幽霊少女と葬送師
初めまして。飽那です。初めて小説というものを書きました。まだまだ拙い文章かとも思いますが、宜しくお願いします。
「葬送。」
真夜中に一人の少年の声が響く。
「ずっと現世に縛られて大変だっただろうに。あの世で幸せになってくださいね。」
そういわれると、幽霊たちは消えていった。
「ここの葬送も大方終わったな。次は何処だろう……あそこか。よし、行くぞ。」
霊を探知できる能力でどこにいるかをみつけ、少年は足早に駆け抜ける。
次の目的地まで全力で。
幽霊になっていつまでも彷徨い続けている霊達を葬送し、あの世で幸せになってもらうために。
幽霊は大体、魂の力が弱くて、あの世に生きたくても逝けない人がなるものだ。
だから誰かに手伝ってもらっていくしかない。
そうしないと悪霊となって人々に危害を与えてしまう。
幽霊があの世に逝くことを手伝って悪霊化を止めるのがその少年、葬送師の六道天利だ。
「ここか。ずいぶんと森の中にいるんだな。」
木と木の間に何かの光を見たような気がして天利はそこに向かう。
「ばあ!」
その木と木の間を通った時、いきなり女の子の幽霊が現れた。
天利は驚いて一歩後ろに飛んでしまう。
「きゃはは!引っかかった!引っかかった!いえーい!」
今までに会ったことのないような性格で天利は驚いてしまう。
(すごい性格だな。こんなやつがいるのか。)
「あの、あなたは幽霊ですよね?俺は六道天利といいます。貴方を葬送しにきました。」
そう言ったとたんさっきまであんなに元気だった女の子が悲しそうな表情をした。
一瞬で元に戻ったが、天利は気になって声をかけようとしたとき、その女の子はこんなことを言ってきた。
「私は葬送なんてされたくない!でも、あまりが一週間私と遊ぶっていうなら考えてあげる!」
いきなり呼び捨てで名前を呼んできた女の子に驚いたが、それより今のセリフが気になった。
「君は葬送されたくないのか?」
「そうだよ!でも遊んでくれたらされてもいいと思う!それと私は君じゃなくて九鬼って呼んでね!」
天利はたっぷり十分間悩んで、こう決める。
(めんどいけど、これも仕事かな。無理やりするのもあんましだし。)
「わかった。一週間遊んであげる。」
「やっりー!」
さっきまでちょっと雰囲気が変わっていた九鬼だったが最初みたいな元気いっぱいそうな女の子戻った。
セリフにいちいちビックリマーク多すぎだとも思うが……。
「いーち、にーい、さーん、しーい、……さーんじゅ!もーいーかーい!」
森に九鬼の大きな声が響く。
今日は二日目。
かくれんぼの時間。
「もういいよ。」
「どーこかな!どーこかな!そこかっ!」
違うところに向かって九鬼は言った。
「違がった!どこかなーあまりは!」
違うのに楽しそうで、思わず天利は大きく吹き出してしまった。
「ブフッ!」
しまったと思ったときはもう遅かった。
「あまり見つけた!」
「あーあ、見つかっちゃったか。もう、九鬼が面白すぎて吹き出しちゃったよー。だって違ったら、違った!、て大声で言うんだもん。」
「やった!やったー!私の勝ち!次はあまりが鬼の番ね!」
「わかったよ。」
(俺は幽霊の場所がわかるから一瞬でわかっちゃうな。最初は適当にわかってない感じでいるか。そうじゃないと可哀そうだし。)
天利は木に顔を伏せながら、こう考える。
「……三十。もういいかい。」
「もーいーよ!」
(声だけで場所わかりすぎでしょ。)
「九鬼さんは何処にいらっしゃいますかな?。どこかなー。」
「ここでーす!」
わかってないふりをしていると、大きな声が聞こえてきた。
天利はまさか自分から言ってしまうとは思ってなく、びっくりしてまた笑ってしまった。
「ちょ、九鬼それはない!ふふっ、マジでそれはないよ九鬼。ふふっ、自分から言ったらわかっちゃうでしょ?」
「そうだった!忘れてた!てへへへ!」
「もー九鬼ったら。」
「あまりもだいぶ笑顔になってきたね!」
「そ、そう?」
「うん!全然違う!最初全然笑ってくれなくて悲しかったんだよ?」
そんなふうに時間が過ぎていく。
それからも鬼ごっこやだるまさんがころんだ、影踏みなどの遊びで遊んでいった。
天利も最初は面倒だと思っていたが、今は楽しくて仕方なかった。
時間が止まってほしいと思うほどに。
でも、時間は止まってくれない。
どんどん過ぎていく。
ついに七日目の夜が来てしまった。
暗い森の中で天利は九鬼に言う。
「九鬼、最初の約束覚えてる?」
悲しげな表情で九鬼は言う。
「うん…。」
「今日は七日目でしょ?」
「うん…。」
「葬送、させてくれる?」
「うん…。」
「ありがとう、九鬼。」
「ねぇ、あまりは一週間、楽しかった?」
「楽しかったよ。正直言うと最初は面倒だなんて思ってた。でも、遊ぶにつれて九鬼の良さを知って、九
鬼といることが楽しくなったよ。葬送するのは俺も悲しい。でも、早く葬送しないと九鬼は悪霊になっちゃう。そんな九鬼は俺、見たくないんだよ。」
「私も、楽しかった。今まで遊んでくれる子がいなかったんだ。生きてた頃はね、お父さんにもお母さんにも同級生の子たちにもいらない子って言われたの。何をやってもダメで、辛くて辛くて私は死んだの。だから生きてても、死んでも、誰にも相手にされないと思ってた。けど、あまりは遊んでくれた。今まで生きてた中でこんなに楽しいことなんてなかった。あまりがいたからより幸せな気持ちで、あの世に逝けるよ。こんな幸せこの私がもらっていいのかなって思うくらい。だから、自分の中の、全ての、ありが、とうを、あまりに、言うよ。ありがとう!あまり!」
天利は九鬼の笑顔を始めて見た気がした。
だから天利も自分の中の全てのありがとうを九鬼に言おうと思った。
「九鬼、こちらこそ、ありがとう!俺も、自分の、中の全ての、あり、がとうを九鬼に、言うよ。」
もう二人の顔は見るに堪えないくらいに涙でぐちゃぐちゃだ。
言葉も途切れ途切れで聞き取りにくい。
「あまり、ありがと、ね。さ、そうそして?」
「そう、だね。そ、う、そう。ずっと、げん、よに、しば、られて、たいへ、んでしたね。あのよで、しあわせになって、くだ、さいね。くき!」
そういうと九鬼は消えていった。
天利はそれからしばらくずっとずっと泣いていた。
泣き止んだのは朝日が昇ったころだった。
「寂しいな。また、行かないと。今度はこんな悲しい結末になりたくないな。九鬼は今頃、楽しんでるかな。楽しんでるといいな。いつか俺も死んでしまったらまた会えるといいな。それまではずっとずっと九鬼を思い続けるよ。」
そうして葬送師の旅は続いていく。
きっと近い再会の日を求めて。
ここまでお読みいただきありがとうございました。誤字脱字があったら教えていただけると嬉しいです。アドバイスや感想も送って下さったら幸いです。