが刻まれた巨大倉庫に到着した。

 部下の傭兵たちの指揮をラーズに任せ、セイヤとヒジリ、ヴェンとバニッシュは倉庫内の事務所へ向かう。

 ヴェンがお茶を淹れ、セイヤたちはバニッシュと向き合うように、ややくたびれたソファに座った。


「今、ラーズが不動産屋を呼んでる。そこで正式に鉱山を買う。傭兵は廃業だ。セイヤ、例の件だが……」

「はい。俺でよければ……とりあえず、名前だけですけど」

「え、え、なに? ねぇヒジリ」

「主が、鉱山の所有者になるということですね」

「え……ちょ、パパ!?」

「あーあー、ちゃんと説明する」


 バニッシュがヴェンとヒジリに説明した。

 もしもの時のため、人間であるセイヤを鉱山所有者にしておくという。


「あ、そっか」

「さすが主ですね」


 ヴェンとヒジリは、あっさりと了承した。

 そして、ラーズが不動産屋を連れてきて正式に鉱山を買い、土地の権利書やら細かな書類にセイヤはサインした。

 代金を支払い、不動産屋は頭を下げて帰っていった。

 バニッシュは傭兵たちを集め……もう我慢できずに叫ぶ。


「これで……オレたちの夢、鉱山が手に入ったぞぉぉぉっ!!」

「「「「「うぉぉぉぉーーーッッ!!」」」」」


 バニッシュたちは、鉱山を手に入れた。

 鉱山では鉱石採取、さらにバニッシュたちが買った鉱山には炭鉱もある。

 残ったお金で山の近くにアジトを構え、道具や設備を入れ、本格的に会社を作る。

 ラーズは、羊皮紙をめくりながら言う。


「建築商会や設備関係も話が付いてる。早ければ二月後には会社を始められそうだ。今までの人脈もあるし、このベルセリアで流通ルートは確保できそうだ」

「さすがラーズ!! えらい!!」

「いや、オレはなにも……人脈も流通ルートも、団長のおかげじゃないか」

「お? なんだなんだ、いいこと言うじゃねぇか!! よーしお前ら、酒蔵で酒買ってこい!! 今日は宴だぜぇぇぇぇっ!!」

「「「「「イヨッシャァァァァーーーッ!!」」」」」


 この日。アジト内は大いに盛り上がった。


 ◇◇◇◇◇◇


 バニッシュたちは、会社造りで忙しくなる。

 セイヤとヒジリは久しぶりに、二人で町を回っていた。


「補給を終えたら情報収集しよう……やるんだろ?」

「はい。ウェイクリンデ大森林……ゴミ共、必ず殺してやる……」

「ヒジリ、殺気」

「……申し訳ございません」


 セイヤはヒジリの肩をポンと叩く。

 町を歩くが、やはりバルバトス帝国最大の商業都市の名は伊達じゃない。

 武器屋はいくつもあり、適当な武器屋で矢を補充し、旅や戦いに必要な道具を手当たり次第に買う。

 買い物を終えた二人はベルセリアの中央広場へ。観光案内所でもらった観光マップを見ながら、宿を探すことにした。


「主、ヴェンたちの元へは……」

「いや。今は忙しいだろうし、傭兵たちと一緒にいるのは止めよう。それに……あそこは居心地がよすぎる。少し気を引き締めないとな」

「わかりました」

「じゃ、宿を探す……」


 すると、セイヤの動きが止まった。

 ヒジリも止まる。なぜ立ち止まったのかわからず、セイヤの顔を見た。


「主?」

「…………」


 様々な種族や馬車が往来する商業都市ベルセリアの中央広場。

 中心には巨大な噴水があり、綺麗な水がキラキラと吹いている。

 ヒジリは、セイヤの視線を追う。


「───主、お知り合いですか?」

「…………」


 セイヤの視線の先には、白い髪の少女がいた。

 少女もまた、セイヤをじっと見ている。

 少女の隣には、金色の髪をした少女が、ヒジリと同じように白髪の少女に話しかけている。

 だが、セイヤと同じく聞こえていないようだ。

 セイヤは歩きだす。少女もまた歩きだす。


「お、お姉ちゃん? どうしたのよ!」

「…………」

「主、いったい……」

「…………」


 二人は、中央広場の噴水前で見つめあった。

 そして───白い髪の少女がセイヤに向かって呟いた。


「見つけた……」

「……お前、誰だ?」

「私は、あなたに会うために来ました」


 そして───少女が告げる。


「私と───結婚、してください」

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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