No.7 当面の安全
こっちも少しづつ再開していきます。
「助かったよ、ありがとう」
「別に感謝される程の事はしちゃいないけどな」
「相変わらずの減らず口だなぁ」
基地内部にて、リディア達から感謝の言葉を貰う慧慈と亨。《ダイリンオー》を含む機動兵器群はハンガーで点検・修理を行っており、パイロット達は一時的に休息をとっている。
「でも、皆さん怪我が無くて良かったです。流石は精鋭部隊ですね」
「そうでもない、私はともかくナナは肩を強く打ち、他部隊にも少なくない被害が出ているようだ」
「いえ、全ては自分の至らなさが原因です……!」深く頭を下げるナナ。
「そう恐縮するな、私も失敗しているのだからな。ところでだ、リュウジン、ウナヅキ。私もお前達に対する非礼を詫びよう」
綺麗な角度の謝罪を受けて、慧慈はばつが悪そうに首を掻いた。
「そんなにかしこまらんでくれ、俺達も褒められた真似はしちゃいない」
「そうそう、勝手に出撃したりね」
「だが、お前達が居なければ私も部下も連邦に殺されていた。感謝しても足りんくらいだ」
「そうか……じゃあ一つ頼みがある」
慧慈はここぞとばかりにある提案をした。その内容は……。
「よっしゃ、まずは第一目標達成だな」
夕日に照らされた宿舎の一室にて、アーミー・ジャケットを着用したまま寝転がる慧慈。
「こういうところは抜け目ないよね、ケイジって。僕なら格好つけてもっと別の要望を飲んでもらおうとするのに」
「カッコよさで飯が食えるのは俳優とモデルくらいだろ、そのどちらでもない俺は実利を取るね!」
「まぁ、暖かいご飯を食べられるって幸せだしね。『日本●ばなし』でも歌っていたし」
「それに、あの面々はなかなかレベルが高いと思わねぇか?」
「レベル?あぁ、確かに《カーディナル》の皆は結構高い技量を持っていたね。彼女達が味方になるなら大歓迎だけど……」
「違う!俺が言いたいのは、ラブロマンス的な意味でだ!」
右の拳を強く握りしめ、慧慈が叫ぶ。
「こうして正式に軍に所属したからには、相応に楽しく行きたいしな。皆キレイどころ揃いでテンションが上がるぜ」
「あ、そっちか。うんうん、確かに可愛らしい人だらけだね。優しいお姉さんみたいな人がライトニング大尉で、割とさばさばした人がディザイア中尉、僕より緩い雰囲気の人がエコー中尉だっけ」
「それに何より、あのリディア・ヴォルベット大佐だ。あれほどの上玉は今まで一度も見なかったぜ」
「うわっ、ちょっとゲスい口調だ。でも、気持ちは分かるよ」
「だろ?安心しろ、亨にも春が来るさ」
調子に乗った慧慈だが、一方の亨は急に落ち着いた口調で答えた。
「あぁ、ケイジ。さっきからどこか下世話的な同情心を持っているみたいで悪いけど、僕は既に童貞卒業しているよ?」
「……へ?」
「正確には、13歳の頃だったかな。家庭教師代わりに呼ばれた近所の同い年の子に迫られてね……まぁ、大変だったよ」
「………………知りたくなかった、裏切り者め」
盛り上がったテンションが逆噴射でしぼむ慧慈だった。