プロローグ~始まりは畦道で良くないか?~
風が耳に衝突して通り過ぎていく。幾多の風にあたった耳は既に感覚がおかしくなっている。わずかにマシなのはイヤホンをしている部分くらいで、吐く息のせいで目の前が見えないくらいだ。
靴をドロドロにしながら畦道を歩く。霜柱のジャリジャリとした感覚を味わいながら、目指すは田畑のど真ん中。
季節は1月上旬。正月の名残なのか近くに働く農家さま!はいないようだ。
「よし。」
イヤホンを取り、背中に手を組む。準備は万端。怖いのでもう1度周りに魔王…じゃなかった農家様がいないか確認する。一夜いっきまーす!
「バカヤロぉぉー!!」
叫んだ俺の声は、山が跳ね返すことも無く風と共に消えていく。
……はずだったんだが。
「バカじゃないの!?」
どうやら山びこも知性を得たようだ。わざわざ2オクターブくらい高い女声&口調で返してくるとは。そうかぁ。山びこさんって女性だったのか。
…んな訳ないよな。
「バカじゃないの。」
今度はかなりミュートしてきた。すげぇな山びこ。多分iPhoneより劇的な進化遂げたぞおい。
冗談はさておき、とりあえず首を左右に60°位ずつ回してみる。あれ。誰もいない。
「その体制で私を視認したいならあなたはフクロウとミキシマックスする必要があるわ」
そーですか真後ろですか。いや俺超次元サッカー中学生じゃないから。
「いや真後ろにいるとかどこのストーカーだy…」
振り向いた先にいたのは。
青目銀髪。びっくりするくらい美少女。てかこの世の者とは思えないレベル。
「まあストーカー始めて1分ってところかしら」
「は?」
「私は見ての通り異世界人よ。」
「ははーぁ!」
気付くと命惜しさと驚きで土下座している俺。
「フフン♪あがめなさい敬いなさい♪…いやじゃなくて!ってかなんで土下座されてるの私!?危害は加えないから落ち着いて!」
んな事言われてもそりゃあ怖いわ。俺が異世界転生するなら何となく分かるよ?ほら、スマホ使って無双とかやってみたい。あ、意外と落ち着いてるわ俺。
「それで?なんで俺は異世界人にストーキングされてんの?」
「あなたを異世界にさらうためよ。(`・ω・´)キリッ」
「喜んで(≧∇≦)」
「そりゃあ急に言われたら戸惑うわよねって即答かーいΣ\(゜Д゜ )」
お、ノリツッコミとは。やりおるな。
「それじゃあとりあえず説明がてら入口に向かいましょうか」
そう言うと、彼女は畦道をさっき通った方向に歩き出す。その先に異世界あるの?異世界身近だなおい。
「山びこの 正体見たり 青いバラってか」
「ん?なんか言った?」
彼女は小首を傾げている。
青バラの花言葉は「不可能」だ。現実では起こりえないアンビリバボーな出来事と綺麗すぎる美少女。おれはその日確かに青いバラを見つけた。
ちなみに2004年には「夢かなう」の意味も追加されている(サントリーさん凄いわ。)